66 苦がなければ何一つ存在しない

 なぜ、人工的な髪の毛が世の中にあるのかといったら、それも「苦があるから」なのです。もしもみんなが「禿げると、すっごく幸せだなあ」「禿げてやっと一人前になった」と喜ぶとしたら、かつらなどが世の中に現れるはずはありませんね。みんな若くありたいのです。年を取ることを認めたくないのです。だからかつらの商売がはやるのです。この世の中、苦がなければ何一つ存在しません。もし、この世の中の何かに感謝することがあったら、苦に感謝してください。たとえば、奈良や京都に行って仏像を拝んだりしたときに、「なんてありがたい仏様でしょう」と思ったとしたら、苦に感謝してください。苦があるから仏像が現れたのですから。でないと現れません。「いろいろなものがあってありがたい」と、日本の文化に感謝いっぱいで生きているならば、苦に感謝してください。なんてすばらしいのでしょうか、ありがたいなあなどと思うものはすべて苦のおかげです。このようなわけで、dukkha(苦)が真理なのです。
『一瞬で心を磨くブッダの教え』第1章 私たちの悩みを解決する《苦》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【苦の見方 「生命の法則」を理解し「苦しみ」を乗り越える (サンガ新書065 2015年) p137】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?