258 生きがいにこだわらない
ふだん、我々は心の中に何か拠りどころがあって、「これが私の幸福だ」と決めつけています。「これがある限りは幸福だ」と思っているのです。「美味しいものが食べられたら幸せ」「子供は私の宝物」「海外旅行に行きたいから頑張る」など「生きがい」にしているものがあって、「それがあれば幸せです」という態度でいるのです。会社員も同じです。「仕事が生きがいだ」と思っていると、引退したらやることがなくなってしまいます。それが寂しくて、みるみるうちに病気になって死んでしまうのです。そうならないためには、何があろうとも状況を受け入れて楽しむことです。仕事があるなら、仕事を楽しむ。仕事が終わってからは、老後を楽しむ。孫が来たら、孫と遊んで楽しむ。状況がどのように変わっても、それを拒絶したり否定したりしない心を育てれば、怒りの生まれる余地はありません。ずっと幸福というものを味わえるのです。『一瞬で心を磨くブッダの教え』第5章 老病死に向き合い、人生を豊かにする《老いの生き方》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【怒らないこと 役立つ初期仏教法話1 (サンガ新書 003, 2006年) p156】