『黄金三角』 最初に読んだミステリ (1685文字)
小学3年生の夏だったと記憶していますが、父と母が母の実家に行くことがあり、そのお土産に怪盗ルパン全集の中の『黄金三角』(原作ルブラン 南洋一郎訳 ポプラ社)を買ってきてくれました。(『金三角』という表記もあります。)
私は嬉しそうに受け取りましたが、正直漫画雑誌の方が嬉しかったです。
それからしばらくして、家にある漫画は全て読み尽くし、それも何度も読んだのでさすがに飽きてしまい、仕方なく『黄金三角』を読みはじめました。この本は少年少女向けで、ほぼ全部の漢字にルビ(振り仮名)が振ってありました。(私は、「新聞もルビを振れば子供が読めるのに。」とずっと思っています。)
読みはじめてみると面白く、300ページ以上ある本を3日間くらいで読み終えたはずです。読み終えたのは夏の日曜日の夜でした。
これが私がはじめてミステリを読んだときのエピソード(episode)です。
そのとき読んだ『黄金三角』の本は、どこかにいってしまいました。
最近、ひょんなことからこの本が販売されていることを知り、書店に注文して取り寄せてみました。
すると表紙は昔のままですが、ソフトカバーになっていて「ポプラ文庫クラシック」と書かれていました。
懐かしさから買ったものの、なかなか読み始められず、一昨日からついに読み始め、昨日の深夜というか今日(20240601sat)の未明に読み終えました。
内容はすっかり忘れていましたが面白く読みました。
要所要所に大袈裟な表現や誇張した箇所、それに一貫性のないところがありますが、この本はミステリ要素を持った冒険小説だと善解して読み進めました。
子供の頃ルパンシリーズの他にもいろいろミステリを買い与えられていたのですが、楽しくて夢中になりいつも深夜まで布団の中で読んでいました。夜も11時を過ぎると母から「もう寝なさい。」と言われ、一端は蛍光灯スタンドのスイッチを切って寝ようとするのですが、どうしても読みたくなってまたスイッチを入れ続きを読み出し、しばらくしてまた母から「いい加減に寝なさい。」とより強く言われる・・・。ということを繰り返していました。
こんな有様ですから、「布団の中で本を読む」というのが読書スタイルになってしまい、机に向かって本を読めるようになるまでなかなかの訓練が必要でした。(教科書なら机で読めるのに、小説だと布団の中でないと集中できないというのは、自分ながら不思議でした。)
また、夜の12時を過ぎると、家が軋む音や救急車のサイレンが聞こえてきて恐さが増してきました。そんな環境下でミステリを読んでいるので、トイレに行くが嫌でした。
『黄金三角』の事件は、本文175ページによると1915年4月になります。
1915年とえいば、第一次大戦の真っ最中です。この本の中にも「こんどの大戦」という言葉がなんども出てきます(『黄金三角』の物語中の時点では第二次大戦が起こるとは思われていないので、第一次大戦とは言わないですよね。)。
アルセーヌ・ルパンのミステリは、フランスと日本以外ではあまり人気ではないそうです。ちょっと意外ですが、主人公の人物像としては、ルパンは欠点がなさすぎるのと、職業的窃盗犯なので私立探偵であるホームズとは受け入れられ方が異なるのかも知れません。
また、ルパンには強大な組織力があり、ワトソンと二人で悪に立ち向かうホームズとはやはり異なります。
それにしても、ポプラ社のルパンシリーズの本のカバー絵(カバー装画:牧秀人)は写実的でもあり雰囲気重視でもありで大好きです。
『黄金三角』の場合は、ルパン、シメオン老人、コラリー、コラリーの母、縄ばしごが描かれています。これらは本文を読んでいくと登場するのですが、子供のころは全然気づきませんでした。
また、ルパンは右目にモノクル(monocle 片眼鏡)をしています。子供のころ母がこの絵を見て「西洋人は彫りが深いからこういう眼鏡ができるね。」と言ったことを思い出しました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?