![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/118055828/rectangle_large_type_2_f6409dcefe66829fb3916fabb7a91a2a.png?width=1200)
よいクマ、わるいクマ
子グマは愛らしく、子供にも大人にも人気がある。 ぬいぐるみでは定番の一つだし、テディ・ベアは(持ち主が)成長しても大切に持っている人も多い。動物園でも人気だ。NHKも大好きなようで、知床の大自然を特集した番組に、「野生のクマ」は欠かせない。特に親子連れは。
鮭を咥えた木彫のクマは、一昔前、北海道土産の定番だった。私の実家にも飾ってあった。「ここが俺達の山。登別といえばクマ牧場!愉快な仲間が待ってるぜ♪」で有名な牧場は1958年開業で、世界で初めて「多頭集団飼育」に成功したそうで、「常時、100種類以上のエゾヒグマ」が、来園者をもてなす。
当たり前だが、子グマは、成長すれば、大きなクマになる。
北海道とクマ
北海道に生息するのは羆*で、生息域は全道に広がる。 *注:「ひぐま」を一文字で表すと「羆」
アイヌの人たちの生活と信仰にも深く関わっている。羆は「キムンカムイ(山の神)」と呼び、山を降りて人を襲う羆は「ウエンカムイ(悪い神)」と区別し、「熊のアイヌ語名は83種類ある」と言う(アイヌ民族文化財団)。
山田秀三著「北海道の地名」(1984年北海道新聞社)の索引には「熊」が付く地名が「熊石」、「熊牛」、「熊碓」、「熊の沢」の4つ出ている。アイヌ語で熊の呼び名が83種類あると知って、逆引きしたので少なく見えるが、北海道には、クマの生活と関係の深い、アイヌ語由来の地名が多い。
「熊の沢」は、「エラマンテ・ウシシベツ」と読み、「狩りをする・牛朱別川」の意味で、熊狩りをした沢が、和名で熊の沢となったと山田博士は推測している。石狩地方の当麻町内にある。
「熊牛」は、羆の一大生息地である道東地方・弟子屈町にある地名だが、「クマ・ウシ」と読む語義は「物干し棚・多くある・処」で、魚が多く取れた処なので、魚干しの棚が多く並んでいたところと推測している。「熊石」と「熊碓」の「クマ」も、魚干し棚を指す。魚を獲るのは、羆も同じ。多分そばには多く生息していたのだろう。
怖い羆
恐ろしい事件もあった。2019年からつい最近まで、北海道東部の標茶・厚岸の一帯で、多くの家畜を食い殺してきた羆には、「OSO18」のコード・ネームが付けられ、地域の人々に恐れられていた。最近「駆除」された。次のコード・ネーム付き羆の出没が噂されている。
吉村昭(1927~2006)の小説「羆嵐(1977)は、1915年12月、北海道天塩山麓の開拓村を襲い、2日間で男女6人を殺害した事件を題材にした迫真のドキュメンタリーだ。旭川営林署農林技官の木村盛武氏の報告書「獣害史上最大の惨劇苫前羆事件」(1964)を参考に書かれているそうだが、「史上最大の惨劇」の記録は塗り替えられていない。今、都会の部屋の中で読んでも怖い。
本州・四国・九州のクマ
北海道以外のクマは、ツキノワグマだ。
「マタギ」は秋田県の仙北や阿仁地方が有名だが、クマは「神からの授かりもの」とされる。山の出入りから獲物=クマの処理まで、信仰と結びついたしきたりを継承している。
クマは、体の一部は高価な漢方薬として珍重されるし、毛皮は防寒具や敷物にもなる。
住宅地のクマ
日本全国で、クマが山を降り、住宅地のそばに出没したり、中には住宅の中にまで入り込んで、食べ物を漁る事件が頻発している。
近所の山へキノコ採りに行った農民がクマに襲われたり、田畑を掘り返されて収穫物に被害が出たりする事件は増加傾向にあった。
さらに住宅地にまでクマの出没範囲が急速に広がりつつある。人と遭遇する機会が増えれば、事故が起き、いろいろな原因が言われる。
どんぐりなどの木の実が不作で、里に降りてきた。
住宅地の食べ残しゴミなどの味をしめた。
観光客やハイカーが捨てた食べ物の味をしめた。
人とクマの生活圏が近づき、クマと遭遇する機会が増えた。
クマに良し悪しはない
よいクマ、わるいクマと言う区別は、無い。クマはクマだ。人間社会との関係で、好かれたり、悪者になったりする。危害を加えたり、被害を与えると、駆除される。
毎年のように、いろいろなことが言われる。でも、
クマをもっとよく知り、
その生態を徹底的に調べ、
人との接触域とクマの生息域の実態を明確にし、
(多分人が入らないので)荒れ放題の山や森林や里山の対策を立て、
どうすれば、人とクマがお互いのテリトリーを守って共生できるのか、
狭い国土で進む過疎化・高齢化と都市集中による「テリトリー侵害」まで視野を広げて・・・・・
つまり、じっくり腰を据えた幅広い取り組みを、新しい専門部門を創設してでも、始められないのだろうか?日本の国土は狭く、広大な自然保護区を作ることはできないのだから。
日本人は、どうも、理念をしっかり掲げ、根本的な問題解決を図るため、視野を目一杯広げて、徹底的に議論するのが苦手なように思えてならない。
シカ、イノシシ、サル、タヌキ、キョン、キジ、アライグマ、ハクビシン ・・・
人が暮らす生活圏に出没するようになってきたのは、クマに留まらない。
さまざまな野生動物が全国的に出没し、列車を停めたり、田畑を荒らしたり、人に飛びかかったり、そして車に轢かれたりする。
私が住む近所でも、特に最近増えてきた野生動物は、
イノシシ・・・近所の農地を荒らす。砂浴びされると、畑は使えなくなる。公園にも出没し、注意看板が建てられた。昨日、道路の端に倒れている大きな成獣を見た。
タヌキ・・・週に3~4回くらいの高い頻度で、車に轢かれた跡に遭遇する。他の野生動物同様、道路が、獣道を横断するからだろう。
キジ・・・散歩するとほぼ毎日出会う。狩猟が禁止され、安全になったからか、人を恐れなくなって、スタスタ歩いている。
サル・・・まだ少数派だが、住宅街にも出没した。パトカーが回ったり、学校が集団下校になった。
アライグマ、ハクビシン・・・空き家に住みついたり、時々道路で轢かれた跡に遭遇する。
キョン・・・急速に増殖し、房総半島を北上しつつある。まだ家の近所までは到達していないが、時間の問題か?
何とかしないと、早晩、弥縫策では手に負えない問題になるのは必至だと思う。
(了)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?