見出し画像

ドイツの6月

子供の誕生日が6月なので、誕生日会は湖のほとり、正確には湖に繋がっている運河のほとりだ。なだらかに水に入って行ける所まで、みんなで森の中を歩く。
ベルリンは海から離れているけれど、湖はたくさんある。 夏の週末に湖に行けば、水辺に寝そべってゴロゴロしているカップルや、友達と絶叫しながら泳いでいる若者や、自転車に荷物を積んで準備万端でやってくる家族連れなんかで賑わっている。

去年の今頃は太陽が照りついていた。日本のように湿度は高くないから蒸し蒸しはしていないけれど、太陽の日差しが直に当たっているような、照りつけられる感覚を覚える。
ドイツ人は太陽が大好き。天気がいい日、カフェやレストランで店の中に座っている人はいない。店の前に出ているテーブル席は満杯で、店内はガラガラだ。誰も日傘なんかさしていない。
「私を焼いてくれ」
と言わんばかりに肌を露出し、サングラスをかけている。
こちらの雰囲気に慣れていたので、日本に帰った時びっくりしたことがあった。久しぶりに地元の友人に会ったら、彼女が日傘と黒い長手袋で登場したのだ。そんな人ドイツで見たことないから、内心「暑いのに、なんでそんなに黒ずくめなの!?」不思議に思ってしまった。

今年は去年に比べてまだ暑くない。だから誕生日の日も水辺は混んでいなかった。今日が主役の息子は謎のテンションをキープしたまま、まだ冷たい水の中にドボン!わ〜とかきゃ〜とか言いながらお友達とはしゃいでいる。

小学生の上の子が招待された誕生日会は、映画館だったり、ボーリング場だったり。お友達のお母さんに5月の誕生会に参加できるかと2月に聞かれたときは、早すぎないか?と思ったが、数年前にベルリンにできた巨大トランポリン施設の誕生日会を予約する為だったらしい。流行っているようだ。旅行のようにしっかり前もって計画を立てるところ、見習わなきゃだな。

しかし下の息子はまだ保育園児なので場所は去年と同じでいいだろう。内容も去年と同じで、スイカ割りでいいだろう。ドイツ人のキッズに日本文化を味わってもらうということでいいだろう。
みんな大きな声で「レヒツ~(右)」「リンクス〜(左)」と叫んで大盛り上がりだったのでホッとした。よかったよかった。

私は日本でケーキを焼いたことがなかったが、ドイツに住むようになって、というか、子供が保育園に行き始めてから、気負いなくケーキを焼くようになった。
私の子供が通ったドイツの保育園では、子供が誕生日の日に親がケーキを持って行っていた。保育園のお友達とお祝いできるように、ということらしい。分かってはいたが「義務じゃないからケーキなくてもいいだろう」とほっておいたら、後日、何もない机に何とも言えない顔の息子の写真が廊下に飾られていた。

ゲゲッ。これはいけない。

反省してそれ以来ケーキを焼くようになった。ドイツの家庭には大きなオープンが備え付けてあるので、引っ越してすぐだってケーキが焼けるのだ。バターと砂糖を混ぜる、そこに卵と小麦粉を混ぜる。ケーキを焼くのは案外簡単だった。

誕生会の日もケーキを焼いた。チーズクリームなるものを作ってみたのだが、なぜかサラサラでクリームじゃなくてタレみたいになってしまった。レシピを見る限り混ぜるだけなのに、おかしい。しょうがないので、切ったイチゴをスポンジにのっけて、その上にソースみたいにかけた。甘さにバリエーションなどなかろう。みんなパクパク食べていたから、大丈夫だったんだろう。

一通り片付け終わった午後7時、私は朝日のように明るい西日に包まれていた。無事に誕生日会を終えたという達成感に、私の心は満ちていた。

上の子の誕生日まで、しばらく休戦だ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?