実験写真日記その4 偶然性
写真の実験には多かれ少なかれ偶然性がつきまとう。
薬品や光など写真を構成する要素には完全にコントロールすることが難しいものが多く、未知の発見を求める実験にはなおさらだ。
他にも街を撮れば予期せぬものが写り込んでいたり、間違えてシャッターを押してしまったり(それが意外と良かったり)と枚挙にいとまがない。
作者が選んだ必然に世界が偶然を投げいれることで成立する写真は美しい。
それは共同作業と言える場合もあれば対立のような形をとる場合もあるが、いずれにせよ1人の作者と世界というものの関係性が顕になる稀有な瞬間だ。
平原にたった一本の杭を打つという、最小限の介入でそこに多くの渡鳥が羽を休めにやってくるという(それを自動シャッターで撮る)最大限の偶然を呼び込み、作品として成立させたStephen Gill のThe Pillarはどのようにして世界と関わることで未知なる場所へ到達するか?
という問いに対する最もエレガントな解答の一つだろう。
その控えめで、環境への影響も少ない作者のふるまいは恐るべき観察眼の鋭さの賜物であろう。
写真は世界と関わること無しには生まれない。
実験写真はいつも世界との新たな関わりかたを探求する。
その魅力が私を捉えて離さないのだ。
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