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「つけびの村 噂が5人を殺したのか?」高橋ユキ

あらすじ

2013年7月、住民たった12人の集落で放火殺人事件が起こり、5人が犠牲になった。犯人は「自分が陰口を叩かれている」という被害妄想を抱き、事件を起こしたとされている。著者は取材をするうちに村での「噂」の存在感の大きさを感じる。

「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」
この句が衝撃的だったから、今でも事件は覚えている。
私自身も著者が指摘する「噂の消費者」の一人だった。昭和の探偵小説みたいで気になったからネットで何度も検索した。

書籍化のきっかけになった「タイムラグがあったのちのweb記事の拡散」
著者はここに噂の持つ強力な力を実感したんだと思う。
ネットは「見ない」という対策ができるけれど、閉鎖的な集落では難しい。犯人はメンタルがあまり強くなくて、身を守るために妄想という殻を被ったんだと思う。

それにしても、この村はきつそう。
事件が起こった後も、残った村人は犯人以外の村人の悪い噂ばかりしている。実は事件が起こる前も傷害事件や犬猫の殺害事件が起こっていたのに、話し合いや解決をせずただ話を繰り返し消費するだけ。
事件当時はwi-fiも通じていなくて、地理的に遠くに友人も作れず、娯楽はうちわの噂だけ。
村人の噂は根拠がきちんとない場合もあるし、犯人は妄想が入っているので本当の事実は藪の中。
私には引っ越し以外の解決策が見つけられない。

陰口で繋がっている関係なので、ネットワークがあっても緊張や孤立を生む。
犯人はちょっと難しい人だったけれど、もう少しいろんな余地がある都会ならやっていけたのではとか、病院や専門家につなげていれば放火殺人事件までは防げたのではとか、方法はいろいろあったんだと思う。

そして、噂の消費者でいつづける私自身。悪い噂に能動的に書き込んだり「いいね!」はしないけれど、見るっていうのはやっぱやっちゃう。ついつい見ちゃうっていうことは結局気になってる≒楽しいということだと思う。

人を傷つける噂はやめる、というのも難しい。
誰も傷つけていない話題に思えても、どこかで誰かが傷ついている可能性があるし。

なんかグレーゾーンだらけだ。難しい……。

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