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あの子のフェミニズム『BL進化論』溝口彰子

BLの歴史-BLの中のフェミニズム-進化系BLについて、の論文。

高校のころ、親しかった何人かがBL同人をやっていた。
「どっぷり浸かるまでいけなさそうなんだけどさ、1冊だけ勧めるとしたら何になる?」
「うーん、すーぱーじゅげむにかぁ……。真面目な小説とかが好きなんだよねぇ……コレ、貸してあげる」
山岸涼子の『日出処の天子』だった。すごく面白かった。腐女子にはなれなかったけれど、本当にいい作品と出会えたし、彼女たちの会話の盛り上がりはすごく羨ましかった。

男性同士のカラミを女子高生がキャアキャア言うのはなんなの、と思っていたけど、そのへんの解読があって、なるほどー、と思えた。
女性が性に積極的であることは社会的にNGで、男性同士(自分が完全に関われない世界)についての下ネタトークなら自分の性の価値を傷つけずに性の会話ができる。
つまり、あのころは一方で黒ギャルが下ネタで盛り上がってたけど、同じ欲求を腐女子はもう少しトリッキーに対処してたってことか。
今思うと、賢い。というか、高校生の時点で女性に対する社会的な圧力を敏感に嗅ぎ取って抜け道を探るのか。……うーん。女性同士でもBLというクッションを挟まなければならなかったんだ……。女性のほうがはやく大人にならなければならないもんね。

いっぽうで「関係ないのに勝手に妄想して消費されるのは不快だ」というゲイの叫びもそうだと思う。

その声に心から声を傾けて従ったわけでもないけれど出てきた「進化系BL」の話。家族へのカミングアウトや結婚についてもBL漫画で描かれるらしい。画期的だと思う。実験的に作られたわけではなくそれなりの支持を得ているのだとしたら、著者のいうとおりLGBTQ+に優しい社会への兆しになるかもしれない。

誰かの苦情に応えたわけでなく。当事者なわけでもなく。活動家でもなく。
現実的にはゲイと無関係な腐女子が無責任に自分の「推し」の幸せを妄想したら、そういう寛容な社会になる。
結果論だけど。

ただ、腐女子はハッピーエンドが大好き。ハッピーエンドを求める力って、いろいろなものをよい方向に進めるから、信じて楽しんでいる彼女たちはパワーがあって羨ましい。
あれ、最初のあの子たちへの印象に戻った?

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