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ドール達の午後・・・スピンオフ   人を超えたロマンス 第一話

 2024年5月初旬某日、湘南地方葉山の某リゾートマンション。そのマンションはオレンジ色の屋根が綺麗な建物で海の前にあり目の前には海浜公園が見える。そのマンションには一人の美しい若い有名女性占い師が住んでいる。あの白銀哲也のマンションの別館であるが二人に面識はない。女性は白いシーツの高級そうなダブルベッドに寝ている。朝7時半目覚ましが鳴り女性は起床した。ん?隣にイケメンが寝ている。身長170cm程の色白で切れ長の目をした一見鋭い目だが見るからに優しそうな男性である。「うーん、もう朝か。昨日はちょっと飲み過ぎたかな。」白い毛布から下着姿の女性はそのまま起き上がり男性に顔を近づけてそっと唇を男性の唇に当てる。「おはよう。」男性は動かない。鋭いが優しそうな目で女性を見つめる。ん?このイケメンよく見ると人ではない。等身大リアル縫いドールのようだ。よく出来ている。厚い胸板だがウエストはスリムでまるでファッションモデルのようだ。

「樹おにいさんおはよう。」笑顔で挨拶する女性占い師。彼女の芸名は飯能マヤ、有名占い師兼メイクアップアーティストで芸能人でもある。何故かマヤ様と呼ばれている。年齢は20代半ばに見えるが不明である。マヤ様は早速スマホの電源を入れた。マヤ様は”マヤちゃんのときめき占いの館”という占い施設を横浜に持っており占いがある日はそこへ移動する。今日の占いスケジュールをスマホで確認するマヤ様。何故か占い希望者の顔写真をUPさせている。表向きは応募者多数の為抽選という事になってはいるが顔写真で人相を見て魂が汚れた人は占わないようにしている。「ほうほう。今日の占い希望者10人か。しかし綺麗な魂をしているのはこの2人だけだな。この2人は合格とする。ん?こいつはリピーターだな。桜木巧?人のいない楽園序章の悲惨なドスケベじゃないか。又私を頼りやがったな。情けない奴め。何々次の佐藤とかいうやつは以前インチキ占い師にぼったくられそうになったので応募しました・か。多分インチキ占い師はあいつだな。よしこいつらを占ってしんぜよう。」マヤ様は今日の占い依頼者を選定し、占いの館にタクシーを使って運転させて移動する事にした。ちなみに運転手はマヤ様の実の父である。職業はタクシー運転手。
 高速を使って1時間後マヤ様はみなとみらいにある””マヤちゃんのときめき占いの館”に到着した。現金でタクシー代を支払うマヤ様。「釣りはいらない。取っておきたまえ。」「はあ?おい雅子(本名)全然足りてないぞ。まあいい。忙しいからな。後で不足分払えよ。」タクシー運転手兼父親は文句を言いながら去っていった。「たっしゃでなー。」手を振るマヤ様。「マヤ様!お待ちしていました。」マヤ様の手下”氷室空子”が出迎える。

「マヤ様お待ちしていました。さささ!むさくるしい所ですがお入りください。」手下の空子は黒い制帽を被り白いYシャツ姿で出迎える。「私の占い館をむさくるしいだと!このバカモノ!。」空子は慌てて言い直す。「ううううそです。冗談ですよお。」いらいらしながらマヤ様は席に着いた。
早速タロットカードを用意して水晶玉も箱から出して準備した。
「次のどうぞー。桜木さーん。」「はーい。」巧は二回目の占いである。
マヤ様は薄暗い部屋でドライアイスで発生した白いスモークで充満した部屋を歩き回る。「いたたた。」マヤ様は机の角に足をぶつけた。「大丈夫ですか?。」巧が心配そうに話しかける。「ああ、ちょっとスモーク多すぎだな。」マヤ様は席に座り早速占いを開始した。タロットカードをシャッフルする。胸が揺れる。後ろを向いている巧。「何で後ろを向くんだ。」「だってつい見てしまうから。」「うむっ、察しのいいやつだ。んで何を占って欲しいのだ。」「等身大ドールの美援ちゃんをお迎えしたのですが、なんだか冷たい態度に見えるのです。」マヤ様は占いの結果を言い出した。「おまえは恋人と付き合っている時も見当違いのダサいプレゼントで切れらてたりしていただろう。」「何でわかるのですか?さすがマヤ様だ。」「感心してる場合かバカモノ!。ドールも同じだ。心があるのだ。お前相当めちゃくちゃスカトロに嫌われているぞ。人間の女だったら5,600はぶっ叩かれて簀巻きにして海に放り込まれるレベルだぞ。」「ええええ!そこまでですか!。いったいなぜ!。?」マヤ様は真剣な顔で答える。「いいか、よく聴け、このきたねえどぶくせえくそったれのゴキブリ野郎が!!。」「そそそそこまで言わなくても。」「うるせえ!おまえはドールに対して”なにもほしがらない なにも要求しない 裏切らない 何も思わない オーナーの思い通り”とか思っているだろう。ふざけるな!勝手に決めつけるな。そんなことだから人間の女性どころかドールにも嫌われるんだ。今すぐ悔い改めろ。さもないと永遠に嫌われたままドールと過ごすことになるぞ。以上。」桜木巧はやっと出会えた天使だと思っていたのに占いの結果が思い当たるのでショックを受けてうなだれてゾンビのようにふらふらとあちこちぶつかりながら部屋を出て行った。「ああすっきりした。次いってみよー。客でストレス解消できるんだからこの仕事最高かよ!。」
「次は佐藤昌行というヒーリングカウンセラーです。職場の悩みだそうです。」「分かった。カモーン。」マヤ様は右手の人差し指で佐藤を招いた。「なんだあの態度。今度の占い師もハズレかな?。(心の声)」「なんだと!もう一ぺん言ってみろ。」「ええええ、。何も言っていないのに。何でわかるのですか。」「私は何でもお見通しだ。職場の上司は元彼女だろう。しかもドールマニアを憎んでいる。職場環境は最悪だ違うか?。」「あってます。」昌行は安心した。今度は当たりそうだと思った。「では占ってしんぜよう。」マヤ様はカードをシャッフルする。胸が揺れる。胸を見る昌行。「お前真面目にやれ!どこ見てんだ!。」「だってマヤ様がそんな薄着だからいけないんですよ。」「私の目を見ろバカモノ!。っと結果が出た。その上司とはこれから数か月この状態が続く。しかし患者からの信頼と支援、ん、人ならざる美しい女性からの支援を得て徐々に心が癒されやがて女性上司は他の病院に転勤する。」「本当ですか。」「しばらくはきついだろうがその人ならざる女性が支えてくれるだろう。以上。」「ありがとうございます。希望が出ました。」昌行は喜びながらスマホの待ち受け画面を見る。「愛香、これからも癒してくれよな。」スマホに話しかけながら部屋を出て行った。

 仕事を終えたマヤ様はその夜自宅マンションでワインを飲みながらソファーに座り隣にはイケメンの縫いドール樹おにいさんを座らせていた。「もう3年か・・・月日の流れは早いわね。樹おにいさん、あなたと出会えなかったら私はきっともっと寂しい年月を過ごしたに違いないわ。ありがとう。」マヤ様はしんみり思い出にひたっているようだ。マヤ様は樹お兄さんをやや強めに抱きしめる。厚い胸板と腹筋は人間の男性と遜色ない固さと弾力でリアルな脂肪の感覚まで再現されている優れものである。樹おにいさんはほんのり笑顔を見せているように見える。普段はあれほど男勝りな言動や行動が目立つマヤ様だが樹おにいさんの胸に抱かれている姿は普段では想像できないほどにか弱く幼い子猫のようである。マヤ様にとって至福の時間なのである。「にゃーん。💛こうして抱きしめていると果てしなく気持ちいのよね。体温もすぐ温まるから逆に温めてもらっているみたい。こんな姿死んでも他人に見られたくないわ。にゃーん。💛」マヤ様はそのまま眠りについてしまった。

 2019年4月某大学。大山雅子(後の飯能マヤ)は商学部商学科の4年生になった。商売の勉強をして卒業後は結婚など全く考えず自立した社会人になる事を目指していた。「マヤ様ーおはよう。」マヤ様の友人が声をかける。「おはよう。でも何でマヤ様なの?。」「大山の山をひっくりかえしてマヤ様よ。みんなそう呼んでいるわよ。だって本名気に入っていないんでしょ。」「そうね。ありがとう。私は許可していないけどね。それに何で様つけなの?。でもそれいいわねそれで呼んでちょうだい。」こんな経緯がありマヤ様と呼ばれるように勝手になっていた。「あ!見て見てマヤ様。イケメンのパピー君よ又新しい彼女にしたんだね。」パピー君と呼ばれるかわいい男の子は彼女に寄り添いながらアイスクリームを食べている。ベンチに座って彼女を見ながら微笑んでいる。パピー君は2年生でマヤ様の2歳年下である。パピー君は新品の高そうなハンカチをベンチに敷いて彼女をその上に座らせた。座るまで彼女のアイスクリームをこぼれないように持っていた。さらにもう一枚のハンカチを彼女の膝の上に置き服が汚れないように気を配った。「ほほえましいね。」マヤ様は笑顔でつぶやいた。「邪魔しないようにうちらは退散しようね。」マヤ様とその友人はその場を後にした。
 その様子を遠くで見ているあるイケメン男子学生がいた。彼の名前は川城祐希 マヤ様と同じ商学科4年生で料理研究会に所属している。料理が好きで人にふるまって喜んでもらう事が食べる事より好きなナイスガイである。祐希は何故か一人で校舎の中央にある小高い丘の上にある時計塔の下で誰かを待っている様子である。時計をチラ見する祐希。そこに一人の可愛い女の子がやってきた。「せんぱーい、来てくれたんですね。うれしい。」女の子は祐希に駆け寄って恥ずかしそうに俯いた。「あのね、以前からずっと言おう言おうって思っていたんだけど・・・先輩はお付き合いしている人いるんですか?。」女の子は真っ赤になってさらにうつむいた。相当勇気を出している様子である。祐希は少しすまなそうに話しだした。「いいや。いないんだけど・・・・届かぬ思いなのは分かっているんだけど好きな人がいるんだ。」「え!そうなんですか?。それって誰なんですか?。」「ごめんね、言えないんだ。」女の子はなんとなく祐希が好きな人が分かってしまった。「大山さんことマヤ様ですよね。先輩よくマヤ様を目で追っているから。」
女の子は泣き出した。「そうよね、私じゃかなわないや。先輩会ってくれてありがとうございます。私先輩を応援します。」女の子は涙をハンカチで押さえながら小走りで去っていった。「ごめんね。本当にごめんね。でも俺は心に決めたんだ。何度玉砕ってもやると決めたんだ。」祐希はあんなかわいい子に告白された事は無かったので後悔しそうになったがすぐに新たな決意を固めた。「まずは料理の腕を磨いて、次にいい就職先を決めて、最後に卒業式でマヤ様に告白だ!。」上を向いた祐希。その瞳は純粋さで輝いているように見える。

午後の講義を受講し終えたマヤ様は友人の美咲とともに校内の喫茶店で恋バナに夢中になっていた。「ねえマヤ様、気付いているんでしょ。料理研究会の川城祐希君絶対マヤ様に気があるよ。可愛い後輩にコクられても断ったんだって。」マヤ様はあまり関心がなさそうである。「そうなんだ。でもフラれた子はかわいそうだね。」マヤ様は祐希が自分に気がある事を薄々気がついていたので少し罪悪感を感じていた。「そういえばパピー君最近見かけなかったね。今朝だって2週間ぶりぐらいだよ。」「マヤ様パピー君気になるんだ。でも彼女さんいるよ。それにあまりいい噂聞かないし止めた方がいいよ。」「悪い噂?。」美咲は言うか言うまいか悩んだがマヤ様の身を案じて言う事にした。「二股かけているんだって。もう一人の彼女さん心を病んで刃物を研いでパピー君の部屋で待っていたんだって。怖いね。」マヤ様はそれでも驚く様子を見せなかった。「かわいそうだね。それでもパピー君が好きなんだね。パピー君はその子の事をどう思っているのかな?。」「別れてはいないみたい。時々会っているんだって。男心も複雑だよね。」マヤ様は真剣にパピー君の話に耳を傾けた。

 数日後、マヤ様は今夢中になっているタロットカード占いをマスターするために”博麗(はくれい)”という占い師のタロットカード教室を受講していた。卒業まで1年無いので今のうちに手に職をつけておこうと思っているようだ。
ある日博麗というアカウントの女性に占ってもらいマヤ様の恋悩みを相談した結果、想い人が近くにいるのに危険な恋を望んでいるという占い結果が出たのでマヤ様はこの人は当たると確信し。自分も占えるようになりたいと思ったので占い教室に通うようになったのだ。

第一話 END



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