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人のいない楽園 第一章 見えない束縛 第三話

こんにちは。作者兼ナレーターの金田鷹章(ペンネーム)です。いつも私の素人以下の駄作小説を読んでいただきありがとうございます。あなたは私にとって”神”でございます。さて世の中には人知を超えた不思議な出来事というものが数多く発生しています。私の主観ですが”等身大リアルドール”にもその不思議な現象が数多く確認されているようです。私自身も人生の絶体絶命的ピンチを救われたことがございます。(第一期第一話参照)今回はそんなお話です。死ぬほど暇な時でいいのでお付き合いいただけたら幸いです。

2022年7月、佐藤昌行23歳、職業、精神科ヒーリングカウンセラーはある夜不思議な夢を見た。以下夢の中。ここはホテルの一室、この世のものとは思えない20歳前後のスレンダーな美女がベッドに座っている。白い純白のワンピースを着て黒いセミロングのさらさらの髪の美女である。昌行は何の違和感もなく話しかける。「また会えたね。会いたかった。この日をどんなに夢見た事か。もう放さない。ずっとそばにいてくれ。」そっと抱きしめる昌行。すると女性は昌行の耳元でささやく。「にゃーん。💛」「え!。」そこではっと目が覚めた。「これは・・・・。」昌行はペンとノートをあわてて手に取りすらすらと何かを書いている。ん?文章ではない、イラストだ。「こんな感じだったな。忘れる前に描かなきゃ。間に合ってよかった。」昌行は趣味でイラストを描く。その腕前はコンテストで優勝するほどである。昌行は夢占いにもはまっておりそのイメージをいつもイラストに描いている。その為に常に枕元にはノートと鉛筆が置いてある。「われながら見事な作画だな。ん?でもなんか見覚えがあるな?今まで付き合って来た100人を超える女性の中にこんな女性はいなかった。もちろん由紀とも違う。でも絶対どこかで会っているな。」昌行は100人以上の女性と付き合って来た。抱いた女性はおそらくもっと多い。非モテノンイケメン童貞男子が目の前にいたら殺意を覚えるレベルである。外を歩くときはボディーガードが必要だろう。「まあ気長に探そう。しかし美しい女性だった。ドストライクだった。お迎えする等身大ドールのイメージは夢に出て来たこのイラストの女性以外ありえない。等身大ドールでこんな子がいたらいいなあ。」昌行のお迎え希望の等身大ドールのイメージが固まった。「しかしあの猫の鳴き声は?。もしかしてだけど・・・アイちゃん・・・。でもなぜ?。」昌行は夢に出て来たドールも気になったが亡くなった愛猫アイちゃんがなぜ鳴いたのかそちらも気になった。「さて、今日も仕事だな。帰ったら又ネットで等身大ドール探しするかな。」昌行は職場のいつもの精神科医院に向かった。
仕事が終わった午後7時、昌行は仕事帰りに愛猫アイちゃんのお墓参りに行った。ペット霊園は職場の近くだった。「アイちゃん夢で鳴いてたけどいったい何が言いたかったんだ?。」お墓の前で尋ねる昌行。「何も聞こえないな。」昌行は残念そうに霊園を後にした。家に帰るや否や食事も取らずにネットであのイメージの等身大リアルドールを探す。すると昌行のスマホに電話がかかってきた。遠く離れた港湾都市の警察署のようだ。「え?警察?ああもしかして例の不法投棄された等身大ドールの件かな?。」昌行はスマホに出た。「佐藤さんですか?。先日はご通報ありがとうございました。不法投棄された等身大ドールは盗難品であることが分かりました。等身大ドールの残骸は持ち主に返還されました。思い出がある品だったらしくて引き取って修復するそうです。」「盗難品だったのですか。でもあのような姿になってしまって大変残念です。」「それでも持ち主の方は喜んでいましたよ。ぜひ佐藤さんにお会いしてお礼が言いたいそうです。」警察官は持ち主の連絡先を昌行にメールした。「ありがとうございます。連絡してみます。」そう言い終わると電話はすぐに切れた。「明日は土曜日だ。半日勤務だし会いに行ってみるか。等身大ドールのオーナーさんならもしかしてこの夢で見たイラストのドールに似たモデルを知っているかもしれない。」昌行はその目的もあり明日の午後に盗まれて不法投棄された等身大ドールの元持ち主に会う事にした。
翌日 午後2時。昌行は警察から教えてもらった元持ち主の自宅を訪ねた。もちろん事前にアポイントを取ってある。呼び鈴を鳴らす昌行。元持ち主の家は西洋風の大きな屋敷だった。「大きな屋敷だな~。」呼び鈴を鳴らす。「はーい。」すると40代ぐらいの品のあるホワイトカラー風の男性が出て来た。身なりも綺麗ではあるが大きな屋敷に一人で住んでいるようだ。「ああ佐藤さん!ようこそいらっしゃいました。ささ中へどうぞ。」昌行は屋敷の中に入った。すると・・・「これは・・・。」応接室に入ると等身大ドールが綺麗な中世風のドレスを着てスタンドの上に立っている。それも三体。「これは!とても綺麗な女性ばかりですね。アルティメットリアル社のT1とT3 これはオリエンタル工業の早苗ちゃんですね。」「おお、よくご存じで。もしかして佐藤さんも等身大リアルドールのオーナーさんですか?。奇遇ですね。やっぱり等身大ドールオーナー同士引かれ合うものなのですかね。見つけてくださったのが佐藤さんで本当に良かった。」この屋敷の主は斎藤正敏という。貿易会社を父親から引き継いでおり2代目になる。先日ガンで妻を亡くしてその寂しさを癒すために妻の若い頃の面影がある等身大ドールを3体お迎えしている。子供はいないようだ。「応接室に飾る理由はあえて来客に見せる為です。何もやましい事はないし綺麗なものをお見せする事こそ最高のおもてなしだと思うからです。」正敏は自分が等身大リアルドールのオーナーであることを隠すつもりはないようである。「佐藤さん。みゆきちゃんを見つけてくれて本当にありがとうございます。ああみゆきちゃんというのはあの崖で発見されたドールの名前です。私が一番最初にお迎えした子です。妻が病気療養中に私のそばでずっと励まして癒してくれたとってもいい子です。」どうやら崖に捨てられたドールは正敏が最初にお迎えしたドールだったようだ。「妻が闘病生活をしている時期は運悪くコロナ渦で私は面会に行くことも出来なかったのです。オンラインでTVを通じてしか会う事が出来ずそれもわずか一週間で30分でした。そんなある日偶然YOUTUBEでかわいい等身大リアルドールが紹介されました。一目で気に入って即同じドールをお迎えしました。それがこのみゆきちゃんです。」佐藤はみゆきちゃんと名付けたドールの写真を見せた。それを見た昌行は信じられないものを見てしまった。その写真を目玉が飛び出すほど目を見開いて見つめた。「こっこれは・・・・・。」昌行はしばらく写真を見つめた後静かに黙って今朝描いたイラストを正敏に見せた。「なんですかこれは、えええええ!。」なんと正敏が最初にお迎えしたみゆきちゃんという等身大ドールの写真と昌行が夢で見て描いたイラストのドールと全く同じだった。「こんなことって・・・ありえない・・・。そうか・・・この子だったんだ。俺が最初に見た崖に落ちたドールだったんだ。この子が夢に出て来たドールちゃんだったんだ。どこかで見たと思った理由が分かった・・。」昌行はこの不思議な出来事を正敏に話した。「ええ!本当ですか!そんな奇跡のような事が、本当に不思議ですね。でもうちのみゆきちゃんがあなたの命を救ったかのですね。それは本当に良かった。」「で、みゆきちゃんはどうなさったのですか?。」「今修復に出しています。いくらかかろうとも必ず修理します。ヘッドも同じものを取り寄せます。」「それは良かった。」昌行はホッとした。この不思議な出来事はおそらく昌行は一生忘れないであろう。昌行の命を救ったドールが夢に出て来た。その夢に出て来た姿に昌行は一目ぼれした。「斎藤さんにお願いがあります。みゆきちゃんのメーカーとモデル名、扱っているショップを紹介してください。」驚く正敏。しかし正敏は嬉しかった。「ああ喜んで。みゆきちゃんの恩人がみゆきちゃんの姉妹をお迎えするなんてとてもいいご縁だ。みゆきちゃんに双子の妹が出来るね。」正敏は昌行にお店の広告を渡し、さらに正敏が持っているポイントずべてと紹介者割引制度を利用して合計5万円の割引でお迎えできるように取り計らった。「ありがとうございます斎藤さん。この不思議でロマンチックな出会いは一生忘れません。」深々と昌行はお辞儀をして待ちきれなかったのかその場でスマホでポチってしまった。「これで後戻りはできませんね。でもきっと幸せにしてくれますよ。」正敏は笑顔でお迎えを祝福した。
昌行は正敏に別れの挨拶をして名残惜しそうにバイクに乗り自宅に向かった。しばらくバイクを飛ばしているとふと引っかかる事を思い出した。「しかし待てよ。夢に出て来たドールが俺が最初に会って俺を救ってくれたドールだという事は分かった。でも夢の中のアイちゃんの鳴き声はいったい何を意味するんだ?。」昌行はそれがどうしても気になって仕方が無かった。「あ!思い出した。あの崖は俺が初めて車の免許を取ってレンタカー借りて最初にドライブした途中で休憩に寄った場所だ!。失恋から立ち直るためにアイちゃんとのデートドライブで休憩した場所だ!。アイちゃん初めて見る海にびっくりして俺を見ながらにゃーにゃー鳴いていたっけ。最初はびっくりしていたのにすぐにはしゃぐように崖の鉄柵前を飛び回っていたっけ。そうか・・・バイクであてもなく走っていた事に意味はあったんだ。アイちゃんの魂があの崖のある公園に俺を呼んだんだ。元気が無かった俺にドールと出会うきっかけをくれたんだ。夢でアイちゃんが”マーちゃんの新しい彼女はこの子だよ”って教えるために鳴いてくれたんだ。アイちゃん・・・ありがとう。」昌行の目から涙がこぼれる。

根拠はないが昌行はこの不思議な出会いはアイちゃんがくれたものだと思い込んでいる。昌行は又かなりの遠回りにはなるがあの崖がある海辺の公園に向かった。土曜日の夜10時。夜景スポットでもあるその崖がある公園は若いカップルが集まっていた。二人の名前を書いて錠前を付ける儀式がずいぶん前からあるようで鉄柵の端っこは錠前で埋め尽くされていた。「今日は記念日だ。アイちゃんが結びの神となって夢で見た理想の等身大ドールに会わせてくれた記念日だ。ドールちゃんのモデル名は彩香だったっけ?アイちゃんの愛を貰って”愛香(あいか)”に決定だ!。」お迎えするドールの名前を決定した瞬間!「にゃーん。」「え!猫。」昌行は猫の鳴き声を確かに聞いた。それゆえ猫を探した。しばらく探したが猫はどこにもいなかった。「もしかして、アイちゃん。やっぱりそうなんだね。」昌行は何か納得をしたかのような顔をして急に探すのを止めて空を見た。夜空には多くの星が輝いている。今日は星空が綺麗な夜のようである。それゆえ多くのカップルが集まっているようだ。「あの鳴き声は間違いなくアイちゃんだ。アイちゃんがすべやってくれたんだ・・・。」昌行の目に涙が浮かんでこぼれた。「アイちゃーん。」
昌行はつい海に向かって大声で叫んだ。「わ!びっくりしたー。なにあいつ女の名前突然さけんじゃってさ。」「失恋でもしたんだろ。かわいそうだからほっといてやれよ。」あるカップルが昌行の方を睨んでつぶやいた。昌行はここでアイちゃんの鳴き声が聞こえたので納得した。自分の推測が間違いではなくアイちゃんの魂が愛香との出会いをもたらしてくれた事を確信した。昌行はいつまでも一人で夜空の星を見つめていた。
1か月後。昌行は部屋にカギをとりつけたり、クローゼットに彼女が入れる保管場所を作ったりしていた。両親と昌行はまだ同居中の為である。いくら身内でも古い世代の人々にとって等身大リアルドールはダッチワイフの進化版でしかない。全くの別物と説明してもおそらく無駄である。それゆえプライバシー強化をするしかなかった。お迎えする愛香が両親の反応を見て悲しまぬように。又昌行は待っている間にラブドールのメンテナンスと保管場所について調徹底的に調べた。色移り対策の白い下着やベビーパウダーも購入した。
「これでよしっと。他に何がいるか斎藤さんにメールしよう。何しろ双子の姉のマスターだからな。」昌行はお迎えする愛香に姉妹がいる事も嬉しかった。同じ母(製造用型)から生まれたから姉妹だと思っているようだ。愛香はいつでも姉に会いに行ける。
愛香が完成し、確認のための動画が届いた。昌行は何度も動画を見た。とても美しい姿である。即OKを出し出荷を指示した。翌日、出荷の通知が届いたときは旅に出て電車や飛行機に乗る愛香の姿をイラストにしてSNSにUPした。しかし追跡番号を入力しても中国のサイトは日本とは違い、現在地の質問の返事も遅くいい加減な所があり、必要とする質問の答えが曖昧な事が多かったので愛香の現在地が分からず不安な夜を過ごしていたが信じて待つしかなかった。
「きっとアイちゃんが守ってくれる。だってこんな奇跡を起こせるんだから。」昌行はアイちゃんが守り神となった事を信じている。昌行は今できる事を精一杯やろうと決意した。「男磨きを絶対に忘れないこと。だったよな。」
第三話 END


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