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ドール達の午後・・・スピンオフ 人を超えたロマンス 第二話

2019年4月某日、マヤ様は今夢中になっているタロットカード占いをマスターするために”博麗(はくれい)”という占い師のタロットカード教室に通うようになっていた。元々マヤ様は占いが好きで小学校低学年のころから占いをやっていたのだ。異常なほど当たるので気味悪がられていた。ある日担任の女性先生に「あーた!夫が浮気しているわよ!おほほほ。」と皆が見ている前でしかも大声で叫んだので先生に切れられて廊下に立たされたことがあった。しかし数週間後夫の浮気が発覚してその女性先生は離婚したのだ。以来その先生は離婚先生と生徒から呼ばれた。

さて教室には博麗(はくれい)というプロの占い師が大勢の生徒の前でタロットカードをシャッフルする。男性生徒は胸に注目する。「このようにシャッフルします。あ!。」手元がくるってカードがばらまかれた。マヤ様は心の中で「へたくそ、プロが聞いてあきれる!。」と思った。「このようにするとばらけます。悪い見本です。」マヤ様の心の声「こいつ大丈夫か?。」博麗は実際に一人の男子生徒をタロットカードで占って見せた。マヤ様は博麗が疑わしいのでマヤ様も持参のタロットカードを使ってその男子生徒を同時にこっそり占った。博麗はカードをシャッフルして占い結果を発表した。「あなた、今恋をしていますね。」「はい、さすがですね。」にやりと笑う博麗。「でも困難な恋ですね。でもきっと上手く行きますよ。」にこりと笑う博麗。安堵する男子生徒。しかしその時「意義あり!その恋は上手く行きません。そいつはコクったら瞬殺されます。」場内がどよめく。「あなた、授業の邪魔しないでください。」「何言ってるこのいんちき!その男子生徒が恋している相手は2次元だぞ!。おまえそんなことも分からないのか!。」「えええええ。!」「恋愛シュミレーションゲームやっているだろう。でも今のステータスだと瞬殺されるそ。来週発刊される攻略本まで待て。」場内がさらにどよめく。男子生徒が驚く。「どうして分かったの。誰にも言っていないのに。あなた凄いね。弟子にしてください。」「じゃあ俺も。」「あたしも。」マヤ様の弟子が急増した。その様子を見た博麗が切れた。「営業妨害だー。お前今すぐ出ていけー。二度と来るなボケー。」言われっぱなしじゃマヤ様も黙っていない。「みなのもの。よーく見るのだ。これがこの女の正体だ。民衆よ!目を覚ませ。そして立ち上がれ!!。」言い終わると静かに教室を後にした。数日後この占い教室は閉鎖された。マヤ様が以前その占い師に占ってもらいその結果が当たったのはまぐれだったようだ。
 数日後マヤ様が占い教室を潰した噂は学校中に広まった。川城祐希もその噂を耳にした。「マヤ様かっこいいなー。ますます惚れた。」料理研究会で料理をしながらそのエピソードを居合わせた生徒から詳しく聴いていた。「そうかあ~。やりすぎじゃないか~。」「何を言っている!悪を懲らす神様”不動明王様”みたいでかっこいいじゃないか。ますます惚れた。かっけー。」「上杉謙信じゃないんだからよ~。」「それは毘沙門天だ。」
 
 その日は年に一度の料理研究会の試食会が開催される日で大きな教室を借りて一般生徒や学校関係者に料理をふるまうというイベントが開催される。祐希はマヤ様に自慢の料理を食べてもらいたくて先日直接マヤ様に声をかけたのだ。

 数日前。受講していない講義に忍び込みマヤ様の隣の席に座った祐希は講義が始まる前にマヤ様に声をかけた。「やあ、奇遇だね。」「お前離れた席からやってきて奇遇はないだろう。」「僕は料理研究会の川城祐希 商学科4年生だ。今度料理研究会で試食会やるから来ないか??。これ案内状。」祐希はマヤ様に案内状を差し出した。綺麗な花柄の装飾が入った額に入れてある。しかも香水のかおりまでする。「あああありがと。でも額は邪魔だから返す。」マヤ様は額から案内状を取り出すと額だけ祐希に返却した。
そんなことがあり祐希はマヤ様が来てくれるかどうかものすごく気になってそわそわしていた。すると一人の美女が数名のお供を従えて会場に入ってきた。「お師匠様。こちらが例の会場です。」数名の女の子が丁寧にマヤ様を案内する。「だから弟子は取らないっていってるでしょ。」どうやらその女の子たちはマヤ様の押しかけ弟子のようである。「マヤ様さん来てくれたのですね。うれしいです。さささこちらにどうぞ。」「マヤ様さん?」マヤ様はその呼び名に戸惑った。マヤ様の為に高級な西洋アンティーク風の椅子とテーブルが用意されその上に豪華なフランス料理が並べられていた。「マヤ様さん。お毒見は済んでおります。安心してお召し上がりください。」「毒見?」いろいろ突っ込みたくなるマヤ様だがランチ代が浮くので我慢して言われるままにその用意された席に座った。祐希はひざまついてお盆の上に載せた100%果汁最高級の一杯3000円もするオレンジジュースをマヤ様に差し出した。服装はアニメのセバスチャン風シルクのタキシードである。親父から借りたようだ。マヤ様はテーブルの料理が食べきれないと判断し、弟子たちにもふるまった。「うんおいしい。さすがは品評会で常に上位の料理研究会ね。ほめてつかわす。」「ははっありがたき幸せ。」するとマヤ様のハンカチがテーブルから落ちた。他の生徒が拾ってマヤ様に渡そうとするが祐希はそれを止めた。「おい、そのまま渡すな。お預かりしてクリーニングに出してからお返ししろ。」祐希は校内のクリーニング屋に持っていくように指示した。「なにもそこまでしなくても。」マヤ様はさすがに悪いと思ったようだ。試食会は生徒や学校関係者だけでなく父兄や学校の支援団体関係者も招かれている。上品な雰囲気の社会人も数多くやって来るが中にはちょっと異質な生徒も来てしまうようだ。「あ、ここだ、良かったね。まだ料理いっぱい残っているよ。」その声にマヤ様は即反応した。「マヤ様、パピー君が来ましたね。どこから嗅ぎつけてきたのかしら。あ!又別の女の子を連れているわ。相変わらず節操ないなあ。」弟子の一人が呆れてつぶやく。しかしマヤ様はパピー君を見つめる。「あの無垢な笑顔にやられるのかもね。」微笑みながらマヤ様はパピー君を見つめる。「それに引き換え祐希君いいよねー。料理の腕は抜群だし服装のセンスもいいしイケメンだしこんな彼氏最高かよ!。」「私コクッちゃおうかな。」その会話の様子をマヤ様はにやにやしながら見ている。その時事件が起こった。「このスイーツおいしいね。全部食べちゃおう。」「止まらないね。」パピー君が食後のデザートを彼女と一緒にすべて食べてしまったのだ。マヤ様に夢中だった祐希は気が付くのが遅かったようだ。あわててパピー君のところに祐希が駆け寄る。「お前何やってんだ。そのスイーツは皆様の食後にふるまう為に取っておいたものだ。全部食べたのか?。」「いや、持ち帰ろうと思ってビニールに入れたものがある~返すね。」祐希は激怒した。「お前がさわったものなんか出せるわけないだろう!。あーあ 試食会がめちゃくちゃだ!どうしてくれるんだよ!。」会場が静まり返った。「もうスイーツの在庫はないんだよ。パピーお前どう責任取る気だ!」怒りが収まらない祐希。その様子を見かねてマヤ様が席を立ちあがった。「まあまあ、祐希とやら、少し落ち着け。お前もそんなところに(お一人様一個限り)とか但し書きも置かずにスイーツを置きっぱなしにしたんだ。100%パピー君のせいではなかろう。」「ですがマヤ様さん。常識で考えれは全部はないでしょう。」「さんはつけなくてもよい。世の中には常識という概念ほど曖昧なものはない。その事を肝に銘じておけ。」祐希はひざまついた。右足の膝は床のほこりで真っ白である。「ここで不毛な争いをしていては折角来てくださったお客様が不快に感じるであろう。おい、弟子志願者1号。」「ははっマヤ様。」「お前は確か大学の近所にあるお菓子屋の親戚だったな。今すぐ代わりのスイーツをここに持ってこさせろ。」「いやッ!」弟子志願者1号は断った。おもむろに弟子志願者1号は顔を赤らめてマヤ様に抱き着いて言った。「弟子にしてくれなきゃ、いやッ。」「で、弟子。」観念したマヤ様は弟子入りを承諾した。「皆の者、ご安心めされい!。ここにおる私の弟子一号が代替えのスイーツをすぐに用意する。だがしかし!待ち時間が退屈であろう。そこでだ、私がそれまで急遽占い大会を開催する事にした。占って欲しいものは前に出い!。」マヤ様の機転でパピー君はピンチを脱する事が出来た。「マヤ様 俺の恋愛運占ってください。」真っ先に祐希が名乗りを上げた。「じゃあおれも。」「私も。」プロの占い師より当たるという噂が広がっていたので希望者が殺到した。皆が注目する中テーブルをはさんで向かい合って座るマヤ様と祐希。マヤ様はタロットカードをシャッフルする。胸が揺れる。胸を見る男子生徒に父兄の父、教授、学園長。マヤ様が切れた。「おまえら!聖職者の身でありながら何たるハレンチ!恥を知れ!。」おびえ、うつむく男性全員。もはやマヤ様は学園の支配者といっても過言ではなかった。「ほう!お前が恋焦がれる女性は近くにいるようだな。この中にいるぞ。」「目の前にいます。(心の声)」「はあ?目の前?。」「えええええ!。」驚く祐希。後ろを振り向くマヤ様。「誰もおらんではないか。お前霊感でもあるのか?。」マヤ様は占いを続ける。「う~ん。お前は身勝手な、そして困難な恋をしているな。相手の女性の感情はLOVEというよりLIKEだな。だがLIKEからLOVEへの変化はものすごく困難な道だぞ。」祐希の目が真剣になる。「それでも俺は行きます。可能性がどんなに低くても自分に嘘はつけないです。」その言葉に場内から拍手が起こった。間もなく代替のスイーツが届いた。祐希はすぐにお一人様一個限りの札を立てた。パピー君がスイーツを取ろうとしたので祐希はそれを阻止した。「おまえまだ食べる気か!。もうやらない。」料理研究会の年に一度の試食会は無事??終了した。

マヤ様は祐希からお土産を大量に持たされた。「おおおお重い。こんなにたくさん持てないよ。」「マヤ様。手伝います。」「俺も送っていくよ。」マヤ様の弟子一号と祐希がお土産を運ぶのを手伝ってくれた。マヤ様は弟子一号の名前をまだ知らないので名を聞いた。「うーんとね。弟子が名字で名前が一号でーす。」「真面目に答えないと破門だぞ。」「氷室空子っていいます。(第一期ドール達の午後・・・参照)」空子はマヤ様の後ろ姿をお土産を運びながらじっと見る。「何だかおしりにいやらしい視線を感じるな。」振り向くマヤ様。「おまえなんだか変な目しているな。前歩け。」空子は斜め前を歩く。今度はマヤ様の胸を見る。「前もダメか。お前目をつむって歩け。」「それは無理ですよ~。」空子は時々祐希を睨む。「この薄汚い悪い虫をマヤ様から排除せねば。(心の声)」「いたたた。なんだか突き突き刺すような視線を感じる。ひえっ。」空子がものすごい形相で祐希を睨むので祐希は身に覚えはないのに身の危険を感じた。
祐希はお土産を運びながら時々マヤ様を見る。見ては何かを言いかけるがなかなか勇気が出ない様子だ。しかし、しばらくして今がチャンスとばかりに祐希が意を決して口を開いた。「マヤ様さん、いやマヤ様、今日は俺のピンチを助けてくれてありがとう。是非お礼がしたいんだ。」「別にお礼なんていいわよ。お料理美味しかったしお土産いっぱい貰ったし。」
空子がさらに睨む。それを無視して話を続ける。「良かったら今度うちの料理研究会に遊びに来てくれよ。今度はマヤ様の為だけにお料理作って食べさせてあげたいんだ。」マヤ様はその意外な言葉に少し胸がときめいたような錯覚?を感じた。普段のマヤ様は興味がない男性の誘いなど無視するのだが今日の祐希の努力を見てその人柄に興味を持ったらしく快く承諾した。「いいよ。料理美味しかったし。いつにする?。」その言葉を聞き終わらないうちに祐希は叫んだ。「やったー。」「うるさい!。私もついていくからな!。」空子が切れた。しかし祐希は空子の声など全く聞こえなかったようだ。第二話 END


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