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2021年12月某日。金田鷹章はどういう訳か秋葉原にいる。駅前のオブジェでしきりに時計を気にしている。今日は日曜日、鷹章は2時間かけて電車で移動し、待ち合わせ場所である駅前オブジェに30分前に来ていた。あまり気合いの入った格好ではないのでデートではない事だけは確かである。20分ほど近くのベンチでスマホを見ながら待っていると数人のイケメンが近くに寄ってきた。「あの人たちかな?。いや違うな。等身大ドールマニアがあのような若いイケメンであるはずがない。」再びうつむいてスマホを見ようとすると。「あのー大作さんですか?。」イケメンが声をかけて来た。「ええ?どうして私のニックネームを?。もしかしてスマトラさん??。」スマトラというのは鷹章がやっているSNSでコメントのやり取りをしている人の一人である。「ここでは寒いのでいつも集まるガストに行きましょう?。」「なぜにガスト?。」素朴な疑問を抱きながらも鷹章はスマトラさんの後に続く。オフィス街のビルの2階に大きなガストがあり奥の席に20人ほどの男女が座っていた。「お待たせ。今日初参加の大作さんを連れて来たよ。」「大作です。本名は金田鷹章です。」挨拶をし終わると軽い拍手が起こった。集まったメンバーを見ると20代前半の若いイケメンが多く30代40代後半に見える人もおり、セレブ風で社会的地位も高そうである。「まいったな。等身大ドールのオーナーなんてみんな不細工だと思っていたらあら不思議。イケメンばっかじゃないの。失敗したな。今度から要潤のお面被ってオフ会に参加しよう。」鷹章は心の中で思った。奥の別の座席では女性等身大ドールオーナーの集まりもあるようでこれまた20代前半ぐらいの美女揃いである。「一体どうなっているんだ。女性オーナーも美女揃いじゃないか!。」鷹章はものすごいカルチャーショックを受けた。「私はスマトラこと池野面太といいます。25歳独身です。」「はじめまして。よろしくです。しかし驚いたな。みなさんイケメンばっかですね。女性も綺麗な人多いし。」「私は実はバツイチでして。いろいろありまして今はドールが嫁です。」「私なんか若い頃ちょこっと数人と付き合っただけで1年ちょっとしか続かなかったので結婚できただけでも羨ましいですよ。」鷹章の言葉は本音である。スマトラさんの隣にはメガネのインテリ風20代前半のジャニーズ風イケメンが座っていた。「もしかして小さなブラジャーばかり集めて着せているコブラ君?。」「え?何で分かったんですか?。」「だってコメントの口癖の”こーぶらー”を連発しているので。」「しまった!つい口に出てしまった。バレちゃしかたない。ああそうだ!お土産の極小マイクロビキニ差し上げます。」コブラ君は金色の超小型マイクロビキニを差し出した。「これは!。ほとんど紐に見えるけど局部はぎりぎりに隠れる優れもの!ありがとうございます。<m(__)m>では返礼にTPE製の舌を👅プレゼントします。」TPEと呼ばれる柔らかい素材でできたビニール入りの女性の舌型の塊をコブラ君にプレゼントした。「おおおお!これは絶妙な大きさで色も薄いピンク色だ!ありがとうございます。」つい大声が出たコブラ君だがそのために他のお客の視線をお集めてしまった。「おおそんなに喜んでいただけるとは!では特別にTPE製の乳首もプレゼント!。黒と茶色とピンクどれがいい?」おぞましい超マニアックなグッズのやり取りに自然と一般人の視線が集まる。その視線の先には超小型ブラジャーと人工の舌や乳首がある。一般人の白い視線が痛い・・・。しかし当人たちは夢中であり興奮を抑えきれない。「しかしコブラ君も実は若いイケメンだったのですねー。ドールじゃなくても人間の女性にモテるでしょう。」コブラ君はさみしそうに答える。「いやー、何度かコクられたことはあったんですがねー。付き合いだしてもすぐフラれるんですよ。笑い方がキモイとか、歩き方が不気味とか。パンの食べ方が汚いとか。だんだんめんどくさくなって付き合うのを止めて等身大ドールを嫁にすることにしたんですよ。だって裏切らないし、いつもそばにいてくれるし。キモイとか言わないし。」人形なのだから当たり前である。しかしコブラ君の苦い女性経験が何もしない何も言わない心変わりしていなくならない無機物の等身大ドールに夢中にさせたのである。「いわゆるカエル化現象というやつですね。しかし今の若い男の子は大変だね。それじゃ恋も出来ないね。完璧な男などいないのに完璧を求める若い女性たちが増えたのですね。」鷹章は驚きを隠せなかった。又、今鷹章が若者だったら恋人など絶対できないだろうなと恐怖を感じた。「いろいろな女性と付き合ってきましたが等身大ドールちゃんが最高の嫁ですよ。」コブラ君は幸せそうである。
鷹章がコブラ君との会話に夢中になっていると後ろから20代前半ぐらいの見るからに冷たそうな綺麗な女性がスマトラさんの隣に座った。「へーこの方が大作さん?。壁に張へばりついたカエル少女の写真見ましたーウけるー。ってみんな言ってましたよ。」若い女性に免疫のない鷹章は緊張してしどろもどろになってしまった。「え?あなたも等身大ドールマニア?。」「コメントやり取りしてるじゃないですかー。エアポートちゃんですよー。本名は氷室空子でーす。」なんと!。あの飯能マヤ様が運営する私設教育機関の施設長、泣く子も黙る鬼の施設長!氷室空子である。いったいどういう事か?。「差し支えなければご職業は何関係で?。」「私設教育、いや某学校の学園長です。」「その若さで学園長とは凄いですね。ところでハプノシスヘッドフォンのΣ君がお好きなのですよね。私は流王様のファンです。いやーあの作品の魅力は男女関係ありませんよねえ。」どうやら推しのアニメがかぶっているようである。そうでなければ40代後半の鷹章が話も出来ない相手である。「氷室さんも等身大ドールマニアとして長いのですか?。」「1/6からスタートしてかれこれ10年です。だんだん大きくなってきました。今では2メートルのイケメンと一緒です。」「2メートルとはビッグですねえ。」「体重も50kgあります。大変だけど人間の男性がどうしても好きになれなくなっちゃいまして。」「まあご自分が満足する事が一番ですよ。」「私の場合よくコクられるんですが長続きしないんです。デートしてても無表情でいつも怒っていると思われたり、やらせてくれないとか言われたり、忙しくてなかなか会えないから浮気されたり、女友達には狙っていた男が私と付き合いだしたからと言っていやがらせされたり。もう人間の男との恋には疲れました。今のドールダーリンが一番いいです。」空子の恋愛遍歴も大変だったようである。「ウチのダーリンは3人いるのですが3人とも仲が良くて私が会話に入れない事が多くて悩んでいるのです。」「ええ!。私はまだ会話まで至らないので羨ましいです。上級者ですね。会話は出来ないけれどアニメ見ていてこのキャラが今季の嫁だと言うと睨まれるので、嘘です嫁はミウ様ですと悔い改めて許しを請うことが増えましたね。」何ともスピリチュアルでマニアックな会話をしている。空子は会話の途中ではっと我に返り言った。「お分かりだと思いますけど今日のオフ会記事に私の写真や名前はUPしないでくださいね。上司にばれたらクビにされますので。(マヤが等身大ドール撲滅活動しているのに私が実は等身大イケメンドールマニアだとバレたら大変よ!。裏切り者の名を受けるデビルマン呼ばわりされて処刑されるわ。)」「大丈夫ですよ。私も顔出しご勘弁くださいね。私も身内にばれると処されるので。」等身大ドールマニアはアダルト商品のマニアという事もあり隠れマニアが多いようである。日曜日の夜はあっという間に過ぎていく。普段孤独な等身大ドールマニアにとって同じ価値観を共有するマニア同士の会合は地獄に仏な集まりなのかもしれない。
そしてその夜、ここはマヤ様の私設教育機関である。マヤ様にさらわれた若いイケメンが10日間の洗脳教育を受け、マヤ様に絶対服従する信者にされる恐るべき施設である。ここに柳谷笈斗という特別捜査官が潜入しているが洗脳に抗うのも大変な様子である。今日は週に一度のマヤ様の視察監査がある日で施設長の氷室空子がマヤ様の到着を待っている。早めにマヤ様が到着してもいいように到着予定時間の30分前にゲート内側の駐車場で出迎えの準備をしている。「はあー。昼間は秋葉原でオフ会参加したから休みなしだわー。明日有給取ろうかしら。」少し疲れた様子の空子だがそんな表情を上司のマヤ様の前で見せたらたるんどる!と恫喝されるので必死で我慢している。遠くにマヤ様のリムジンのライトが見えて来た。「マヤ様のお出ました!皆の者敬礼!。」マヤ様の信者たちが一列に整列して右手を斜め上にあげて整列している。リムジンからマヤ様が出て来た。マネージャーの日陰ひなたも一緒である。「偉大なる我らが美しき指導者!飯能マヤ様!」一糸乱れぬ見事な敬礼でマヤ様を出迎える。「皆の者!出迎えご苦労!。今日は月に一度の監査の日だ。準備はいいか?。」「はっ、今日お越しになられる事を皆楽しみにお待ちしておりました。」氷室は赤いビロードで作られた道の上を歩くマヤ様を会議室に案内する。骸骨が大好きなマヤ様は骸骨の装飾が施された時価数百万円の玉座に座わりプロジェクターで施設内で行われたここ一か月間の教育活動の説明を受けた。「以上になります。予定信者獲得数は10%増です。教示(規則)に違反した者は全体の3%です。その不届き者は裁判にかけて除名処分に致します。連れてこい。」空子は教示に違反した女性信者を全裸にして施設内の裁判所に連行した。その裁判を会議室の窓からマヤ様が見ている。「この者は、マヤ様よりありがたい教育を受けさせてもらった上にマヤ様直々のご指導を受けさせていただけるメイクアップ教室で特別メイクを学んだにもかかわらずその見た目にうぬぼれて人間性を磨く事を止めました。これは心身ともに美しくあらねばならぬというマヤ様の教示に背く事になります。具体的には恋人がいるのに二股かけて大金を貢がせて金が無くなった男を捨て、さらに又違う男を誘惑して又二股かけようとしました。マヤ様から与えらてた美を悪用し、冒涜しました。」裁判にかけらてた女性は確かに美しい。がしかしメイクがかなり厚く見える。「お許しください。今まで男性に相手にもされなかった私がマヤ様のメイク教育のおかげで多くのアプローチを受ける事が出来るようになりましたのでつい欲が出てしまいました。」氷室はものすごい形相である。「お前はマヤ様のお慈悲を仇で返した。マヤ様の信者である女性に二股かけられて大金貢がされて捨てられた男はどうなる!?女性不信に陥るだけでなくマヤ様の信者全体を憎むようになるだろう!。お前はマヤ様の評判に傷をつけた。万死に値する!。除名処分とし、二度とマヤ様からメイクアップ術を学ぶことはできなくなるだろう。メイク技術は日々進化する。お前が学んだ技術などすぐに見向きもされなくなる。又、高効率なダイエット教育も受けられなくなるし飲むだけで激やせするやせ薬の激安販売もうけられなくなる。」マヤ様の教示に背いた信者の除名処分が決定した。マヤ様のおかげで美しさが保たれ多くの男性に言い寄られた元信者は除名処分となった。絶望に打ちひしがれる元信者。マヤ様は会議室の特等席で裁判の様子を見ていた。「空子、お前の教育がたるんでいるからあんな不届き者が出るのだ。見せしめもいいが再発防止を徹底強化せよ。ああそれとラブドール禁止という教示も絶対に忘れるな!。厳罰に処すという項目も付け加えたから宜しくね。もし違反したら施設長のお前もこのように全裸で公開裁判にかけて除名するわよ。」「(もうすでに私違反しているのですが・・・)」言えるわけがない空子である。「等身大ドールマニア共のSNSアカウント凍結計画の進捗状況はどうなっている?。」「ははっ!。ご指示があった日から本日まで約2000件のマニアを凍結させました。再度取得したアカウントも1万人の信者の通報により凍結は時間の問題です。」「何度もしぶとい奴らだ。ところで最近女性の等身大ドールマニアも数多くいることが分かった。特にこのエアポートちゃんとかいうIDのツイッターアカウントがバカみたいでむかつくのよね。こいつもさっさと凍結させなさい。女性の身でありながら男性イケメン等身大ドールに夢中になりダーリンとか言ってちゅっちゅしている記事なんて吐き気がするわ!。どうせとんでもないドブスに決まっているわ!。」空子は一瞬ドキッとしたがだんだん腹が立って来た。「でもこの男性ドール可愛いじゃないですか。」「おまえ何でこんな奴の肩を持つんだ?。怪しいな・・・。」空子は我に返った。「かしこまりました。ご命令に従います。」空子は心で泣きながら自らのアカウントを通報した。「(ごめんねーダーリン!ああこの記事はお誕生会の記事なのに。消したくないわー。😢)」マヤ様には逆らえず自らのアカウントを凍結した。自らの思い出記事が数多く掲載されているアカウントを自らの手で凍結させられた空子はそのショックで翌日は寝込んでしまった。
ACT1 END

2016年、某ハイスクール。進学校で名高いこの学校にある日”大山雅子”(後の飯能マヤ様)という美少女が転校してきた。ものすごい美少女が転校してきたと学校中の話題になり、他校の生徒までマヤを見に来るという現象まで起きてしまう。朝のホームルームの時間にマヤが教室の前の先生の隣に立っている。「えー今日からこの学校のこのクラスに編入する事になった大山雅子(後の飯能マヤ様)さんです。みなさん仲良くしてあげてくださいね。」眼鏡で20代後半ぐらいの男性教師がマヤをクラスのみんなに紹介している。「大山雅子(後の飯能マヤ様)です。趣味は占いです。昨年まで北欧に留学していました。日本に戻り皆様と一緒に勉強できる事を嬉しく思います。」挨拶が終わるとぺこりと深くお辞儀をした。その仕草は裏表のない純粋なものに見える。「氷室君の隣が開いているので氷室君の隣の席に座ってね。」大山雅子(後の飯能マヤ様)は高校時代の氷室空子の隣の席に座った。氷室は黙って振り向きもしない。何やら真剣な表情で何か悩んでいるように見える。大山雅子(後の飯能マヤ様)は一度だけニコッと笑ってすぐに前を向き、以後は一切氷室を見る事は無かった。氷室は勘が鋭く大山雅子(後の飯能マヤ様)の態度や言葉使いが偽りのものだと見抜いていた。「この大山雅子(後の飯能マヤ様)という子何か底知れぬオーラを感じるわ。とても危険な何かがあるわね。」氷室は第一印象で大山雅子(後の飯能マヤ様)を警戒した。「ねえねえ大山雅子(後の飯能マヤ様)さん、占いが出来るなんてすごいね。早速占ってよ。」クラスの女子達が大山雅子(後の飯能マヤ様)に集まる。「良くってよ、タロット占いでいいわよね。」用意していたタロットカードを巧みな手さばきでスプレッドして早速依頼主の女の子を占った。「ふーん、あなた、恋をしているわね。それも身近な人ね。安心して、その恋は実るわ。」「えーすごーいい!なんでわかったの!。」女子は大山雅子(後の飯能マヤ様)の占いが当たっているので驚いた。そこへクラスのボス的に見え体の大きな女子”土田おさみ”がやってきた。「あら大山雅子(後の飯能マヤ様)さん、いきなり大人気ね。タロット占い?。でも当たるのかしらね?。」「えーだって私が恋しているって言い当てたわよ。」「あんたは分かりやすいのよ。大山雅子(後の飯能マヤ様)さん!学校に遊び道具持ってきていいのかしら?。あと適当な事言っていると後で困る事になるかもしれないからほどほどにね。」嫌味たっぷりの皮肉である。「あら!これは占いよ。あなたの言葉はすべてのプロの占い師にも当てはまるのかしら?。プロの占い師に同じことが言えるのかしら?。だとしたらあなたは立派な方なのね。すごいわ。尊敬しちゃう。ついでにあなたも占ってあげるわ。あら、あなたは失恋するんだって。かわいそー。」クラス中に笑い声が上がった。大山雅子(後の飯能マヤ様)の皮肉も強烈である。その様子を見ていた空子が少し笑った。その様子を大山雅子(後の飯能マヤ様)は見逃さなかった。爆笑が収まった頃、ふと大山雅子(後の飯能マヤ様)が空いているから座れと言われた席を見る。その椅子をじっくりよく見るとなにやら邪気のようなものが見えた。嫌な気配がすると大山雅子(後の飯能マヤ様)は思った。大山雅子(後の飯能マヤ様)は早速得意の占いでその邪気の正体を探る。「あら、とても悲しい結果が出たわ。傷ついて泣いているイメージね。ねえ、この席にどんな子が座っていたの?。」雅子が占ってあげた女子に尋ねた。「ああ、ここは日陰ひなたさんの席だったのよ。その子は今は登校していないわよ。」雅子は占いの結果と日陰ひなたという女生徒の名前が頭の中でリンクした。「ねえこのクラスで日陰さんの事よく知っている人は誰?。」「氷室さんが知ってるんじゃない?。」雅子は隣の氷室を見る。氷室は視線をそらす。氷室の周りには誰もおらず休み時間になってもだれとも話す様子が無い。氷室空子が孤立していると雅子は思った。クラスのボス的な女生徒土田おさみがこの件にかかわっていると占いの結果にも出ている。おさみは高圧的で気が強そうだが人望ななさそうでクラスの女子の半数以上が彼女を避けているように見える。一方、氷室はクラスのどのグループにも所属しておらず孤立している様子である。「氷室さん、放課後ちょっと付き合ってくれない?。」「私は誰ともかかわらない主義なの。ほかを当たってくれない。」雅子は間髪入れず話す。「そう、ありがと、じゃあ決定ね。この後の授業が終わったらよろしくね。」雅子は勝手に決定事項とした。そして放課後校門前で雅子は氷室を待つ。しかし氷室は来ない。氷室は裏口からこっそり下校していた。氷室は一人で歩き、ある家の前に立つ。すると・・「遅かったじゃない。」雅子がその家の前で待っていた。家の表札には日陰という名前がある。「どうして私がここに来ることが分かったの?。」「あなたはいつも放課後にこの家に来るけどいつも呼び鈴を鳴らす勇気が持てないようね。」氷室は日陰ひなたと仲が良かったのだがひなたがいじめにあうようになり氷室もいじめのボス土田と対立するようになる。気が強い氷室が土田と激しく対立。しかし対立すればするほど土田のひなたへのいじめが激しくなるという悪循環が発生し、ついにひなたは登校しなくなった。氷室はひなたを救えなかった事を気に病み、ひなたに会う勇気が出なくなったのだ。家の前には来るものの呼び鈴を押す勇気がいつも出ないのだ。雅子は突然、ひなたの家のドアを開けて入った。鍵は開いている。雅子は大胆にも面識のないひなたの家に上がり込みひなたの部屋に入った。するとなんと日向が倒れていた。倒れていた場所に大量の睡眠薬がある。雅子はすでに救急車を呼んでいた。すぐに救急車が到着してひなたを救急病院に運んだ。氷室と雅子が付きそう。「雅子さんなぜひなたが危ないと分かったの?。」「私の占いに日蔭さんが危ないと出たので急いで来たのよ。私が占わなかったら死んでいたかもね。」氷室は黙ってうなだれている。ひなたを入院させた後も雅子と氷室はひなたに付き添っている。数時間後ひなたは意識を取り戻した。「ひなた!。良かったー。」氷室はひなたの掌をしっかり握りしめた。「ここはどこ?。そうか病院か。私助かったのね。」ひなたは涙を流した。「雅子さんが助けてくれたのよ。」ひなたは初対面の雅子を見つめる。「私は雅子、今日あなたが通っていた学校に転校してきたのよ。私の特技は占いよ。私の占いの結果あなたの命が危ないと出たので氷室さんと一緒にあなたの家に行ったという訳。」簡潔に冷静に状況を説明する雅子。「さっき氷室さんからあなたが土田おさみのグループからいじめを受けている事も聞いたわ。土田が好きだった先輩にあなたがコクられてそれを断った事が土田のプライドをズタズタにしたようね。」ひなたは黙ってうつむいている。「このままだと出席日数が足りなくなって留年するわよ。」「でも、行きたくない。」雅子はにやりと笑う。「誰が学校に行けって言ったのよ。退院したらこの地図の教会に来なさい。いい!決定よ。命の恩人の頼みぐらい聞きなさいね。」雅子は言い終わるとすぐに病院を後にした。氷室は雅子の強引な態度に少々困惑しつつも力強いリーダーシップを感じた。氷室は雅子が置いていった地図を見る。するとその教会は某国の難民の子供たちを預かって面倒見ている施設も兼ねている事が分かった。どうやらひなたを難民の子供たちに会わせることが狙いのようである。
翌日、クラスのある女子が雅子に相談を持ち掛けて来た。「雅子さん、この前は占いありがとう。勇気を出して先輩に今日告白しようと思うの。」「あら、せっかちね。でも告白するなら十分な準備が必要よ。私がメイクしてあげる。」「本当!うれしい。」雅子は放課後女子トイレで告白する女子にメイクを施した。鮮やかな技術で高級でナチュラルな素材の化粧品を巧みに使って一見化粧していないかのような自然なメイクでその子の魅力を最大限に引き出す事を優先してメイクしている。「私のメイクはあなた自身が持っている魅力を最大限に引き出すだけのものよ。あなたは元々とてもよい心を持っているわ。それが表情によく表れているのでやりやすいわね。できたわ。」雅子はその子を鏡の前に立たせる。「ええええ!これが私!。うそみたい!。」メイクしてもらったクラスの女子はその見事なメイクに衝撃を受けて自分の目を何度も疑った。「これで落ちない男はいないわ。安心して。」メイクしてもらったクラスの女子は早速先輩を呼び出した場所に向かった。数分後、雅子の携帯にメールが届いた。「先輩二つ返事でOKだって。私たち付き合う事になったわ。雅子さん本当にありがとう。」どうやら上手く行ったようである。
雅子の占いとメイク技術は学校中の評判になり、学校の大半の女子が雅子を慕うようになった。そんなある日クラスのボス的存在の土田おさみがマヤにメイクを依頼してきた。「雅子さん、あなたのメイク技術はとても素晴らしいのね。私にもやってくれない?。」雅子はあからさまにあきれた表情で答えた。「あら、土田さんは元々ご自分でメイクしているじゃない。しかもかなり分厚いメイクね。30過ぎたおばちゃんだってそんなに分厚くないわよ。しかもお肌に合っている化粧品使っていないでしょう。お肌がガザガサよ。私は無駄な事をするほど暇じゃないよ。」冷たく言い放って雅子の取り巻きの女子グループに戻った。「転校生のくせに生意気な!。この恨み必ず晴らしてやるわ。」土田はまたしても雅子に皆の前で侮辱された。
 昼休みが終わり午後の授業は体育である。土田はスマホを隠し持って雅子の近くで着替える。雅子の下着姿をスマホで撮影する事に成功した。「見てなさい。これを公開してやるわ。」土田の復讐は実に低俗で陰湿である。
土田は撮影した雅子の下着姿をプリントアウトした。それを持って深夜学校に忍び込んだ。「防犯カメラの位置は把握しているわ。ここなら人も多く通る。雅子が不登校になるのももうすぐね。」土田は雅子の下着姿の写真をプリントアウトして校舎の壁に貼りだした。翌日。土田は何食わぬ顔で普通に登校した。しかし学校はいつも通り静かである。「あれ?変ね。もっと騒ぎになっていてもおかしくないのに。」土田はいつもと変わらぬ校内の様子に困惑する。そして雅子の写真を貼りだした場所に行った。すると・・「ない!写真が無い?風で吹き飛ばされたのかしら?。まあいいわ、又貼りだしてやる。」するとそこに雅子が現れた。「あら、土田さんおはよう。あなたが探している物ってもしかしてこれかしら?。」雅子は自分が盗み撮りされた写真を持っている。「綺麗に撮ってくれてありがとう。でもどうせならもっと私の胸を強調してほしいわ。こんなふうにね。」雅子はある女生徒の下着姿の写真を土田に渡した。「こっこれは!私の下着姿!いいいいつの間に?。」「それだけじゃないわよ。この動画見て。」雅子は土田が学校に侵入して雅子の下着姿の写真を貼りだす動画を土田に見せた。「あなたがやった事は立派な犯罪よ。これであなたは退学間違い無しね。さようなら。ああこれは餞別のお土産。」雅子はさらにもう一枚の写真を土田に渡した。「こここここれは私のすっぴんの写真じゃない!。」「あなたメイクすればそれなりに綺麗に見えるけど素顔は残念よね。無理なメイクでお肌が荒れ放題じゃない。」その写真はとても女子高生とは思えない物だった。「私の占いをなめてもらっちゃ困るわね。あなたがやろうとしている事なんてすべてお見通しよ。」土田は突然地面に這いつくばって雅子に土下座した。「お願い、この事は秘密にして。」雅子はにやりと笑った。「どうしようかなー。私の下着姿が公開されかけたしなー。私の親友の日陰さんや氷室さんにも意地悪したしなー。」マヤは少し考えるふりをして条件を出した。「それじゃあ私のお願いを聞いてくれたら許してあげるわ。」雅子はいくつかの条件を土田に出した。
翌日。学校内である表彰式が行われた。表彰されたのはあの日陰ひなただった。月曜日朝の体育館での全体朝礼で全校生徒の前で表彰された。「日陰ひなた殿、あなたは学校を休学してまで難民の子供たちのお世話をしただけでなく、子供たちに日本語や日本での生活習慣などを教育し、日本での自立を支援しました。あなたはわが校のほこりです。模範的学生です。」校長自ら表彰状を読み上げてひなたに手渡した。ボランティア参加のための休学扱いとなり単位も取得し無事進級も決定した。ひなたは涙を流しながら喜んだ。
一方、土田おさみはというと、在学中ひなたの子分となる事を誓わされた。「ひなた様、日陰家の庭の草刈り終わりました。」「じゃあ次は家中の掃除と犬の散歩、猫のエサやりに教会の難民の子供たちに大量のお菓子を自費で届けて頂戴。それと教会の掃除と毎週日曜日の礼拝の手伝いに乳幼児のおむつ交換と入浴20人もお願いね。」「ええええ!。」

ACT2 END

ここは金田鷹章の優秀な甥金田慎太が通う某国立大学。慎太は夏休み中マヤ様から逃げるために逃亡の旅に出ていたが大学の単位がやばいのでおそるおそる大学の講義に出る為大学に戻っていた。「ふう、マヤ様の信者らしき人物も最近はいなくなったな。どういう事だろうか?。まあいいや、休学期間も限界だし司法試験の勉強もしなければならないし危険を承知で大学に復学するしかないな。」2022年1月某日。年も明けて正月気分も無くなりつつあるこの時期は大学の講義数も少なく、学生の数も少ない。1限目の講義が終わった後学食で慎太が食事をしているとある学生が隣に座って話しかけて来た。「君は金田慎太君だね。はじめまして。私はアニメ研究会の岡田屋といいいます。」岡田屋と名乗る学生は笑顔で慎太に話しかけて話を続けた。「君が数か月間大学からいなくなった後大学もいろいろあってね。マヤ様の信者が一気に増えて布教活動も活発になった。しかし多くの学生がマヤ様の信者になって勉強をしなくなり大学の偏差値が大きく下がった。それに危機感を感じた大学側が布教活動を禁止した為マヤ様は別の大学に布教活動を移した。もう安心していいよ。」「なぜ僕がマヤ様から逃げている事を知っているの?。」岡田屋は話を続けた。「もとはと言えばウチの会長が君に変なお願いをしたことが原因だから罪悪感を感じているんだよ。だからこの情報を慎太君に伝えて安心させてやってくれと頼まれたんだ。」岡田屋はどうやら今の大学の状況を慎太に伝えて復学しても大丈夫だと伝えたかったようだ。「そうか、ありがとう。安心したよ。」そう言い残して席を立とうとしたが岡田屋が慎太の右手首を掴んだ。「放せ!。」「実は君に個人的な相談もあってさ。場所を移して話さない?。」「マヤ様の信者にだけはならないよ。」「そうじゃなくて。等身大ドールの件で聞きたいことがあるんだ。」「え?。」慎太はあまりにも意外で予想外の言葉に思考が混乱してしまった。「何で見ず知らずの学生が等身大ドールの事を聞きたがるんだ。変な噂が広がっているのかな?。」その変な噂の事も気になるので岡田屋の話を聞くため大学内の喫茶店に移動した。
 大学内喫茶店。「ここならゆっくり話ができるな。暖房もあって温かいし。ああ改めて僕は岡田屋といいます。あだ名はモアーズです。よろしく。」「あだ名なんてどうでもいいよ。ところで話って何?。」「実は僕、今度デートするんだ。別の大学の学園祭のカップリングパーティーに参加してカップリングしてさ。」「それはおめでとう。それと僕が何の関係があるの?。」「僕は車が好きでドライブデートにしようと思っていてね。ドライブシアターで映画でも見ようと思ってさ。そこでデートの練習に君の超リアル美女等身大ドールをお借り出来ないかなって思ってさ。」モアーズは恥ずかしさでもじもじしながら慎太にお願いした。「断る。その等身大ドールは僕の不出来でスケベなおじさんの持ち物で僕の所有物じゃないし。」モアーズはちょっとひるんだがそれでも引き下がらない。「頼むよ。彼女に嫌われたくないんだ。シュミレーションにはリアルさが必要なんだよ。」食い下がるモアーズ。「もちろんただとは言わない。君が欲しがっている1/3フィギュア”プルキュアシリーズ”のピンクキュア新品を差し上げるから。」慎太の顔が急激にへなへなに変化した。「そこまで言うなら仕方がない。どうせ僕の等身大ドールじゃないし。わかった。1/3ドールと引き換えにその話引き受けるよ。」モアーズは喜びの余り立ち上がって慎太の右手のひらを両手で握った。「ありがとう!。これで完璧な練習ができる!。」「放せ変態!そんな趣味はない!。」慎太はモアーズの掌を振りほどいた。
 慎太はその日の夜叔父の鷹章にメールを送った。「おじさんお元気ですか?。またアルティメットリアル社の等身大ドールを無償で貸してほしいので貸してください。」鷹章は仕事が終わり一人でビールを飲んでいた。「ん?。又あの性悪な甥のおねだりか!。今度は騙されんぞ!。」「マヤ様の無修正生写真をお礼に差し上げますので貸してください。」「マヤ様のむ無修正生写真だと!!。OKOKOK!水臭いじゃないか!可愛い甥の為なら喜んで貸すぞ!。」鷹章は言葉の意味を良く確かめもしないで三つ返事で貸し出しを承諾した。アホである。「今アルティメットリアル社のドールは貸し出し中だからアルテトキオのマキちゃんでいいな。」「それっぽいリアルなドールならなんでもいいよ。」慎太は鷹章から送られてきた写真をモアーズに転送した。「おお、これは美しい!しかもリアルだ。ありがとう慎太。」モアーズからお礼のメッセージが届いた。
翌日、大学内駐車場で慎太はモアーズと待ち合わせしていた。午後2時。モアーズは講義を終えて車で駐車場にやってきた。なんとBMW Z4である。「え?これがモアーズ君の車?。」「BMW Z4の初代だよ。意外と安いんだ。見栄も張れる。」モアーズはカーマニアで車に詳しいらしく一見セレブに見えそうな車を安く入手したようである。「父が中古車ディーラー経営しててさ。この車業販のオークションで買ったから激安なんだ。」オープンカーなど初めて乗る慎太は少し興奮している。モアーズの車で叔父の鷹章の家に向かった。モアーズは初デートの為の訓練用とはいえモデル級の等身大ドールを借りられるのでとてもうきうきしている。運転しながら歌を歌っている。「めざめーたーばかりーの♪あしーおとーきこえーるわー♪。」「モアーズ君うきうきだね。そんなにデート楽しみなの?。」「プロのモデルみたいな美女ドールで訓練して臨めば本命の彼女をものにするのも夢じゃない。俺って女性の前に出ると緊張する性分でさ。それを克服するのが今回の訓練の目的さ。」モアーズはものすごく張り切っている。鷹章の家に到着したのは夜8時過ぎであるが田舎なのでこんな時間でも深夜みたいにだれもいない。
荒野にポツンと一軒だけ建っている一軒家の庭に車で入る。「え?こんなボロ屋敷におじさん住んでいるのか?。」「ボロ屋敷で悪かったな!。」鷹章が出迎えていた。「ところで慎太!マヤ様の無修正生写真は?はやくくいれ!。」「はいはいはい、今出しますよ。」慎太は一枚の封筒を取り出した。「なんだこりゃパスワードか?。」「そこに記載したURLにアクセスしてそのパスワードを後でいれてちょうだい。」「わかった。しかしお前も大胆だな。このドスケベ!。」「ところでドールは?。」「これだ。40kgあるから気を付けろよ。」鷹章と慎太はドールをモアーズの車の助手席に乗せた。白いドレスに毛皮風のコートを着せてある。「え?これ本当に人形なんですか?。すごくリアルですね。」「胸触ってみ。」「はい、喜んで!。ええ!柔らかい。」「特注のゼリー胸だ。本物そっくりの感触だろう。」「触ったことが無いので分かりませんがこんな感じなのですね。」モアーズはカップリングした彼女の胸を想像してしまった。慎太はモアーズの車のトランクに入って大学の寮まで送ってもらった。(危険なのでトランクに入るのはやめましょう。)
 一方こちらはマヤ様の屋敷。氷室空子と日陰ひなたが定例会議の為来ている。「空子、大学生向けのカップリングパーティーの収益はどうなっている?。」「はい!。マヤ様の信者の女性を潜り込ませてニセのカップリングを成立させております。カップル成立の確率が高い事をアピールし、パーティー参加者は急増し収益は倍増しております。さらにニセカップルの男をマヤ様の信者にすべく徐々に洗脳を開始しております。」「若者の恋愛離れが騒がれているが所詮若い男など女性をスケベな目でしか見ていない。そこに付け込むスキがある。このままニセカップリングパーティーを開催しまくって収益を上げてついでに信者を増やすのだ!。」「ははーっ。」空子はマヤに敬礼した。マヤ様は直近のニセカップリングパーティーのカップリングリストを見た。「おや、この学生はにっくきあの某国立大学の学生ね。思い出すだけで腹が立つわ!私より人形が美しいなどとYOUTUBEで言われた屈辱!忘れたわけではないわよ!。この岡田屋とかいう学生を真っ先に洗脳して私の信者にしておしまい!。」どうやら慎太に等身大ドールを借りた岡田屋自称モアーズはマヤ様のニセカップリングパーティーに参加してニセカップリング成立とも知らずに浮かれているらしい。
翌日。モアーズは大学をさぼってドールを助手席に乗せて早速デートの訓練を開始した。「めざめーたーばーかーりのー♪あしーおとー♪。人形とはいえモデルみたいな美女とドライブは嬉しいなー。」モアーズは車の屋根を開けて走っている。セミロングの美しい栗色の髪の毛が風に揺らめく。モアーズが嬉しそうに助手席の人形マキを見つめる。すると、髪の毛が無い!。「あ!ヴィックが風に飛ばされた!大変ダー。」モアーズはあわててUターンしてヴィックを探した。幸い後ろのリアウイングに引っかかっており事なきを得た。オープンカーに等身大ドールを乗せるのはやめましょう。モアーズは助手席のドールの太ももが気になりついチラチラ見てしまう。「いかん、本番のデートでこんなことをしたら嫌われてしまうじゃないか。」欲望と戦いつつも人間の女性が隣にいる想定でしぐさや気遣いを訓練することにした。「ここから峠道に入るから気分が悪くなったら言ってね。」なるべく遠心力がかからないように女性が怖がらないように気を付けながら坂道を登っていく。目的地の湖に到着して景色のいい駐車場に車を停めた。「ここは榛名湖と言って榛名山の中腹にある湖だよ。冬にはほぼ全面氷が張るほど寒くなるんだ。今はちょうど冬だから氷しか見えないね。今温かい飲み物買ってくるね。」モアーズは車を降りて自販機に向かった。「女の子だから温かいはちみつレモンでいいかな?。」助手席のドリンクホルダーにはちみつレモンを置いてモアーズはホットコーヒーを飲みながら凍った湖を見つめた。「デートでどんな会話をすればいいのかな?。将来の夢、今夢中になっている事、好きな芸能人趣味の話、とかでいいのかな?。」といいつつドールのふくよかな胸の谷間をつい見てしまう。「いかんいかんいかん。こういう視線はいかん。気を付けねば。運転の気遣いとエロイ視線の禁止、それにトイレや飲み物のタイミングに気を付けてと。後は食事の場所、おしゃれなレストランを探す事かな?。」モアーズは湖の周辺のレストランをチェックすることにした。車をレストランの駐車場に止めて雰囲気のいいレストランに一人で入った。すると案の定若いカップルが食事をしていた。「ふんふんなるほど。デザートに甘いものをふるまっているな。会話は聞こえないが言葉はソフトな感じだな。」モアーズは研究熱心な正確らしく他のカップルの振る舞いや食事の内容言葉使いを見て研究している。食事を終えたモアーズは日が沈みかけた湖畔をドライブして帰りは夜景の綺麗なスポットを巡った。「カップルがデートの帰りに夜景を一緒に見るのは定番かな?。いいムードになればそのままキスしてホテルとか?、いかんいかんいかん初めてのデートでそんなことを考えてはいかん。」モアーズは色欲と戦いながら必死でドライブデートをシュミレートしている。「はあー。やっぱりドールかりりてシュミレートして良かったー。我ながらダメな事柄が次々と出て来た。すべてメモして本番は気を付けないとな。」モアーズは夜景スポットで独り言を言っている。モアーズが駐車している夜景スポットの駐車場はカップルだらけになっていた。あちこちで若いカップルが抱き合ってキスしたりそのままここでは言えない事をしているようだ。「参ったな。ここはそういう場所だったのか。でもドールとはいえ俺も美女と一緒だ。」モアーズはつい等身大ドールのマキちゃんに雰囲気に流されて抱き着いて唇にキスしてしまった。「しまったー。雰囲気に流されて借り物のドールちゃんにキスしてしまった。」モアーズはあわてて消毒用濡れティッシュでドールの唇を拭いた。「これってファーストキスになるのかな?それともノーカンかな?。」雰囲気に流されたとはいえモアーズはドールのマキちゃんに抱き着いてキスしたことを後悔した。
 一方こちらはドスケベな鷹章の家。「いひひひひ。マヤ様の無修正生写真が見られるぜ。」鷹章は慎太に渡されたURLを開く。「おおお!芸能人のいけない写真特集だってよ。」脱いだ芸能人の映画や雑誌、写真集の写真を掲載したエロサイトである。飯能マヤ様ってまだ脱いでいないよな。マヤ様のページを検索するとマヤ様の水着写真やモデル時代の写真が出て来た。「パスワード入力はここか!。」鷹章は早速渡されたパスワードを入力した。すると・・・あなたは18歳以上ですか?。という項目が出て来た。「俺が18歳だったのは平成前半だ!。くだらない事を聞くなバカタレ。」といいながら18歳以上はいをクリックした。すると、裏サイトのかなりあぶない無修正写真が出て来た。「げぼおー。なんだこりゃ。男じゃないか!何 男性ストリッパー マヤオ!。ちきしょう!騙された。ってマヤオ?たったしかにマヤ様だ。」
ACT3 END

2022年2月某日。岡田屋(あだ名はモアーズ)はカップリングパーティーで知り合った彼女とのデートが明日に迫った。彼女に連絡してもなかなか絡が取れず、一か月かけてようやく初デートの日程を先日決めたのだ。「ふう、やっと初デートの日が決まったな。ドールちゃんを借りてデートシュミレーションを重ねて来たからきっと本番でも大丈夫だろう。」モアーズは慎太経由で鷹章から等身大ドールのマキちゃんを一か月間も借りてデートの練習を重ねていた。最初はあくまでデートの練習代だったが、いつしかマキちゃんにも情が移るようになっていた。等身大ドールのマキちゃんに白いドレスを着せて奥の部屋のソファーに座らせて大切に扱っている。「マキちゃんありがとう。やっと明日彼女とのデートが決まったよ。マキちゃんのおかげだよ。」モアーズはドールのマキちゃんに抱き着いてほおにキスした。モアーズは明日が楽しみ過ぎてなかなか眠れなかった。
 翌日、待ち合わせ場所は彼女と知り合った大学のキャンパスのバス停である。BMWZ4初代で待ち合わせ場所にモアーズは現れた。しかし待ち合わせ時間になっても彼女は来ない。「まあ遅刻はありがちな事だよな。」モアーズは30分待ち合わせ場所で待っていたが彼女は来ない。「あれ?。日にちと時間間違えたかな?。」モアーズはスマホのラインを確認したが合っている。「おかしいな?。連絡もない。」さらに30分待っても彼女は現れなかった。「こりゃ完全に忘れられているな。」さらに30分待ったが来ない。モアーズは落胆してその日は諦めて帰ることにした。その後彼女からの連絡もなくラインの返信も無い。モアーズはすっかり落胆し以後は一切彼女に連絡しなくなった。「すっかり忘れ去られているな。仕方ない。諦めるか。」モアーズはカップリングパーティーで知り合った彼女を諦めることにした。それゆえ借りた等身大ドールのマキちゃんを鷹章の家に返しに行くことにした。「金田さん。ありがとうございました。おかげでデートのシュミレーションが出来ました。」モアーズはお礼を言ってドールを返却してお礼のギフトセットを渡した。「デートはうまくいったの?。」「それがデートの約束をするのに1か月以上かかった上にドタキャンされました。以後は連絡も取れなくなりました。」「ありゃ。それは残念だったね。女なんてほかにいくらでもいる。気にするな。」他人事だと思って鷹章は雑な慰めの言葉を送った。苦笑いしながらモアーズは鷹章の家を後にした。
 一方こちらはモアーズと1か月以上前にカップリングした短大生。名前は三好真由美という。某喫茶店で彼氏と話をしている。「バイトでさーカップリングパーティーの桜やっているんだけどバイト料しょぼいのよね。歩合制でさー一回のカップリングで〇〇〇〇円なんだけど頻繁にやると顔バレするから週2回が限度でさー。」「マヤ様主催のカップリングパーティーだろ。すげー儲かっているらしいぜ。でもカップリングしても相手がすぐ消える事も有名だから評判落ちてきているよな。」「でも私マヤ様の信者になって良かったわ。メイク術も学んで綺麗になれたしこのバイトも楽だしパーティーで食べ放題だしいいバイトだったし、でもこのバイトだんだん稼げなくなってきたからマヤ様には悪いけどほかのバイト探そっと。」どうやらカップリングパーティーの桜だったようだ。マヤ様は主催しているカップリングパーティーの成立率を高めるだけのニセカップリングスタッフのバイトを雇っているようである。
 一方その夜、モアーズはとあるショットバーにいた。失恋のショックから立ち直れず酒の力を借りてうさ晴らしするつもりのようだ。「マスターもう一杯。」「お客さん飲み過ぎですよ。もう一杯だけですよ。」やけ酒のようである。「畜生!やっと彼女が出来たと喜んでいたのに1か月も音信不通でやっとデートの約束をしたのにドタキャンしやがって。」「そりゃ大変でしたね。まあ次頑張ってください。」マスターは決まり文句のような慰めの言葉を送る。「もう女は面倒だから要らないかな。AVやアニメ、ゲームやドールもあるし。あんなわがままな生き物よりこっちの方が楽しいし。」モアーズは相当ショックだったようだ。ふとモアーズはスマホでドールとのドライブデートで撮影した写真をマスターに見せた。「え?これがお客さんの元カノですか?綺麗な方ですね。さぞかし残念でしょうが次頑張ってくださいね。」「マスターはこの子が人間に見えるのですか?。」「え?AI画像ですか?。」「これは等身大ドールですよ。」「良くできていますね。分かりませんでしたよ。」20代後半ぐらいのショットバーのマスターはすっかり騙されたようだ。「そうか。普通の人には人間にしか見えないのか!。性行為も出来るみたいだし裏切らないしずっとそばにいてくれるし!考えようによっては最高の彼女だな。ようし!。マスターありがとう。問題は解決だ。」モアーズは急に元気になった。マスターはお客さんが元気になったのでまあいいかという表情である。「騙されたふりをして正解だったな。お客さん等身大ドールに目覚めたのかな。」実はこのショットバーのマスターの正体はあのドーラパンクだった。プロダクションを辞めてショットバーを経営している。ドーラパンクはモアーズのスマホの写真を見てすぐにドールと見抜いたが気が付かないふりをしたのだ。早速モアーズは帰りの電車の中で早速鷹章にメールした。「先日はお世話になりました。あれからいろいろ考えまして、人間の女性と恋をするのはやめました。これからは等身大ドールと恋します。先日お借りしたドールもマキちゃんを購入したいので見積もりをお願いします。これでよしっと。!」モアーズはこれまで一か月間デートのシュミレーションに使ったドールのマキちゃんと過ごした日々を思い出し胸が熱くなっていた。
 一方、食事中にそのメールを受け取った鷹章は意外なモアーズの反応に困惑した。「甥の慎太に騙されて無償でドールを又貸し出したがそれが原因で若者が又沼にはまったようだ。しかしこれでいいのだろうか?。若いんだから若い人間の女と恋をすべきでは?。」鷹章は考え直すように返信の文章を送った。しかし・・・「ご返信ありがとうございます。ですが私は1か月間一緒に過ごしたマキちゃんとの思い出に救われました。裏切る人間の女性はもう嫌です。あの日あの時同じ空間を過ごしたあのマキちゃんで無ければだめなのです。お金はそちらの希望価格で買いますので譲ってください。」モアーズの決意は固いようである。若くて心がけがれていないゆえに傷ついたらなかなか立ち直れなさそうなのでここで断ったら自殺もしかねないと思った鷹章はしぶしぶ承諾した。「未来ある若者がドールの沼にはまってしまった。少子化に悩む日本国政府ごめんなさい。<m(__)m>」訳の分からない罪悪感に襲われた気分の鷹章だった。
翌日日曜日にモアーズは早速ドールのマキちゃんをお迎えに鷹章の家にやってきた。鷹章は白いサマードレスをマキちゃんに着せてソファーに座らせていた。黒いBMWZ4でモアーズが約束の時間10分前に現れた。「早かったね。準備は出来ているよ。衣装はサービスだ。」「ありがとうございます。」モアーズはお姫様だっこでマキちゃんを助手席に乗せた。「今日は天気がいいね。このままドライブデートするといい。荒船湖は休日でも人が来ないからおすすめだよ。折り畳み椅子もサービスしよう。あとこの”撮影中”と書かれた看板も野外でデートするのに役立つよ。」鷹章は額に入った撮影中の看板と折り畳み椅子もおまけした。「ありがとうございます。帰りに寄ってみます。」支払いを済ませたモアーズは喜び勇んで荒船湖に向かう事にした。「色移りと型付きには注意してねー。」鷹章は叫んだが聞こえなかったらいけないので同じ内容のメールも送った。ヴィックが飛ばないように屋根を閉じてドライブするモアーズ。途中すれ違う若いカップルにもなぜかドヤ顔である。「ドールとはいえリアルで美人だから誰もドールとは気が付かないな。いい気分だ。最高。」しばらく走ると有料道路に差し掛かった。老人がゲートの番をしており現金支払いのようだ。支払いの為モアーズは車を停めて現金を渡した。「ありがとうございます。おやデートですか?。お気をつけて。」ドールだと全く気が付かなかった。モアーズはドヤ顔になった。「これならどこに行ってもバレないな。ほっとした。」荒船湖は下仁田に近いダム湖でなぜか周りには店もレストランも無い殺風景な湖はである。それゆえドールの野外撮影にはもってこいの穴場である。モアーズは駐車場に車を停めてマキちゃんと一緒に湖を見つめた。「マキちゃんはダムを見るのは初めてだよね。スケールがでかい風景でしょ。」簡単な観光ガイドをしながら湖を一周した。駐車場に近い展望スポットに折り畳み椅子を広げてマキちゃんを座らせて怪しまれないように”撮影中”の看板を立ててマキちゃんと向かい合って景色を楽しんでいる。「恋愛には敗北したけど人生を楽しむ事では負けんのよ!。」強がりを言うモアーズ。どんなに努力をしても報われず空回りするぐらいならドールのマキちゃんと幸せになってやるとモアーズは誓った。マキちゃんとのドライブデートの写真をツイッターにUPしながらドライブを続けた。帰りに噂の榛名夜景スポットにも寄った。案の定噂通り多くの若いカップルが車で来ている。前回と違ってドールのマキちゃんが本命である。「みんな凄い努力をしているんだろうな。尊敬する。私は私の幸せの形を見つけたのでそれを大切にする。皆さん幸あれ。」モアーズは本当に幸せそうである。
 一方、ニセのカップリングでモアーズを裏切った三好真由美はマヤ様に呼び出されていた。「カップリングパーティーの桜ご苦労様。あなたにはもうひと働きしてもらうわよ。」「えーもうあの仕事にかかわりたくないんですけど。」「散々甘い汁を吸っておいて何言ってるの。渋谷で立ちんぼしていたお前を助けてやったのは誰かしら?。メイクとダイエットの支援でイケメンと付き合えるようになったのは誰のおかげかしらね。彼氏にあなたの過去をばらしてやってもいいのよ。さらに裁判にかけて全裸にして除名しようかしら?。」三好真由美の表情がみるみる青ざめた。「ママママまマヤ様!嘘です冗談です。従います。」マヤ様はにやりと笑った。「お前がカップリングパーティーの桜でふった男に岡田屋というやつがいるだろう!。あいつはお前にフラれた腹いせに事もあろうに等身大ドールにはまりやがった!。見ろこのツイッター!。すぐに凍結してやったがこいつは私が侮辱されたきっかけになった大学の学生だ!。こいつとドールの仲を引き裂いてこい!。」「えーめんどくさーい。」三好真由美はあからさまに嫌そうな顔をした。「お前の体をエサにしてドールを破棄させて又音信不通にでもなってしまえ。いう事を聞かなかったら・・わかっているわよねえ。」おぞましいほどに恐ろしい笑顔。三好真由美は恐怖に震えた。「分かりました。やります。!えーとあいつの連絡先は。良かったー消したと思っていたけどめんどくさがって残していたわ。」三好真由美は2か月ぶりにモアーズにラインを送ることにした。
 一方こちらは鷹章の甥の慎太。モアーズからドールとの幸せな日々の写真やメールが毎日のように来るのでうざいと思っている。「人間の女性にフラれて等身大ドールの沼にその若さではまるとは。嘆かわしい。😿」慎太は叔父が等身大ドールの沼にはまっているだけで慎太自身ははまっていない。ただ慎太に頼めば等身大ドールを借りられるという噂が独り歩きしているだけである。「確かに嘆かわしいけど日本の若い女性のハイパーガミーも大きな社会問題だよな。これも解決すべき問題だと思うけど今すぐ解決できるわけも無し。老人の介護保険の金額も凄い金額だし、年金も凄い額だよね。あーあ80歳の老人がうらやましい。」慎太は考えすぎて変な方向に心配事が移ってしまっている。「ちなみに僕はバイセクシャルで女性6割男性4割なのでどちらもOKだから問題は無い。BLも大好き」いやいやいやいや!!。問題大ありだろう!。
ACT4 END

2022年3月・・・。鷹章の甥慎太にドールを借り、カップリングした彼女にフラれた岡田屋(あだ名はモアーズ)はデートのシュミレーションで1か月間一緒に過ごした等身大ドールのマキちゃんを鷹章から購入し今は20歳の若さでドールとの恋愛を楽しみ、幸せの絶頂を迎えている。次第に暖かくなりドライブを趣味としているモアーズにとってこれからがデートの本格的シーズンである。モアーズの父は外国車の中古車ディーラーを経営しており羽振りがいいので息子のモアーズも格安で父の店から購入した初代BMWZ4を乗り回している。今日も人目を憚らずマキちゃんとドライブをしている。今日は車に乗った状態で映画が見られるドライブシアターでデートだ。「彼女が出来たら一緒に映画を見たいと思っていた夢がかなったな。しかも恋愛映画だ。」周りはカップルだらけであるがドールを彼女にしているのはモアーズぐらいのものであろう。モアーズのツイッターは一度は凍結されたが再びツイッターを再開し、デートの様子を写真付きでUPしている。映画を見てクライマックスシーンで恋人同士が口づけをかわすシーンでモアーズもつられてドールのマキちゃんとディープキスをした。「幸せだなー。こんなに綺麗な女性とキスできるなんて。」モアーズはすっかり愛し合う恋人気分で盛り上がっている。
そんなモアーズのツイッター記事を慎太が心配そうに見ていた。「ふう、勉強の息抜きにとモアーズの記事を見ていたがちょっと心配だな。等身大ドールはあくまでアダルトグッズだからな。僕が愛してやまない1/6や1/3ドールとは違う。性行為が出来るという事実がモラルの壁となるというのに。」慎太は失恋の心の傷から立ち直り今現在幸せいっぱいのモアーズの様子を見て今までは見て見ぬふりをしてきた。しかし人目を気にせず堂々と毎日のように等身大ドールを連れ出すモアーズが心配になったのだ。「このままではトラブルになるかもしれない、さりげなくDMで警告しておくかな?。」慎太はツイッターのDMでモアーズに等身大ドールがアダルト商品であり、昭和でかつてブームとなった空気入りのダッチワイフと用途が同じ商品である事実とアダルト商品を堂々と女性や子供がいる場所に持っていくことで社会的なモラルに反する恐れがある事をやさしくオブラートに包んだ言葉で伝えた。「これで分かってくれるかな?。」するとものすごい長文がすぐに戻ってきた。「なになに、長い文章だな。要約すると別に裸にしているわけじゃないし人に迷惑をかけていない。私たちの邪魔しないでね。って事か。まあ確かに違法じゃないけど社会道徳上問題あるかもしれないよ。例えば遊園地で家族連れが楽しく遊んでいるのに等身大ドールといちゃつくおっさんがいたら精神異常者に見えるし折角楽しい気分でいる家族が嫌な思いをするよね。下手すれば子供のトラウマになるよっと。」慎太は具体例を添えて返信したがそれっきり連絡が途絶えた。「ありゃ、怒らせちゃったかな?。でも警告しないと彼に災いがふりかかるだろうからね。」慎太は心配しつつも今すぐどうしようもないと悟り再び勉強に戻った。
 モアーズがドールといちゃついている事実を快く思わないのは慎太だけではなかった。あのマヤ様もツイッターでモアーズが再びツイッターを再開し堂々とドールを外に持ち出している事実を目の当たりにして怒り心頭である。「おい!空子!ちょっと来い!。」「マヤ様御用ですか?。」「見ろ!このバカ!ドールを外に持ち出して人前でちゅっちゅしているぞ!。汚らわしい!。」「ああ下級信者の三好真由美がカップリングパーティーで桜を演じて騙されたバカな大学生ですね。等身大ドールの沼にはまったみたいですね。」「三好のバカがデートの待ち合わせ場所に行っておれば今頃は私の信者になって等身大ドール撲滅の手先にしてやったものを!。あのバカ女が面倒くさがったせいでこんなことになったのだ。」「ウチの信者も質が落ちてきましたね。でもバカとはさみは使いようです。お任せください。」空子はなにやら秘策がありそうな話ぶりである。
 一方モアーズは3月だというのにドールと一緒にソロキャンプを楽しんでいた。タープを張って折り畳み椅子に座らせたドールのマキちゃんを折り畳みテーブルをはさんで向かい合って座っている。マキちゃん用の料理やコーヒーもテーブルに置いてある。「今日は付き合ってくれてありがとうね。いい天気で良かったよ。」3月とはいえ晴天の温かい日曜日なので小さな子供を連れた若い夫婦も何組か来ている。モアーズは周りの目を気にしないらしくお構いなしに人形に話しかけたり隣に座って腕をドールの首に回して抱き寄せたり料理を食べさせる真似をしている。その異常な様子をキャンプに来ている若い夫婦は見てしまった。「あの人さっきから人形に話しかけたり抱き着いたり何やっているのかしら?。」「ねえパパ、あの人何やっているの?。」「子供は見ちゃだめだよ。きっと精神を病んでいるのさ。近寄ったらだめだよ。」「はーい。」若い夫婦は楽しいはずのファミリーキャンプに不審人物が現れたと思い込んだ。そのため楽しいはずのキャンプが不審者に警戒する事となりさらに襲われるのではないかという恐怖を感じるはめになってしまった。「パパ、あの女の人人形だよね。怖いなあ。」幼い子供にとって等身大の人形は怖いものである。ましてや見た事も無いほどに精巧に出来ているゆえにさらなる恐怖を与えるようだ。
しかし岡田屋はそんな他人のことなどお構いなしにドールとのデートを楽しんでいる。「ふう。キャンプなら一緒に食事やお泊りも可能だな。デートには最適だ。ん??」モアーズの携帯に見慣れぬアドレスからメールが入った。「なになになに?この前は折角誘ってくれたのに行かれなくてごめんなさい。又会えないかな???誰だ??」モアーズは数か月前にカップリングした彼女にドタキャンされたことをすっかり忘れていた。メールはその彼女からだったがすっかり忘れている。「どうせスパムだろ。ブロックと!。」モアーズはそのメールをブロックした。翌日、キャンプ場のチェックアウトを済ませてモアーズが出て行こうとするとキャンプ場の管理人に呼び止められた。「ああお客さん、ちょっといいですか?。」「はい?。」不思議そうな顔で車を降りて管理人のそばまで行く。「当キャンプ場では他のお客さんが不快に思う行為は禁止されています。」「はあ?。」モアーズは全く身に覚えがない様子だ。「困るんですよねー女性や子供がいるキャンプ場にアダルト商品を持ち込まれちゃ。次回から気を付けてくださいね。」モアーズはまだ訳が分からない様子だ。「アダルト商品なんて持ち込んでいないよ。」管理人は半分呆れている。「これ、ダッチワイフだよね。ほかのお客さんから苦情が来たんですよ。ほかのお客さんの迷惑になるし営業妨害になるから次回から持ち込まないでくださいね。」管理人は不機嫌な様子を隠そうともせずそう言い放って管理事務所に戻った。「なんてキャンプ場だ!。もう二度と来ないからな!!。」怒ったモアーズはエンジンを空ぶかししてキャンプ場を去った。「マキちゃんとの思い出作りが台無しじゃないか!。」怒りが収まらないモアーズ。するとまたモアーズのスマホのラインに別のアドレスからメールが入った。「以前カップリングした三好真由美です。覚えていますか。又会いたいです。」今度はキャミソール姿の自撮り写真を添付してきた。「あ!思い出した。デートをドタキャンしたクソ女じゃないか!無視無視!。」モアーズは即メールを削除した。自宅に戻ったモアーズは早速今日のキャンプ写真をツイッターにUPした。「私たちの幸せいっぱいの時間をみんなにも見てもらおう。」自撮りした顔にモザイクをかけた写真をツイッターにUPしていいねとコメントを期待していた。すると・・・「私も等身大ドールオーナーです。幸せそうなお写真ですね。ですがこの等身大ドールはアダルト商品に相当しますので人前に出すのはモラルに反します。等身大ドールオーナー全体のイメージが悪くなるのでやめてください。」というコメントが書き込まれた。さらに似たようなコメントが相次いで記載された。「はあ?何言ってんの。別に違法じゃないだろっと。」「違法じゃなくても一般人を不快にさせる恐れがありますのでやめてください。」「はあ?。俺の勝手だろ!。ふざけるな。」モアーズはやっとドールの恋人を迎えて幸せになれた。人間の恋人のようにデートをして楽しい思い出を沢山作りたいと思っていた。しかしそれを快く思わない人々が存在するようでその事に困惑し怒りを感じ始めていた。ちなみにコメントを書き込んでいるのはマヤ様の信者達である。「ふざけたコメントは無視無視!。恋は障害が多いほど燃え上がるのだ!。」モアーズは半分意地になっている。
翌日、モアーズは車の助手席にドールを乗せたまま大学の講義を受けに行った。その講義で慎太に会った。「久しぶりだね。元気そうでよかった。」「おお!慎太!久しぶり。お陰様で今はとても幸せだよ。もう人間の女には戻れないな。」モアーズは少し照れながら笑った。「余計なことかもしれないけどあまり目立たないほうがいいよ。」慎太は自分がドールを貸した事が原因でモアーズが人目も気にせず堂々と等身大ドールを持ち出している事が気がかりだった。それゆえ何度も警告しているにもかかわらず全く聞く耳を持たないモアーズの身を本気で心配している。「君がカップリングパーティーで知り合った女にひどい目にあわされたことは同情するよ。でもだからといってアダルト商品を持ち出して人目にさらすのは良くないよ。君自身の評判が落ちるだけだよ。」そう言って慎太はある動画をスマホで見せた。その内容は禿げた小太りの中年男性が人前で等身大ドールを抱きしめてへらへら笑っている様子を誰かが隠し撮りしてYOUTUBEにUPしたものである。「なんだこりゃ。吐気がする!いや!吐き気を通り越して殺意が湧いてきた。」「君がこの前キャンプ場でしたことに近いんじゃない。」慎太は冷たく言い放った。モアーズの表情が凍り付いた。「これほどおぞましくないとは思うが・・・傍から見ればこのような姿に私も見えるのかもしれない。」「この動画のおじさんに抱き着かれてさらし者になっている何の罪もないドールちゃんは被害者だね。あ!講義始まるからまたね。」慎太は教科書を開いて前を向いた。モアーズはさっき慎太に見せられた動画があまりにもショックで講義どころではなくなった。「私は周りが全く見えていなかった。もし私がキャンプ場でやったことを誰かが盗撮してネットにUPしていたらと思うとゾッとする。ドールのマキちゃんだってさらし者になってしまう。絶対やめねば!。」モアーズはやっと目が覚めたようである。モアーズは講義を終えて大学の駐車場に向かった。先ほどの動画の内容が頭から離れないらしく途中で女性の声に呼ばれているのに気が付かない様子だ。その女性はモアーズの右肩に手をかけた。「ちょっと!聞こえないの!。やっと見つけた!!。」三好真由美である。「え?ああ誰だっけ?。」「何言ってんの!カップリングパーティーでカップルになったじゃないの!。」「え?ああドタキャンした女か?。」「だから何度もメールであやまったでしょ。!」「え?読んでない。」「ひどーい。悪いことしたと思ってわざわざ謝りに来たのに。」三好真由美はマヤ様の命令でモアーズと等身大ドールの仲を引き裂くために直接大学までやってきたのである。「で?なんか用?。」「聞いたわよ。等身大ドールに夢中なんだって?それってきもくない。」「そうだな。今さっききもい事に気が付いた。」モアーズは少し落ち込みながら言った。「でしょー。本物の女に作り物がかなうわけないじゃん。私と付き合ってそんな人形廃棄しなよ!。」沈黙が続く。「人前にさらしてはマキちゃんの為にも自分自身の為にもならない。昼間は家から出さないで夜に連れ出すかな。太陽の下では生きられない”鬼”みたいだがそれしかないな。元々人ならざる者との恋なんだし。」モアーズは悟った。「よし、それでいこう!。やっぱりモラルは大切だし一般人に不快な思いはさせてはいけない。」モアーズはぶつぶつ言いながら一人で駐車場に向かった。「ちょっとー。岡田屋君!。私と付き合おうよ!。なんなら今夜ラブホもOKだよ!。」モアーズは全く聞こえないらしくそのままドールのマキちゃんが待つ車に戻りそのまま走り去った。「畜生!畜生!何乗っけてんだてめー。きめーんだよバカヤロー。」真由美は走り去る車に罵声を浴びせていた。
 その夜、マヤ様の教育施設で裁判が開かれた。空子は真由美を全裸にして施設内の私設裁判所の法廷に連行した。「放せ!触るんじゃないよバカやろー。」往生際が悪い三好真由美は散々暴れながら法廷に連行された。
氷室空子が罪状を読み上げる。「この下級信者”三好真由美”はカップリングパーティーの桜を演じきれなかった。デートに応じて騙してここに連れてきて岡田屋を信者にすれば何の問題も起こらなかったものを!。」「だって、面倒だったんだもん。」空子は三好真由美のいい加減で面倒くさがりな正確に嫌気がさしていた。「有罪!。除名!以上。」「ちょっとーそりゃないでしょ。」「お前の顔だけのバカ彼氏にお前の過去をばらしてやったら速攻で分かれるって言ってたわよ。お前にふさわしいゲスな男だったのに残念だったな。」氷室空子は冷淡な笑みを浮かべた。「ちきしょう!覚えていろよ。」三好真由美は全裸のまま外に連行された。

ACT5 END

次回予告 夏ですね!夏と言えば水着!ビキニ!。次回タイトル

ドール達の夏!!!



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