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塗料メーカーで働く 第四十一話 TKM会発足

 8月1日(木)午前9時に 新横浜駅から車で約20分くらいの所にあるケイトウ電機社の放電灯事業部で 菊川課長の企画した3社による共同研究の第1回目の会合が開かれた。 

 会合は 菊川課長の申し出により 3社の社名の頭文字をとって TKM会と名付けられた。 
 
 会合には ケイトウ電機社から放電灯事業部の内藤次長 森永氏 久保氏 鎌田氏が出席し 松頭産業社から菊川課長が参加し 東西ペイント社から米村部長 川上課長 川緑が加わった。

 この日の会議は 関係者の顔合わせが主目的で 具体的な議題の提示はなかったが 参加者等には お互いに相手方と組むことでメリットがあるかどうかを見極めたい思惑が感じられた。

 3社には それぞれが目指している方向に共通点があった。                   

 それは 電線メーカー各社の光ファイバー増産計画に貢献することで それぞれの商品の売り上げ向上やシェア拡大を目指すことだった。

 この時点で ケイトウ電機社は 多くの電線メーカーに光ファイバー製造用のUV照射装置を供給していて 更に市場のシェア拡大のためにエネルギー効率のよいUV光源の開発を模索していた。

 一方 東西ペイント社は いくつかの電線メーカーにUVカラーインクを供給していて 更に高速硬化タイプのインクを開発を進めていた。 

 また 松頭産業社は それぞれの会社の代理店業務を通して 電線メーカーでの光ファイバーの開発状況に精通していた。

 それぞれ会社の思惑を具体化するには それぞれの会社がどのような技術力を有していて その技術が それぞれの会社の製品のパフォーマンスの向上にどのように役立てることが出来るのかを知る必要があった。

 内藤次長は 「私達は 電線メーカーさんと共同で よりよいUVランプの開発を進めていますが UV樹脂の知見が無くて 開発の方向が見えていません。」と言った。

 川緑は 「私達は 御社の現行のUVランプに合わせて 硬化性の良いUVインクを開発していますが 光ファイバーの生産性を上げるためには ランプとインクのよりよい組み合わせがあるはずです。」と言った。

 菊川課長は 「共同研究で UVランプとUVインクのマッチングを達成しましょう。 うちも協力させて頂きます。」と言った。

 会合の最後に 今後の共同研究の具体的な方針についての議論があり 次回の会合までに3社それぞれの取り組み内容をまとめて提案することになった。

 今後 TKM会がどうなるかは ケイトウ電機社放電灯事業部の責任者と松頭産業社の責任者と東西ペイント社新規事業部の責任者の判断に委ねられることになった。

 今日の会議での関係者等の発言を聞いた川緑は TKM会の今後に 前向きな推進力を感じた。

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