資本主義に当てはまる取引とは?私たちの生活への影響

こんにちは。
前回は「マルクスの資本論」について解説しました。
資本主義制度の基本的な仕組みと、それによって生まれた副作用にも触れました。

ただ、副作用について知ると「資本主義ってなんだか悪いことをやっているような気がする」と感じる方もいるかもしれません。
ですから、今回は続編として資本主義をもう少し正確に理解していただけるよう、別の角度からお伝えしたいと思います。


私たちが日常で行う取引の大部分は「交換経済」

前回書いた資本主義の仕組みについて、簡単におさらいします。
資本主義というのは、取引を「等価交換」としてではなく、100円を110円に増やし、さらに150円にするような「投資と回収を通じてお金を増やす」ことを目的に置いた経済の仕組みです。
前回の記事では、皆が一生懸命お金を増やそうとすればするほど、貧富の差が拡大していくという資本主義の副作用について解説しました。

これを聞くと「私たちが生活する上で行う、お金を使った取引も資本主義なの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
結論から言うと、私たちが日頃何か物を買ったりサービスを受けたりする取引は、基本的にすべて「交換経済・等価交換」であって、資本主義による取引ではありません。
スーパーでニンジンを買って150円のお金を払うのは、物々交換・等価交換なのです。

労働や経費への対価を支払うのは資本主義ではない

ここでまた新たな疑問が湧いてきます。
「スーパーはニンジンを100円で仕入れて150円で売っているのだから、これは資本主義ではないか?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、それは違います。

ニンジン自体の仕入れ価格は100円ですが、お店で売るまでには多くの人の手を借りますよね。
まず産地から売り場まで輸送し、そしてお店を借りて光熱費を払います。そしてお店には従業員さんもいます。
当然、こうした労働や経費に対しては、それに見合った対価を支払わなければなりません。
つまり、ニンジン100円に対して輸送コストや電気代、従業員の給与などを加算すると150円という金額になるのです。
ですから、100円で仕入れた品物を150円で売ったとしても、これは資本主義が目的にしている「お金を増やす」ことにはならないのです。

品物が流通するまでの間にきちんと労働が存在し、それも含めた全体に対して150円の対価を支払う。これは等価交換です。
基本的に世の中で行われている経済活動の99%は、資本主義ではなく単純な等価交換ではないかと思います。

資本主義的な活動は主に「金融・投資」の分野で行われる

では、資本主義というものがどのような経済活動を指すかといえば、金融や投資等がそれに当てはまります。
資本主義の仕組みがカバーする経済の領域は非常に狭く、それでいて金額がとても大きいのが特徴です。

例えば、自分が住む予定のない不動産なのに価値が上がることを見越して購入し、値段が上がったら売却する。このように、対価となる労働などは提供せずに、安い時に買って高く売るのが投資です。
これは株式も同じで、100万円で株を買って(=投資)、150万円になった時に売る(=回収)というのも資本主義的な取引です。
値段の増加部分に対して、労働や物、サービス等の裏付けがないことが交換取引と違うポイントだと言えます。

投資の分野は、経済活動全体のごく一部の領域しか占めていないにもかかわらず、そこで動く金額が膨大に膨れ上がり、実体経済に影響を与える始めたので問題視されるようになりました。日本のバブル経済がその例です。
経済成長の実態がないのに不動産や株の価格だけが吊り上がり、砂上の楼閣のように崩れおち、日本経済は麻痺してしまった。これがバブルの崩壊です。
新興国では、先進国の投資マネーが流入し、不動産の値段をどんどん吊り上げました。しかし地元民の給料の増加が追い付かず、家賃を払えなくなってしまったという話もあります。また、金融の世界では先物取引という取引が行われており、例えば世の中には小麦が1億トンしか存在しないのに、先物取引市場では10億トンや100億トンの小麦が売買されています。
このように、現実の経済からかけ離れた虚構の経済というものが膨れ上がり、モンスターのように成長してしまっているのです。

こういった実体のあるものを基礎におかない経済は、何かのきっかけで必ず崩壊します。だからリーマンショックが起こったんです。
金融や投資の世界で大きなお金を稼いで生活をしている方は、「何かの瞬間にすべて崩壊して消えてしまうリスクがある」ということをしっかり理解しておく必要があります。

売り手も買い手もモラルを持ち、適正な取引を行うのが大事

「私たちは資本主義社会に住んでいる」と言われますが、それはあくまで投資により資産を増やしてもいい社会に住んでいるというだけの話であって、私を含めた一般市民が日常行う取引の大部分は交換取引です。
つまり、きちんと労働や物・サービスによる裏付けがあって行っている取引なので、資本主義ではありません。
資本主義的な取引には、ほとんどの人が関わっていないことを認識したうえで、どうか安心して日頃の取引をしてくださいね。

交換取引の基礎は「等価」での交換です。自分が受け取るものと自分が支払う対価は、本来釣り合いが取れている必要があります。
販売する側は相手の弱みに付け込んで不必要に値段を釣り上げたり、お金を支払う側も不当に値段を下げることは、等価交換を否定するため避けなくてはなりません。
物やサービスを購入するときは、自分が適正な対価を支払っているかどうか、きちんと確認しながら取引をするとよいですね。
そうして交換経済を重ねていくことで、「足りないものを交換によって補い合い、みんなが豊かになる社会」を目指すことが重要だと思います。

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