【依頼分、分析・感想】2-13 島流しされた濡れ衣令嬢、絶海の孤島で赤竜と出会う。
皆さん、こんにちは。
書き出し祭り作品、分析・感想のお時間です。
X(ツイッター)と「小説家になろう」連動の、非公式イベント『書き出し祭り』。
今回は、現在開催中の21回の中から、作者さんご本人に依頼をしてもらい、無償分析・感想を、私・野菜ばたけが書かせていただいています。
に、オススメの記事です。
少しでも様々な方のお役に立てればな、と思って書いております。
よろしければチョロッと覗いていってくださいね。
1.そもそも『書き出し祭り』って?
書き出し祭りは、X(ツイッター)と小説家になろう連動の、非公式イベントです。
簡単に言うと、プロアマごった煮な参加者100名が、「よーいドン!」で小説の冒頭を匿名で投稿(投稿は運営さんがやってくれます)。
感想をもらったり、イラストをもらったり、投票してもらったり、交流をしたりして楽しむ『小説書きと小説読みのためのお祭り』です。
【注意】
本企画は、批評会ではありません。
参加者も、完全なエンジョイ勢から公募ガチ勢、書籍化作家、Web連載に弾みをつけるため……と、色んな方が参加しています。
色んなスタンス、環境、年齢、好きなものがある中で、自分がいかに楽しむか(活用するか)の場ですので、それぞれに違う人間だという事を理解して、他人は他人、自分は自分の精神を持ちつつも、どの作者さんにもリスペクトを忘れず、お互いに言葉(書き方)の配慮をしましょう。
【第21回のお祭りルールについて】
公式アカウントにて、お祭りの詳細のルールや作者募集のアナウンスがあります。
ルールは回を追うごとに進化したり、変化したりします。念のため、毎回確認しに行く事を習慣づけましょう。
【本文分析・感想をご希望の方は、こちらから】
私の本文分析・感想をご希望の方は、以下の依頼募集をよく読み、ご応募ください。
現在既に依頼種類②と③の募集は締め切っております。①またはXでの『第21回書き出し祭り、他薦&ステルス自薦作品募集』にて、ご応募ください。
2.今回読ませていただいた作品
今回読ませていただいたのは、第二会場『2-13 島流しされた濡れ衣令嬢、絶海の孤島で赤竜と出会う。』です。
★作品リンク★
第二会場『2-13 島流しされた濡れ衣令嬢、絶海の孤島で赤竜と出会う。』
https://ncode.syosetu.com/n3571iw/14/
★依頼内容★
3.本文分析
※分析では、本文から読み取れた(予想できる)内容にのみ言及します。
<0>作品概要
【ジャンル】異世界ファンタジー
【視点】一人称
【文体】きちんとめのWeb相当
<1>ストーリー分析
◎第一話の要約あらすじ◎
濡れ衣を着せられ愛する人(王太子)から婚約破棄された挙句に絶海の孤島に追放された、アミュレット。しかし「これからはただのアミュレットとして過ごしてみよう」と気持ちを切り替え、島内を探索する事にした。
その途中で魔物・マンティコアに遭遇してしまい、どうにか逃げた先で眠っている竜に出会う。竜のお陰で怯えたマンティコアが退散したのは良かったが、竜を起こしてしまうとどうなるか分からない。そう思いこっそりその場を後にしようとしたが、起こしてしまったらしかった。
呼び止められ、「何故ここに来たのか」と尋ねられたアミュレットは、王太子を庇い「天命だ」と答える。しかしすぐに論破されてしまい「ここに来て何を思っている」と尋ねられた。素直に「生きている心地がする」と答えると、竜はその答えを面白がりつつも「ではこの場で貴様を喰うと言ったら?」と続けて問う。
アミュレットが命乞いをすると、その返答を聞いた竜はどうやら彼女を気に入ったようで、すぐそばに小屋を作り住む許可が出た。本当は「身も心も強張ったままの環境で死ぬまでを生きることになるから」とお断りしたかったアミュレットだったが、最早決定事項のように話を進めていく竜に、逆らえない空気の中、彼女は口をパクパクとさせるしかない。
◎ストーリーの大枠(第一話時点)◎
愛する王太子に婚約破棄され孤島に追いやられ「これからは自分らしく生きてみよう」と決めたアミュレットが、半強制的に竜と共に生活する事になる。
【設定提示内容(要約)】
・竜
【テンプレ活用】
・婚約破棄
・追放
・異種族間恋愛
<2>構成分析
◎オープニングイメージ
王太子からの婚約破棄・追放(①②)
◎セットアップ~
「この先は、公爵家の貴族令嬢アミュレット・ノーズではなく、ただ一人のアミュレットとして過ごしてみよう」【③】⇒島内を探索【①】⇒マンティコアに遭遇、逃げた先で竜に出会う【④】⇒「何故来たのか」と問われ「天命」と回答【②】⇒論破。「今何を思う」と聞かれて考える【⑤】⇒最終的に命乞いをする【⑥】⇒竜から近くに住むように言われる【④】
<3>キャラクター分析
名前:アミュレット(元王太子の婚約者、元ノーズ公爵令嬢)
性格:一人称の地の文から「大人しい」「聡明」「達観している」という印象を受ける。意外と行動力がある(吹っ切れた?)
物語上の役割:主人公、苦労人属性(?)
その他:無意識のうちに抑圧されて生きてきた。追放によって抑圧から解放され、自分の足で人生を歩み出そうとするも、竜に出会った事で完全な自立への軌跡はやや緩やかになりそう。
名前:???(竜)
性格:強者たる余裕と強引さを併せ持つ。長年生きてきた竜を思わせる。
物語上の役割:ヒーロー? 相棒? 庇護者?
その他:アミュレットに興味を持ち、「見どころのある話し相手」と認識した。
名前:???(王太子)
性格:ちょっと浅慮?(間違った認識でアミュレットを追放したため)
物語上の役割:敵役
その他:なし
4.本文感想
※感想では、本文を読んでどう感じたかに言及します。
<1>所感(気軽な褒め感想)
婚約破棄・追放から始まる、王道のセカンドライフ系異世界ファンタジー。マシュマロで「Web小説として考えている」とお聞きしていますが、Web小説の中ではしっかりと情景描写がされているタイプの、硬派寄りのファンタジー作品だと思いました。
王道展開でありながら、孤島の中を散策したりと、大人しい印象のアミュレットが『実は行動力がありそう』という意外性もよかったです。彼女が進む未来(結末)の暗示は、タイトル・あらすじを含めてもかなり少ない作品だと思いますが(自分らしく生きた先に何があるのかはもちろん、ハッピーエンドか否かも現状では明確には分からない)、本文冒頭からは、今まで抑圧されていた『自分』が解放された事で、こびりついていた受け身精神(一種の諦めを含む)が少しずつ剥がれ、変わっていける予感が垣間見えています。確約はされておらずとも、その先にあるのはハッピーエンドなのではないかと思わせてくれる・期待させてくれる作品です。
作品において読者に与えるキャラクターの好感度というのはとても大切になりますが(主人公なら特に)、今まで苦労し不遇だった主人公が変わっていく姿は、愛され要素も高いと思います。一話から既に彼女の心の変化が始まっていますが、それをこの時点で見せる事で、主人公の素直さや清廉さを提示できたのは、とてもよかったのではないでしょうか。
あらすじにもありましたが、彼女の「今後の『生活』」とやらがどのようになっていくのか、竜と元王太子の婚約者がいてこそ生まれるストーリーを期待したいです。続き楽しみー!
<2>惜しいポイント(ちょっと深堀りアドバイス感想)
読みやすい作品でした。特に序盤は地の文を短文で区切っていたりと、Webで読むに当たり読みやすいように気を使っていた作品でもあったり、テンプレを使って読者を広く引き込もうという作者の思いも感じました。
しかし設定に関しては、もしかしたら冒頭時点で既存作との差別化が必要かもしれません。
というのも、『婚約破棄からの追放』『竜との異種族交流』『時には見守られ時には助言を貰って成長する主人公』……。これだけを並べると、Webにも書籍にも既存作は既にたくさんあるように思います。もちろん小説が溢れつつある昨今、『誰も使った事のない設定』なんてあり得ないのは承知の上ですがそれでも他作とどのように差別化を図るかは、課題になりそうな気がします。
文体、アッと驚くストーリー展開など、様々な選択肢がありますが、最も冒頭で差を出しやすいかつ今すぐにできる努力が『この中に一つ、変わった設定をプラスする事』だと私は思っています。世界観でもキャラクター設定でも構いません。王道の中にスパイスとして何か変わった観点や特徴を放り込むだけで、より輝く作品になると思います。
既存設定でも組み合わせによって新しさを演出する事は可能なので、ちょっと探してみるといいかもしれません。因みに私のお勧めは、別ジャンルの作品から面白そうな設定を探す事です(これが意外と効果的)。
また、本作は情景描写・説明描写が多い代わりに、感情描写が少ない傾向もありそうです。Webを戦場とする場合、それがどう作用するか。一考する余地はありそうです。
構成的にはとても綺麗な作品なだけに(『構成分析』を見ると、その美しさがよく分かる)、感情描写が少ないせいでキャラクターの掘り下げだけが浅く感じるのが、どうしても「惜しい!」と感じてしまう。
筆力のある方だと思いますし、文字数的に「書きたい所まで書こうとしたら文字数が足りなくて泣く泣く断念……」というのも普通にありそうなので、もし出過ぎた指摘だったら申し訳ないですが……何かの参考になればと思い、書かせていただきました。
5.さいごに。
本分析・感想に応募いただき、ありがとうございました。
楽しく読ませていただきました。
竜がどのような役割を持つのか(ヒーロー? 相棒? 庇護者?)によって、毛色も目指すべき結末も変わる作品だと思います。
硬派な異世界ファンタジーとして、Webで花開いてくれる事、一読者として楽しみにお待ちしています。