白血病YouTuber「にゅーいん」のこと

息子がYouTuberとして活動を始めたのは、20歳の時、大学へ通っていた時に白血病が再発してからのことです。

自分のことを誰も知らない県外の大学へ行って一人暮らしをするっていう夢が叶って楽しく暮らしていた矢先(6ヶ月は経っていましたけど)のことでした。バイトもして友だちとも楽しく過ごしていた時だったので、その時の落ち込みは半端なかったと思います。

再発が分かった時に電話して来て「お母さん、ごめん。再発したかもしれん」って言われて。
次の日、夫と2人で岡山へ行き、息子と一緒に病院へ行くと「再発で間違いないでしょう」と言われました。その日のうちに高知へ帰り、次の日には入院して治療することになりました。

今まで大学に通って楽しく過ごしていたのが突然の再発。学校も休学して入院し、しんどい骨髄移植治療も受けなければなりません。息子的にはお先真っ暗だったと思います。

最初は本人は「入院して暇になるきゲーム配信でもしようかな」と言っていたのですが夫に「白血病のこととか配信したら?」って言われて話すうち「せっかく病気になったから誰かの役に立つなら」と言って配信を始めました。

小児白血病になったからこそ

小児白血病になった立場の人間として配信する意味は大きかったと思います。今現在、白血病を患ってる子どもさんはなかなか自分の言葉で「今こんな感じ」とか「こんなふうにしてほしい」とか言えないと思うんですよね。

実際この前、白血病の子どもさんのお母さんにお会いした時に「子どもにご飯が食べづらい、喉を通りにくいって言われてる」って言ってたんですが、それだけだと「何でだろうね?どうしてだろうね?」で話が終わってしまいますよね。

でも息子は「唾液が出んから飲み込めんがよ。パンとかお米単体でも全部唾液持って行かれて喉に詰まる。だからそんなものを食べる時は汁物が絶対いるがよね」って言ってて。それを聞くと「なるほど。そういうことか」って納得出来るわけで。

子どもの時はしんどいことをうまく言葉にできなかったのを、大人になって他人に伝わるように言えたことがすごくたくさんあったと思います。

YouTubeをする意味

息子はテレビや新聞に何度も取り上げて頂いていたのですが、時々は私たちもインタビューを受けることがありました。その時に息子がYouTube活動をしていることをどう考えているか聞かれたことがありました。

私は20歳になってからの入院では一番先にメンタルがやられてしまうだろうなと思っていました。
子どもの時は良くも悪くも私たちが24時間付きっきりでずっと話したり笑ったりしていたのが、大人になるとそこまで一緒にいるわけではないから。ただでさえしんどい治療を受けながら誰とも話さない、笑わないっていうのはある意味地獄というか。そのしんどいことを真正面から自分だけで受け止めなくてはならないのはすごくつらいだろうなと思って。

でも思ったより大丈夫でした。なんでだろうとずっと不思議に思ってたんですが、ある時YouTubeをやってたからだと気づきました。YouTubeでしんどかった経験を妙に明るく楽しそうに笑いながら発信していたのが良かったんだろうなと。
それから動画を見た人たちからコメントを頂くことで世間と繋がってるって感じることが出来たんだろうなと思いました。
息子が最後の臍帯血移植を受けた後のYouTube「生存報告」のコメントでは、全然知らない、顔も見たことない方たちから「おめでとう」とか「お帰り〜」のコメントをたくさん頂いていました。
病室では1人でいろんなことを耐えなければならなかったけどYouTubeのコメントでは全然知らない人から、でもそれは確実に息子に向けての励ましだったりお礼の言葉だったので。そういう意味ではすごく救われたんだと思います。

「ドキュメント4」の再放送


そんな息子を取り上げてくれたNHKの「ドキュメント4」っていう番組の再放送が決まりました。3月19日の午前2:23~2:53まで(18日と19日の間です)放送は四国限定ですが、番組が終わってからNHK +で2週間配信があるそうです(こちらは全国で流れます)

けっこう何度も再放送して頂いてるんですが、でもその度に知っている人には思い出してもらえる、知らない人には改めて知ってもらうことができる。それってすごいことですよね。亡くなってもう1年半経つのに。
普通だったらそれだけ経つとみんなの記憶の底に沈んで行ってしまうものなのに亡くなってからも「僕はこうやって生きてたよ!」ってアピール出来るってすごいと思います。

番組で「死んだらどこへ行くと思いますか?」って聞かれて「ずっとここにいる、かな」って答えてたんですが、まさにそういうことなんだろうなと。いなくなってしまったけどみんなに忘れられそうになったら出てくる(再放送してもらう)みたいな。…ある意味執念を感じます。

前の再放送が決まった時には知り合いの方には「え〜、またぁ〜?」って言われそうで連絡出来ませんでした。でもあとから番組を観た人から「また会えたよ」って言って頂けて。それを聞いた時、すごいな、そんなふうに言ってもらえるんだって驚きました。

もし良かったら観てあげてください。

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