白血病の始まり
「お母さん、気づきませんでしたか?」
それは息子が幼稚園の年中さんの時でした。夏休みに入る前から「しんどい〜。しんどい〜」と言いながら家でゴロゴロすることが多くなりました。園では夏の「よさこい祭り」に参加することになっていて、その練習が始まったばかりでした。そういったことに積極的に参加したくない子どもだったので「練習が嫌で言ってるのかな?」ぐらいの軽い気持ちで考えていました。
そのうち夜になると微熱が出るようになって、夜間診療をしてくれる病院に連れて行きました。「風邪ですね」先生にそう言われて風邪薬をもらって帰る。2度、3度と続くと、先生からは「よく寝冷えをする坊ちゃんですね」と言われる始末。ただ、それも何度も続くとさすがにおかしいと思い、昼間に別の病院に連れて行くことにしました。
その病院では血液検査をし、診察室に入るとすぐに「お母さん、気づきませんでしたか?」と言われました。お腹を触ると脾臓の辺りがものすごく硬くなっていました。
一旦診察室の外へ出され、先生や看護師さんたちが何やらバタバタし始めました。私は嫌な予感がして来ました。家に電話をかけ「なんか私、いかんことしたみたい…」と家族に告げたことを覚えています。それから診察室に呼ばれ入って行くと「明日、大学病院に行ってください」と言われました。
明日?明日って日曜日やけど…。
この時のショックは病気が分かった時よりも大きかったです。
「白血病です」
次の日、日曜だというのに早朝から病院に検査のため訪れた息子の身体を、何の説明もないまま何人もの医師がものも言わず触っていきます。その後医大生も同様にして。1人だけ「ごめんね。人がいっぱい来て怖いよね」と言ってくれた医師がいました。ただ、その時も病名の説明はありませんでした。
そうして1〜2時間経ったでしょうか。医師からの説明を受けるために診察室に入った私たちを待っていたのは
「白血病です」
その言葉でした。
前日行った病院でも病名の説明はなかったものの、絶対に良いことを言われるはずはないと覚悟して行きましたが、それはあまりにも想像を超えた病名だったため、絶句してしまいました。
普通子どもの病気といえば風邪もしくは流行り病、よくあって喘息までが一般の主婦の考えの及ぶところ。それがまさかの白血病。テレビドラマではあるまいにそんな病気が息子の身に降りかかってくるとは。あまりの出来事に思考がすぐに追いついていきませんでした。
2〜3日の検査入院のつもりが、すぐに本格的な入院となり治療が始まることとなりました。主治医から病気のことや治療方針などの説明があり、夫はすぐに医療従事者が読むような医学書や専門書をどこかからたくさん取り寄せて、病気に対する知識を深めていったようでした。
一方で私はことの重大さを感じつつも理解出来ず、1人だけどんどん取り残されていくような感覚に襲われていきました。
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