白血病児、入院中の食事のこと

入院中、1番大変だったのがご飯のことでした。

子どもの頃は…

最初の入院の時、まだ年中さんだった息子が入院したのは小児科でした。でも小児科と言っても大学病院だったので入院患者はおじいちゃん、おばあちゃんから子どもまで年齢層が幅広く、ましてや病気の人ばかり。必然的に味付けは薄めで魚や野菜が中心になって来ます。子どもの好きなハンバーグやカレーにはなかなかお目にかかることは出来ません。
そんな時の対策に、息子は家から塩(粗塩)と醤油(こだわりが強かった息子はあるメーカーの醤油しか使いませんでした)とマヨネーズを持って行っていました。それで自分なりに味をつけ直していましたね。
でもサラダが来ても一度下茹でしてるから、「きゅうりとかキャベツがふにゃふにゃながで。全然美味しくない」って言って食べなくて。たらこスパゲッティが出た時は、家から別にたらこを持って行って追いたらこをしていました。

その中でも唯一食べてたのはご飯でした。なのでご飯のお供のふりかけと梅は欠かせませんでした。ただ感染予防食になると、梅はもちろんダメで、大袋のものは全部小袋や小分けにしたものになりましたけど。
ちりめんじゃこ(しらす干し)が大好きだった息子は、私がいない時のご飯どきには看護師さんを呼びつけて「おじゃこ、電子レンジで20秒チンして来て」って言ってみたり。(感染予防食は生ものがダメだったので念のためそうしてました)

骨髄注射や髄注の時は小児は全身麻酔でやるので、朝ごはん抜きになります。その時は先生に「何時までやったら食べてもいい?」って聞いて、朝4時とか5時って言われると、その時間に起きて前日作って持って行ってたおにぎりをレンジで温めて食べていました。

その頃、病院の中には売店しかなくて、敷地から少し離れたところにあったコンビニにカップ麺とかをよく買いに行かされてました。カップ麺も「3分のはいかんで。5分ぐらいのじゃないと美味しくない」とか言われてわざわざ探して。
毎日そんなものばかりではダメなので、何らかのものは差し入れに持って行っていました。
朝は病院の喫茶店でトーストを買って、病室まで持って行って食べさせたり。

唯一嬉しかったこと

小児科なので、毎日おやつが出て来るのですが、それも決まって市販の2枚入りのクッキーが一袋。フライドポテトが食べたいって言ってた息子は毎日毎日、朝昼晩のご飯の時に返す食器と一緒に「栄養士さんへ 僕はフライドポテトが食べたいです」って手紙を書いて。それがどれぐらい続いたでしょう。ある時、おやつにフライドポテトが出て来て。ものすごく喜んで食器を返す時に「おいしかったです。ありがとうございました」って手紙を添えていました。それからりんごのコンポートが入ったパンケーキが出て来たり、手の込んだものが少しずつ増えていきました。

息子が高校生になった時に小児科の病棟に行った時、ちょうどおやつの時間でフライドポテトが出て来ていました。息子と「あ〜。まだ出て来ゆうがやね。改善されたままながや。あの時書いて良かったね」って話したことです。

大人になって…

大人になっての再発の時のご飯はまた大変でした。
岡山に行く前に高知の病院で抗がん剤治療を受けていたんですが、病院食を本当に食べなくて。ひどい口内炎が出来てたり、途中から味覚障害が出て、塩味が全部苦味に感じたり、味が分からなくなって何を食べても砂を噛んでるみたい、とか言ってました。
3度目の臍帯血移植の前の抗がん剤治療の時も同じようなことを言っていました。

味が分かっている時も病院食が不味くて食べられないって言ってたからずっと差し入れを持って行ってました。3食は難しかったので、昼は娘が、夜は私が持って行っていました。
時々、無性にフライドポテトが食べたいって言うので、病院から10分ぐらいのところにあるマクドナルドでポテトの揚げたてを買って持って行ったり。
感染予防食の時は調理から2時間以内のものじゃないといけなかったので、食べる時間から逆算して作って持って行っていました。

病院食が来ても蓋も開けずに返す時は、食器を取りに来てくれた看護師さんが部屋の外で蓋を開ける音がしてため息が聞こえるのがすごいストレスって言ってて。その時は看護師さんにお願いして、最初から持って来ないようにしてもらいました。

動かないからお腹空かなくて、食べないから体重はどんどん落ちていって。最終的に29kgまで落ちてしまいました。
せめてお菓子でもと思い、高カロリーの飴やアイスクリーム、プリンとかいろいろ持ち込んでみましたけど、そんな物だけでは体重が増えるはずがありません。

その頃、唯一食べたいって言ってた果物も、皮付きのものじゃないとダメで、それも皮をむいてすぐに食べないといけなくて。最終的に病室にミキサーを持って行って、ミックスジュースを作ったこともあります。

病院食の中でなんとか食べていたご飯は、移植の後遺症でドライマウスになり、唾液が出なくなって食べづらくなっていました。その頃「汁物がないとご飯食べれんき、味噌汁とかトマトスープとか持って来て」ってよく言ってました。

岡山で移植を受けた時は、私は娘と2日に1度、通ってたんですけど、行った時に冷凍食品やアイスを補充して。途中で食道の粘膜障害を起こして吐血してからは自分で食べることが出来なくなり、鼻からチューブを入れていました。入院中、食べ物のことで唯一大変じゃなかった時期でしたね。

食に対する強いこだわりを持っていたことを知っている小児科でお世話になった看護師さんたちには「将来はこの経験を生かして、これをかければ美味しくない病院食が劇的に美味しくなる調味料とかふりかけを作ったらどうやろね」とか「ものすごく美味しい宇宙食とか非常食を研究したらどう?」とか言われてました。本人もまんざらではなさそうでした。

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