あの子は夢の中でマスクを外して後編




 それでも踏ん張りやっと振り絞って出た言葉は
「いいと思う」だった。直後、僕の頭の中は真っ白になりそのまま僕自身が自分のの真っ白な頭の中に吸い込まれていった。そこは一面真っ白な世界。立っているのか浮いているのかも分からない。何も考えられない。気がつくと僕は彼女に抱擁していた。いや抱擁とはとても言えない。両腕で体の前に大きく丸を作り、そこにあの子が収まったような形だった。身体同士は密着していない。触れたあの子の腕からぬくもりだけを盗んでいた。そして僕はキスをした。脳内で幾万としてきた理想のものとは違い、唯だ正面で激突してたまたま唇同士がくっついてしまったようなお粗末としか言いようのないものだった。そこでやっと思考ができるようになった僕はあの子が拒絶しようとしていないことに気がついた。なぜだか分からない。全て分からない。なぜ僕の前であの子はマスクを外すしてくれたのか。なぜ「どう?」と聞いてきたのか。なぜ。なぜレイプまがいの強引な僕のキスを嫌がろうとしないのか。なぜあの子はそんなにかわいいのか?分からない。分からない。時間は動かない。日は登る。矛盾だ。僕は君を書きたいと思う。君はとても素敵ねと言う。まだ僕のファーストキスは終わっていない。




2023年4月27日明朝の夢より

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