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金融の「裁定取引」から生まれたスター・マイカ

ビジネスモデル分析の第一回。
金融では一般的な「裁定取引」の考え方を、不動産業界に移植した例を紹介します。

そもそも、裁定取引と「市場間の価格差を利用して利益をあげる経済行為」のことを指します。
つまり、ある地域で豊富に存在する安い製品を、その製品が極めて貴重である地域で販売することにより、価格差で収益を得る取引です。
例えば、東京で売られている100円の水が、砂漠地帯で販売されると、1000円の価値をもつ状態は、裁定取引が成立している例です。

スター・マイカのビジネスモデル


今回紹介するスター・マイカは、「賃貸に出されているマンションを買い集め、賃借人が退去した後にリフォームし、それを売却して利益を上げる」ビジネスモデルをとっています。
つまり賃借人が退去すれば、その物件を売却することで儲かり、退去しなくても家賃収入で儲かる”ダブル・インカム”のビジネスです。
このモデルのどこか優れているのか、なぜ他の不動産業者が追随できないのか、解説していきます。

スター・マイカのビジネスモデル

マンション売買の構造

スター・マイカが扱う、賃貸に出されているマンションは人気のない物件です。
というのも、オーナーがマンションを買い取ったとしてもすぐに住めない。また、投資目的とみなされ、金利が低い住宅ローンが適用できない物件です。
また不動産投資は、保有期間が短ければそれだけ良いとされる中で、住人が退去するのも不明なため、手離れの時期が不透明なのも、不人気の理由の一つ。
そのため、一般的に賃貸中のマンションの価格は、空室のマンションに比べると、25%も価格が安く設定されています。

なぜスター・マイカは成功したのか

とはいえ、マンションを買い取った後に賃借人が退去すれば、そのマンションは空のマンションと同じ価格に戻り、確実に利鞘が生まれます。
つまりマンションの住人がいつ退去するかを、コントロールできれば問題はないのですが、法制度などの背景から、意図的な操作は難しいです。

しかし、世帯ごとに予測はできなくても保有するマンションの数が多くなれば、一定数退去者の予測ができます。このモデルが成り立つためには、一定の物件数と、売却するまでの不動産を保有出来る資金が必要なのです。

スター・マイカが成功した理由

不動産分野では投資に不向きな物件を、どのようにして扱い、利潤を上げていったのでしょうか。成功の秘訣は、大きく3つあります。

①多くの物件を保有する

創業者の水永氏は元ゴールドマンという肩書を生かし、海外の投資ファンドにこのビジネスプランを説明し、短期間で資金を集め、大数の法則が成り立つ物件数を持ちました。
また物件も様々なエリア・築年数・価格帯のマンションを買い取るようにしており、災害・価格変動・退去までの期間を、ポートフォリオ運用することでリスクを分散させています。
加えて東急不動産や三井不動産などと提携し、彼らから物件の紹介を受けることで良い物件を集めました。

②ぶれない査定

スター・マイカでは取引事例データベースを活用し、理論値と実査による調整を組み合わせた、独自のノウハウを持っています。
査定と実際の誤差比は非常に小さく、損のない売却を行えているのです。

③借り入れの容易さ

スター・マイカは財務の健全性・成長性・収益性を金融機関に評価され、金利1%台で借り入れができます。他社が追随できない理由としては、このように金利を1%台で借りられる不動産会社は限られていることともあります。

この事例から学べること

今回は金融の仕組みを、不動産に活かすことで成功に導いたスター・マイカの事例を解説しました!
一つの物件だけ運用するのでは儲からないけれども、大規模化して儲けを安定させる仕組みは学びですし、規模化が重要な事業は、お金集めが得意な役員が必要なことを学びました。
加えて今回は、賃貸中のマンションが25%程安く取引される、業界特有の知識にも着目できたことが価値ポイントだと思いました。

参考)『なぜあの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編』


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