【読書メモ】PFIのファイナンス実務 (株)民間資金等活用事業推進機構著
PFIとは何か?
公共施設等の整備運営を行うにあたり、設計・建設から維持管理、運営までの業務を長期間にわたり一括して民間事業者に委ねる事業手法。
民間の資金、技術および経営ノウハウなどを活用し、従来型の公共事業に比べて、少ない財政負担でより良い住民サービスを提供することを目指す。
包含関係としては、PPP>PFI>コンセッション。
PFIにはどのようなものがあるのか?
収益性、対象施設の所有形態の二つの観点がある。
収益性からは、自治体がサービス対価をフルに支払うサービス購入型、民間事業者がサービス提供先から対価を受け取り自治体からは金銭を受け取らない独立採算型、中間の混合型がある。
所有形態については、固定資産税を避けるため、建設は民間が請け負い、所有は自治体が担うBTO方式が大半。
金融機関はどのような役割を担うのか?
①事業性、②スキーム、③償還確実性の観点から審査を行う。
①プロジェクトが生み出すキャッシュフローの確実性を審査する。サービス購入型はサービス対価の契約内容、独立採算型は長期の事業採算とキャッシュフロー予測
②官民の役割分担とリスク分担(PFI事業契約、業務請負契約等、融資契約)、リスク顕在化時の対応と契約解除の条件、コンソーシアムの事業遂行能力。SPCはペーパーカンパニーとなることが一般的なので、コンソーシアムメンバー中心に設計・工事監理業務委託契約、建設工事請負契約、維持管理業務委託契約、運営業務委託契約 (これらの契約を総称してプロジェクト関連契約)を締結する。この際、PFI事業契約でSPCが担うことを定められた各種リスク(不可抗力リスク、法令変更リスク、工事遅延リスク、物価変動リスク、契約解除リスクなど)は各契約先にパススルーされることになる。
③償還確実性を高める建付としてコベナンツやキャッシュリザーブを設計。担保はSPCの資産、契約上の地位、スポンサー保有のSPC株式を包括して取得(全資産担保)
PFIの資金の流れはどのようなものか?
①一般的なPFIと②コンセッション型に分かれる
①サービス購入型の場合、イニシャルの整備費についてはSPCは金融機関から調達し、長期にわたって整備に係るサービス対価として自治体から支払いを受ける。ランニングの維持管理及び運営に関する費用については、それぞれのサービス対価としてSPCは自治体から支払いを受ける。
②行政が空港等施設の所有権を保有したまま運営権をコンソーシアムに設定し、対価をコンソーシアムは行政に支払う。分割払いと一括払いがあるが、ファイナンスリスクをSPCに寄せるため一括払いが推奨されている。
SPCは自らの経営判断により収益を確保し設備投資、運転資金確保、キャッシュリザーブの積立を行い、借入返済とスポンサーへの配当支払を行う。
契約期間の長さは?
社会ニーズの変化に応じて事業をシフトしていく企業与信と異なり、事前に契約でビジネススキームを固定するPFIにおいては超長期の与信が可能になる。
サービス購入型と独立採算型で異なる。
サービス購入型の場合、PFI法で国の債務負担は30年が限度とされ、自治体もそれに倣い30年が上限。実際は10〜20年が多い。独立採算型は上限はないものの、スポンサーが大企業であっても長期の期間の環境変化を見据えることは困難なため、期間30年として延長オプションを付帯する、といった工夫がなされる。
SPCをなぜ設立するのか?
事業期間が長期にわたるので、スポンサーの経営リスクが対象プロジェクトに波及することを防ぐため。SPCは契約上、PFI事業以外の事業に従事することは禁止される。
エクイティの割合はどのように決めるのか?
サービス購入型の場合は収入が安定しているため極論ほぼなしでも検討できうる。
一方、独立採算型、コンセッション型に関しては、キャッシュフローの各シナリオをふまえつつ、返済が可能な借入金額を確定し、足らず米を逆算してエクイティで調達する。
示唆
プレーンなPFIに係る説明が中心ながら、基礎を丁寧にまとめている良書。
一方で、記載の通り融資関連契約、プロジェクト関連契約に対する全資産担保や表明保証、コベナンツ、またキャッシュウォーターフォール等、事業者の手足を縛る事項のオンパレードでもある。ようは事業者を信頼してない証でもある。
このような大元のロジックを抑えて尊重はしつつ、オガール紫波のようなプロジェクトファイナンス仕立てにしない無担保無保証のノンリコースローンを仕掛けていきたい。
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