NFTゲームをヒットさせるために絶対に必要なバランス設計の観点
ゲームアーキテクトの米元です。
今回は、最近引き合いの増えてきたNFTゲームの設計に関するお話を書いていきたいと思います。
※なお、NFTゲームは別名ブロックチェーンゲームやクリプトゲームなどと言われますが、本記事ではNFTゲームと呼称を統一します。
気づけは1万文字を超える分量になってしまったので、ゆっくりお時間のあるときにでも読んでいただけると幸いです。
さて、皆様ご存知の通り、ここ1年NFT関連については、メタバース同様かなり機運が高まっています。
また、ゲームに関しても、NFTゲームがかつてのソシャゲのような爆発的なヒットになるのではという風潮も強まっており、ゲーム関連の各社も続々とNFTへ参入し、勉強会などの機会も増えているのを肌で感じております。
NFTへの参入に関するニュース一覧
そんな中で、特に今回は「今まで」アプリゲームを出してきた企業がNFTゲームに参入したときにどのような勝ちパターンがあり得るのか、そしてどのような負けパターンがあるのかについて、現在のゲームの状況を過去のソシャゲバブル時代のときの状況と併せて解説していきます。
ソシャゲバブル時代の回顧
ソシャゲバブル時代との比較の話になりますが、現時点のNFTゲームはまだ一般に普及が進んでいるとは言えない状況で、まだまだ黎明期です。しかし、いくつかの壁を超えて普及が進むと、かつての「ソシャゲバブル」を彷仏とさせるような状況になると考えられます。
そしてご存知の通り、当時ソシャゲバブルで盛り上がったところも、その後かなりの数が苦戦を強いられたり、撤退を余儀なくされるなど、大きな波があり、今回も、そのソシャゲバブル時代に起こったような流れが起こる可能性が高いです。
ですので、この記事を読んでいる方が、その失敗を繰り返さないように、あるいは再びNFTゲームでも成功できるように、 という想いを込めて書いております。
実は自分自身は、ソシャゲバブルのピークを超えたときにこの業界に転職してきたので、当時の状態を生で知っているわけではないのですが、とにかく当時は出したら当たると言う感覚がすごく強かったんだなぁという印象を持っています。
なので、作り込みよりは、スピード勝負!という感じで、とにかく出せ出せ、という雰囲気だったようです。
(※あくまで印象ですが、イケイケの機運が強かったのは間違いないです)
特に、バランス設計と呼ばれる部分については、今から考えるとかなり適当な部分も多く、せっかくヒットしたのに、バランス設計が悪くてすぐにユーザーが飽きてしまって離脱、そして売上が長続きしない、ということが繰り返し起きていました。
ただ、当時は出せばまた当たるでしょという感覚が強かった(らしい)ことや、運用が何年も続くなんてことは考えられていなかったこともあり、大きくは問題視されてこなかったようです。
そして、儲かるということで、大手ゲーム会社含め参入が相次ぎ、そしてブラウザではなくスマホアプリが主流になり、どんどん開発費は高騰していきました。
そうなると、当然開発費を回収するためのハードルも上がってくるので、運用を長く続ける必要があるのですが、ソシャゲバブル時代の感覚でバランス設計を行っていたところは、軒並み売上が長続きしない、という事態に陥ってしまいました。
また、コンシューマーゲーム(※パッケージゲームとも。売り切り型のゲーム)のバランス設計から抜け出せず、アプリゲームでも長く売り上げ続けることが出来ないタイトルも多く見られました。
もちろん、グラフィックなどを中心にアプリゲームがリッチ化していった結果、副次的にゲームバランスもある程度お金をかけて設計が行われるようになったため、以前に比べるとバランス周りの設計はかなりしっかりとやっているので、 ある程度の大型タイトルと呼ばれるようなものはバランスが大幅に悪いというような事はほぼなくなりました。
ただし、その過程で多くのタイトルが、バランス設計不足で売上が長続きせず、十分な採算が取れないままクローズする、というのを繰り返しました。その結果、前述の通り事業として撤退縮小、あるいは業績悪化の憂き目にあってしまった会社さんがたくさんあります。
それらのタイトルの中には、ちゃんとバランス設計を行っていたら、売上が長続きして十分な利益を得ることが出来たであろうタイトルがたくさんありました。
というところで、現在はバランス設計面含めて、しっかりと何十億円という予算をかけて作り込むところだけが大きなヒットを出せる、という市場の状況になりました。
最近ですと、グリーさんのヘブンバーンズレッドがスマッシュヒットを出していますね。
NFTゲームで同じ失敗を繰り返さないように
では今後NFTゲームが流行り始めて、「NFTゲームバブル」が起こると、同じことが起こりそうなのか?というお話になります。
これは「YES」です。
各社、バランス設計はしっかりするようになってきたんじゃないの?というお話を先程させていただきましたが、NFTゲームで必要な、バランス設計における下記の3つの変化についていけるかどうかについては、まだ重要性気づいていないところも多く、今後ここへの対応が成否を大きく分けるポイントであると考えています。
3つの変化とは、以下の項目です。
①求められるバランスやロジックの設計思想が大きく変わる
②求められるバランス設計への精度がかなり上がる
③バランス設計は「売上維持」から「そもそも売れる為」に必要という位置付けにシフトしている
これらの変化について、NFTゲームの特徴に触れながら、少し詳しく解説していきたいと思います。
NFTゲームの特徴
色々な特徴はあるのですが、NFTゲームの大きな特徴としては、
・唯一性 - ユーザーごとに異なる固有の資産を獲得できる
・取引前提 - その資産を取引する前提の設計である
というところがあります。
NFTについてはある程度ご存知であるという前提になりますが、各項目について少し解説していきたいと思います。
唯一性
ユーザーごとに異なる固有のリソースを獲得できる点については、例えばThe Sandboxなどのように、土地を売買したり貸し借りできるようなものだったり、またはコントラクトサーヴァントのように、カード固有の遺伝子のようなものを持つ、一つ一つ異なるキャラクターでデッキを組んでバトルするものなどがあります。
※余談ですが、コントラクトサーヴァントについては、バトルシミュレーション部分で協力させていただいた実績があります
これらはNFTの特徴を生かしたもので、一つ一つのリソースに固有のトークンを発行することで固有の価値を付与するというものになります。
このトークンによる唯一性をうまく使う設計が、NFTゲームにおいては非常に重要になります。
取引前提
その上でもう一つ重要なのが、NFTゲームは資産の取引を前提としているということです。
実は、ブラウザやガラケーのソシャゲ時代は、結構盛んにトレード機能が活用されていました。主にリアルマネートレード(RMT)という形でゲーム内のアイテムなどの資産の売買が行われていましたが、当時はこれらの悪影響の方が槍玉に挙げられた結果、徐々に機能としての実装も減っていきました。最近のアプリゲームではこのトレード機能はあまり入っておらず、アカウント自体の売買以外では大々的に行われるようなことはなくなりました。
(※余談ですが、アカウント売買は大抵利用規約に引っかかるので注意が必要です)
しかしNFTゲームでは、このリソースの取引自体が禁止どころか公式で推奨され、殆どの人が遊ぶ前提とされているので、トレードがゲーム性に絡んでくることが事実上必須になります。
先程挙げた土地売買や固有のキャラを生み出してそれを貸し出したりするなどは、まさにトレードを前提としたゲーム性になります。
特に直近のNFTゲームの傾向を見ると、その唯一性×トレードを駆使して、Play To Earn、つまり遊びながら稼ぐことができることをベースとしているゲームも増えてきていますが、
「このゲーム、バランスが悪くて稼ごうと思ってもちゃんと稼げない…」
という状況ですと、そもそもユーザーも集まりませんし、
「一部のユーザーが簡単に稼げすぎてやる気なくす…」
といったバランス崩壊が起こると、運営がマネタイズ出来なかったり、真面目にプレイするユーザーが大量に離脱するリスクを抱えることになります。
また、当然このあたりのリソースバランス制御を間違えれば、運営が収益を上げられない構造に一瞬で陥る可能性もあります。
例えば、今まさにNFTゲームで一番アツいAxieですら、直近、売上の低下が起こっていますが、
これはまさにバランス設計の部分に起因していると考えられます。
細かい経緯を書くと長くなってしまうのですが、2月の頭から報酬トークンのSLP配布を大幅に削減したことによって稼ぎづらくなり、結果ユーザーの離脱を招いてしまい、売上が低下してしまっているようです。
なんでそんなことをしたのか?というと、昨年夏頃からSLP(Smooth Love Potion: Axie内で獲得できる仮想通貨)のバーン(消費)よりも新規発行量が上回る状況が続いてSLPのインフレが発生してトークン価格の低下が続いていたことに対する対策のようで、対策の効果もあってかSLPの価格は回復しておりますが、価格上昇はそこまで大きくなかったので、ユーザー的にはただただ供給が絞られて渋くなっただけという印象で、それが離脱を招いていると見ています。
この事例のように、NFTゲームでは、リソースの配布バランスをミスると致命傷になりかねないのですが、事例として出したAxieは、そもそも「事前のバランスやロジック設計がしっかり出来ていて売れた事例」のひとつなのです。
そういった成功したタイトルでも、些細なバランス設計で売上に大きく影響を及ぼす、というのがNFTゲームでのシビアなリソースバランスになっています。
このように、ソシャゲバブル時代や今のアプリゲームのように、バランスが多少悪くてもコンセプトが良ければゲームとしては成り立つし、あとでなんとかすれば良い、という甘い状態ではなく、NFTゲームは「リソースバランスをしっかり考えた設計にしないとそもそも成り立たない」という戦いになっています。
前提がすでに変わっているのです。
今後NFTゲームでヒットを出せるのはどこ?
本題に入りますが、まず抽象的なお話をすると、「アプリゲームでの成功体験があまりない、もしくは成功体験を捨てることが出来る」ところが上手くいく可能性が高いです。
これは、ソシャゲバブル時代から今にかけて起こったことと同様のことが起こると考えられるからです。
少し歴史を振り返って行きたいと思います。
ソシャゲバブル時代の成功者
今は力のあるIP(※キャラ物など版権もの。ここでは、すでに人気が確立しているものという意味合い)を活用しているタイトルや、コンシューマーゲームを開発していたところがどんどん成功確率を上げてきているので、最近で継続的に売上を上げられているタイトルも増えてきました。
しかし、ブラウザソシャゲからアプリゲームへと移り変わる時代で成功して、そのまま継続できているのは、実はコンシューマーゲーム時代には無名だったところが多いのです。
まずは、コンシューマーゲームからソシャゲと言われる、基本無料のゲームが出たタイミングでのお話をさせていただきます。
今までの、コンシューマーゲームと呼ばれる買い切りのゲームでは、とにかくコンセプトとかが面白そう!と思ってもらうことが重要でした。
実際に買ってもらった後は、長く遊んでもらうかどうかは売上にはあまり影響がないので、そういった意味ではバランス設計は今ほど重要視されていませんでした(勿論楽しいほうがユーザーの満足度が上がり、口コミやレビューが良くなるので、売上本数には影響はでますが、必ずしも長く遊んで貰う必要はありません)
それに比べて、F2P(基本無料=Free To Playの略) タイプのゲームは、長く遊んでもらい、その中で一部のユーザーに課金して頂いて売上を上げることが重要になるので、長く飽きずに遊んでもらうことや、終わりを作らず、継続的にプレイしたり課金したりするバランス設計の仕組みが重要になってきました。
一見すると、コンシューマーゲームのメーカーの方がゲームバランス設計については経験が豊富なんだから、有利だったんじゃないか?と思われるかもしれませんが、初期の頃のヒットはそういった経験が少ないところで作られたものが多かったのです。
これはなぜでしょうか?
実際、コンシューマーゲームのメーカーにはちゃんとバランス設計の考えやノウハウはあったのですが、前述の通り、基本無料のF2Pゲームのバランス設計では、求められるバランス設計の考え方(売って終わりではなくて、ゲームを始めてもらった後に課金してもらうスタイル)が異なっており、こういった形のバランス設計への転換が難しかったのが理由と考えられます。
(初期の頃からヒットを出している会社さんも勿論ありましたが…)
一方で、ソシャゲ黎明期は、ゲーム経験のほとんどないWeb系企業の方がヒットタイトルを量産していました。
その結果、一部の方からは、あれはゲームじゃないというスタンスの声が上がっていたという話もよく聞かれたそうです。
(おそらくは、今回大手のコンシューマーゲーム系の企業の対応が早いのは、このときの経験があるからではないかと思われます)
ソシャゲバブル時代以降の成功者
では、その後の展開はどうなったかと言うと、ヒットを出したタイトルは、実は多くはその後売上がしぼんでしまっており、そういったヒットを出してきた会社も、継続してヒットを出した会社と、そうでない会社に分かれました。
これは、F2Pゲームのバランス設計について、仕組みとしては上手く取り入れたものの、その精度が低く、かつそこのバランス設計に対して適切な投資を行わなかった為に起こりました。
また、逆にコンシューマーゲームのメーカーも、基本無料のF2P形式のバランス設計のノウハウを適用し始めて、もともと持っていた面白いゲームを作るバランス設計の技術と、基本無料形式のバランス設計のノウハウを上手く融合していったところが、継続的に長期ヒットを出せるようになってきました。
その結果、最近は求められるバランス設計の精度も年々高度化しているのが、特に顕著となってきています。
そのため、ソシャゲ時代の場合は、
黎明期:
新しいバランス設計の考えに適応したWeb系企業が成功
↓
成熟期:
①バランス設計に投資をし続けたWeb系企業は成功し続ける
②新しいバランス設計への考えに適応したコンシューマーゲーム企業が成功
という構図になりました。
(※実際はこんな単純な話ではないのですが、概ねイメージを掴んで頂く為に簡単な図になっています)
なので、これと同じ構造が、NFTゲームでも起こると考えています。
NFTゲームの場合は、Web系⇒新興勢力、コンシューマー系⇒F2P系、という感じになるかと思います。
そして、先程書いたとおり、
「アプリゲームでの成功体験があまりない、もしくは成功体験を捨てることが出来る」
ところが上手くいく可能性が高いと思っているのは、ソシャゲバブル時代に同じことが起こったからです。
では、F2Pのアプリゲームでの成功体験は何なのか?という観点で少し話をしていきたいと思います。
既存のやり方でバランス設計を行うのが危険な理由
それでは、既存のゲーム設計のバランス設計はどのように行われているのか、という点について書いていきたいと思います。
ソシャゲバブル時代から今のアプリゲーム時代にかけて生き残ってきたところの特徴として、
①新しいバランス設計ロジックに適応した
②よりシビアなバランス設計を行える投資をしてきた
この2点が挙げられます。
なので、今回のNFTゲームでも、この2つに早めに気づき行動できたところが勝者となるだろうと思います。
では、既存のヒットタイトルではどのようにバランス設計が行われているかを書いていきます。
正確に書くと流石に書きれないので、めっちゃ概要になるのですが、読んで頂くと「あぁ、これが成功体験か…」というのに気づいていただけると思います。
まず、ちゃんとバランス設計が出来ていて、実際にアプリゲームでしっかりとバランス設計を行っているところは、どういう風にバランス設計を行っているのでしょうか?
大体の場合は、バランス設計専門の担当の人がいて、その人がバランス設計や調整を行うことが多いです。
もちろん、ある程度分担もしていたりしますが、実情としては、特定の人の属人的なスキルに依存しているというのが現状です。
ただし、専門の担当の人がいる時点で、かなりバランス設計には投資している方で、ちゃんとヒットを出しているチームなどは、これが成功体験になっています。
一方、そうでないタイトルは専門的な人をアサイン出来ず、なんとかバランス設計っぽいことをしたものの、上手く行かない、という状況を起こしてしまっています。
(※ちなみに、バランス設計専門の人、と書くと1プランナーのイメージを持たれるかもしれませんが、実情としては優秀なディレクターの人が行っている、という状況も多いです)
では、この成功体験がどうマイナスに働くのでしょうか?
NFTゲームでマイナスに働く成功体験とは?
前述の通り、NFTゲームは唯一性、交換性の2つが特徴でしたが、唯一性があるということは、今まで以上に膨大なパラメータを設計し管理する必要があること、そして、交換性があるため、今まで以上にシビアな設計や管理が求められるようになります。
実際に現在のアプリゲームでトレードの仕様が入っているタイトルがほぼないのも、そういう設計をしてバランスを保つことが出来る技術力(に見合うだけの売上とも言えますが)がないからというのが理由の一つになります。
いま属人的で上手くいっているのは、感覚の優れた属人的なスキルでギリギリ管理できる要素に限定して行っているから、という実情が大きいため、NFTゲームでそれをやろうとすると色々と無理が生じる可能性が高いです。
トレード前提のバランス設計というのはかなり難しく、もっと広く言うと金融工学にも近いノウハウが必要なバランス設計になるため、そういった設計は不慣れである上に、量も質もシビアなバランスが求められるので、属人的な感覚だけだと管理しきれなくなって上手く行かなくなるリスクを抱えることになります。
なので、そもそもこれまでの感覚的な管理では上手く行かないので、方法自体も新しいやりかたを取り入れる必要があります。
しかし、今までのやりかたで上手く行っていたところほど、なかなか仕組みを変えられません。そして、もしそれを出来る人がいたとしても、ただでさえ取り合いになっているバランス設計の専門家の中でも出来る人は更に一握りなので、より人材の取り合いが加速して報酬が釣り上がり、採用がさらに難しくなるでしょう。
そして、ただでさえ求められるレベルが高くなっているのに、成功体験の強い会社、つまりヒットタイトルを出しているところは、優秀な人が既存タイトルの担当をしていることが多いので、新しく開発する売れるかわからないチャレンジング案件であるNFTゲームの方に人は割きにくい、という実情もあります。
そのため、「今の段階」では、既存のアプリゲームメーカーは
①現在のヒットタイトルに優秀な人の工数が取られていて、これ以上割けない
②そもそも既存のやり方で上手く行っているので転換が難しい
という2つの成功体験に引っ張られてしまい、NFTゲーム設計では罠にハマるリスクが高いのです。
現に、ソシャゲバブルの時同様、今NFTで成功しているこれらの会社は、まだアプリゲームでの実績がそこまで(全く)ない会社ばかりです。
なので、売上維持はさておき、面白いと思ってもらえるバランス設計が出来ているところがまずは成功している、というのが現状となります。
一方で、先程のAxieの事例のように、やはりまだ継続的に安定して売上を上げ続ける、ということは難しいというのも現状で、ここを早期に克服した会社が、NFTゲームで大きく飛躍し続ける可能性を秘めているという状況です。
一例として、今もランキング上位にある長期ヒットタイトルを開発した方の話をご紹介します。
そのタイトルが出た2011~2013年くらいは、その会社さんはまだ(今に比べるとという意味では)ほぼ無名でしたし、業界的にはバランス設計をしっかり行うという考えが今に比べると遥かに希薄だった時期にも関わらず、
「ゲームバランス設計はかなりこだわって設計していた」
と言うお話を聞きました。実際に、そのバランス設計のおかげで繰り返しプレイするモチベーションにもなっているのは明らかで、おそらく、今のNFTゲームでも、同様の考えを持っている会社が上手くいくのではないかと思われます。
ちなみに、成功体験があると捨てるのは難しいので、成功体験がないところのほうが強いと書いていますが、成功したにもかかわらず成功体験を捨てて新しい技術や仕組みに投資できるところも成功できる可能性が高いです。
成功していないのに成功体験を求めるのはもっとダメ
最後に、もう一つ厄介な成功体験があります。
それは、成功事例病というものです。
これも、ソシャゲバブル時代以降失敗した会社さんに多かったのですが、成功事例というのは基本的に再現性はないものであり、その状況や運、タイミングなどもあるので、真似はできないものであるにも関わらず、売れないところに限って、成功事例の表層を知りたがる傾向がありました。
もちろん、成功した事例自体を分析するのは重要なのですが、大事なのは、根本的な概念としての考え方を身に着け、自タイトルへ応用する力です。NFTゲームは基本的にはまだ未開のジャンルでもあるものの、成功するための重要な概念についてはある程度方向性が見え始めているので、適切な概念に沿って試行錯誤を繰り返すのが成功への一番の近道です。
逆に表層の個別事例ばかり知ろうとして、試行錯誤をしようとしないところは、NFTゲームでもヒットは難しいでしょう。
NFTゲームで必要な設計の方向性
では、本質的に根本的な考え方とはどういうことなのか?についてお話します。
繰り返しになりますが、NFTゲームでのバランス設計で重要なポイントは、
・唯一性 - ユーザーごとに異なる固有の資産を獲得できる
・取引前提 - その資産を取引する前提の設計である
です。これらの機能を最大限活かすためには、
・価格と価値の担保
・リソースバランス
・インセンティブ設計
この3つを緻密に行う必要があります。
価格と価値については、バトルを行うRPGのようなゲームを例にとると、こういうゲームではカードの強さとカードの価格が相関がしっかりとあるのが望ましいのですが、複数の要素が絡み合ってパッと見で何が有用なのかわかりにくい場合は設計や管理が難しくなります。特にNFTゲームでは各リソースが固有の要素を持つ必要があるので、単にインフレするパラメータではなく、何かしら特別な価値をもたせる必要があり、このあたりの制御は非常に難しくなります。
また、価格と価値をうまくバランス取ったとしても、全体としてアイテムなどのリソースの配布量が多すぎたり偏ると、アイテムなどのリソースの価値毀損が加速してしまいます。これも現在のアプリゲームの売り上げが長続きしないことの主要因の一つなのですが、前述の通りNFTゲームでは、トレードがゲームの前提になっている関係上、ゲーム全体としてのリソースの配布等のバランス調整は直接死活問題となります。
その上で、これらのバランスを成り立たせるために、各ユーザーの行動に対して、どういうインセンティブ設計を行うか、というのは、特にPlay to Earnの仕組みを考える上では必須になってきます。
このあたりについては、弊社で実施している「失敗しないNFTゲーム設計」という講義内で説明しているので、更に興味がある場合はそちらの講義で解説させていただきます。
という感じで、このあたり書き始めるとキリがなく、ここでは書ききれませんが、まずはイメージとして上のような方向性でバランス設計や仕組みを考えることが重要になってきます。
そしてこのように、複雑に要素が絡み合う設計が求められるので、ゲームリリース前に、シミュレーションなどを活用して試行錯誤をしておく必要がありますし、その上でバランスの細かいところは、人力ではなくある程度自動で調整できる仕組みが必要になります。
こういった仕組みを取り入れることで、ゲームリリース前の試行錯誤はもちろん、リリース後もバランス設計ミスで炎上したり、売上が全くたたない、いわゆる爆死するような自体を上手く避けつつ、成功事例へと最短距離でつなげていくことが出来るようになります
余談ですが、アプリゲーム開発運用では、前述の通り属人化した感覚に頼るところが多かったので、自社で提供しているゲームバランスロジック設計やバランス自動調整システムなどはあまりニーズがなかったのですが、特に、直近のNFTゲーム関連の引き合いを鑑みるに、こういう技術を活用しようとするニーズが高まっている機運と時代の転換を感じています。
さいごに
かなり長い記事となってしまいましたが、これでもかなり概要や正確性を端折って端的にわかりやすくお伝えさせていただいたつもりです。
この記事を読まれている方は、自社でもNFTゲーム開発を検討している会社さんだと思いますので、自分のところは成功させられるのだろうか?と気になっているのではと思います。
おそらく、この長文の記事をここまで読んでいる以上は、バランス設計に関してのリテラシーは十分にあり、その考えはNFTゲーム時代でも通用するのではないかと考えられます。
(そうじゃなければもう多分この記事の途中で離脱していると思います…)
なので、あとはもう一歩実践まで足を踏み入れることが出来れば、NFTゲーム設計の勝者になる可能性は十分に高いと思います。
とはいえ、現状NFTゲームについては、法整備や仮想通貨購入のハードルなど、現時点ではいくつかハードルがあるため、アプリゲームほどユーザー層がまだ広がっていません。
しかし、技術的な革新や法整備などが進めば、一気に普及するポテンシャルを秘めています。
だからこそ、いま一斉に各社がこの未開の地へ踏み出しています。
そのタイミングでNFTゲームで成功する会社は、繰り返しになりますが、新しい形のバランス設計の適用ができている会社であり、その後も成功し続ける会社も、バランス設計への投資を惜しまない会社であると考えています。
(どういう技術的な面や法整備が整うとNFTゲームの普及が進むかは、また別の記事にて書かせていただきたいと思います。)
まとめ
まとめになりますが、今回は
NFTゲームでは、
・唯一性×トレード
が大きな特徴なので、バランス設計が今まで以上に超重要であること、そしてそのためには、
・新しいバランス設計の仕組みへの適応
・より高度で複雑なバランス設計が可能な体制が必要
の2つが必要であること。
具体的にしっかり考えるべきバランス設計は、
・価格と価値の担保
・リソースバランス
・インセンティブ設計
の3つであり、これら対しては非常に高いレベルでの精密さが求められるので、属人化しているとミスも起こりやすく、成功のための試行錯誤のサイクルも回せなくなってしまうので、仕組みや自動化を活用することが重要である。
というお話をさせていただきました。
更に詳しく知りたい、という方は、こちらのフォームまでご質問やお問い合わせをお願いします!
【お知らせ】
プレアナでは、「数値遊びの創造」で新たな価値を創造すべく、ゲームを中心としたエンタメの面白さの数値化に日々取り組んでいます。
今回、久々に熱が入り、結構長い記事となりましたが、それでもここだけではお伝えできないことがたくさんあり、唯一性×トレードを最大限活かしたゲーム設計手法のあたりについては、「失敗しないNFTゲーム設計」という講義形式でノウハウをお伝えしていますので、この記事の内容に関して更に詳しく聞きたいという方は、是非こちらからお問い合わせください。
また、新しい自動化の形がどういうものか気になっている方は、特許の関係で記事では詳しく書けませんので、是非お問い合わせいただき、NDA締結後にお話させてください。
特に、
・ゲーム体験からの価値×価格のシミュレーション可視化サービス
・リソースバランスの自動調整サービス
のサービスについては、既存のアプリゲームでも有用で、省工数かつ高品質なバランス設計を実現できるサービスになっています。
その他、
・自社でのNFTゲーム開発
・協業でのNFTゲーム開発
なども少しずつ進めており、特に協業での開発パートナー様も募集しております。
これだけ偉そうにバランス設計のお話をしてきましたが、逆を言うと我々はバランス設計周りのところ以外は専門ではないため、例えばゲーム開発で必要なグラフィックや世界観の設計、エンジニアリング技術などは得意としていないため、上手くマッチする会社さんとの協業を探しております!
こんな感じで、「数値遊びの創造」をNFTで実現する各種プロジェクトにも取り組んでいますので、一緒にやってみたい!という方は、ぜひこちらのWantedlyページまでご連絡ください。
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