見出し画像

墓場を抜ける風

20世紀の大作曲家の一人に数えられるセルゲイ・プロコフィエフ(見出し画像右)は、帝政ロシア時代の1891年に現ウクライナのドネツィク州で生まれました。1918年に、革命の騒乱に揺れるロシアを後にして、国外に活動の場を移しています。最初にアメリカ合衆国に渡るのですが、その途中、シベリア鉄道と日本海航路を経由して伝って敦賀湾に上陸し、2カ月ほど日本に滞在して、琵琶湖疏水や祇園、奈良公園などを散策したり、軽井沢や箱根も訪れているそうです。アメリカ合衆国に渡ってからは、サンフランシスコ・パリ・バイエルンの小村、そして再びパリと、拠点を移しながら創作・演奏活動を続けていましたが、祖国を離れて18年経った1936年、モスクワに居を構えることになりました。プロコフィエフの全作品中で特に有名な音楽物語『ピーターと狼』が作曲されたのは、その年のことでした。

プロコフィエフの有名な作品としては、他にバレエ音楽『ロメオとジュリエット』があります。その他、大作を挙げますと、交響曲とオペラが七つずつ、バレエ音楽が八つ、ピアノ協奏曲が五つ、ヴァイオリン協奏曲とチェロ協奏曲が二つずつ、ピアノソナタが九つと、ヴァイオリンソナタが二つ作曲されています。

こちらでは、私が大好きなヴァイオリンソナタ第一番を紹介したいと思います。
第一番のヴァイオリンソナタは、彼の作品中最も憂鬱で、かつ情熱的な作品として知られています。
特に第一楽章はこれ以上ないほど憂鬱でして、憂鬱が形を取ったら、たぶんこんな感じになると言いたくなるような私好みの作品です。
その終結部に聞こえるバイオリンの音階進行を、彼自身が「墓場を吹ける風」と形容したことでも知られています。また、その第一楽章と第三楽章は、彼の葬儀においても演奏されました。

プロコフィエフが亡くなったのは、スターリンが逝去した日と同じでした。
スターリンの死を悼む群衆が赤の広場に詰めかけたため、プロコフィエフの家が赤の広場近くにあったことで、霊柩車の使用許可がおりず、やむなく人の手で遺体を運ぶことになったそうです。そんな事情があって葬儀には参列者が30人ほどしか集まらず、大作曲家にしては極めて寂しいものだったようです。
遺体は、モスクワのノヴォデヴィチ墓地に埋葬されました。
見出し画像の左は、彼のお墓の写真です。
なお、右の写真は、1918年にニューヨークで撮影されたものです。
ちょっと似てますが、〇ーちんではありません。

さて、曲は4つの楽章があってやや長いので、動画では墓場を抜ける風が聴こえる第一楽章の音源だけ使っています。
演奏は私です。
と言っても、私が作成したデータをPCが自動演奏したもの。
でも、DTMではデータの作成は演奏と同義語なので。^^

使ったヴァイオリンは、SWAMという仮想ヴァイオリンです。
シンセサイザーですので当然電子音ですが、ピコピコ鳴るわけじゃなくて、驚くほどリアルなヴァイオリンの音が出る優れもののソフトシンセです。


ここからはDTMの話題になります。

Audio Modelling社のSWAM Solo Stringsが、昨年アップデートしてバージョン2から3になりました。
上のデモ音源は、最新のバージョンの3.50を使っています。

バージョン3になって大きく変わったのは、その外観とUIで、音が画期的に良くなったという評価はあまり聞こえてきませんが、私が感じるのは、重音のシンセ臭さがかなり緩和されたように思います。

外観をアップデートの前後で並べてみました。

左側が新バージョンですが、それより壁紙の子猫たちに目がいきますよね。=^_^=

新バージョンの色使いがおもちゃっぽくなった。^^

もう一つ、ピッツィカートで出現する右手がリアルすぎて怖いくらいだったのが、新バージョンで緩和された。^^

手が超リアルだった旧バージョン
手が半透明の新バージョン

新しい方も、半透明なので安っぽい幽霊みたいですが、下が透けて見えるので、弾く位置が把握しやすくなりました。

以下は、動画のデモ画面の説明です。

画面右上は、DAW(Cakewalk)のピアノロール画面の下部にあるコントロール領域です。ここではエクスプレッション・コントロール(CC11)を表示しています。
SWAMは、エクスプレッション・コントロール(CC11)をうまく使わないとリアルな演奏にならないので、ここは念入りに打ち込むべきところです。
ただ、その労力もバカになりません。というのは、私は画面上の弓の動きを把握しやすくするために、SWAMのジェスチャーモードをバイポーラーにしています。そうするとCC11の中央値(CC値=63)の上下で、CC値と音の強さの関係が逆になりますから、マウスなどで入力(描画)するのは相当の熟練が必要になります。板タブを使ってみたこともあるのですが、音符毎に描画することを考えると、(やったことはありませんが)たぶんアニメを作るくらい手がかかる。^^;
そこで、私はCakewalkに内蔵されているマクロ言語CALを使った自動入力プログラムを自作しました。画面に見えるパターンは、そのプログラムでデータを自動入力したものです。

画面の右下では、楽譜をスライド動画にして、曲と同期させています。
元の楽譜は、IMSLPからダウンロードしたものです。
編者は高名なヴァイオリニストのオイストラフ。
調べてみましたら、オイストラフも、プロコフィエフと同じくウクライナの出身でした。最近よく耳にするオデッサだそうです。

実は、実際の演奏データは、このオイストラフ編の楽譜ではなく、緒方恵先生が校訂された全音版を参照して作成しています。
そちらは動画で使うことができませんので、パブリックドメインのオイストラフ編の楽譜を使ったのですが、運弓やアーティキュレーションの指示が異なるところがありますし、また音符が違っているところもありました。私がたまたま見つけたのは、Bar39の最後の八分音符ですが、どちらかの誤植と思います。誤植はこれ以外にもあるかもしれません。

ですので、動画の楽譜を見ながら聴いて「あれっ!」と思われる方もいらっしゃると思いますが、その点はご留意願います。

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