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自分の能力にプライドを持ってると死ぬ話。

私の経験上、自分の能力にプライドを持ってる人は、自分より才能がある奴にアイデンティティをズタボロにされて轢き殺されます。

轢き殺されるだけならまだマシな方で、コンプレックスを拗らせる人の予後は最悪です。デカすぎるダメージを、他人を見下して発散するのです。


拗らせた人の悲しすぎる生態

例えば、他人の才能に異様に敏感になります。サムネに「初見クリア」とか「理解が速すぎる」などの「~すぎるシリーズ」、「淒」「鋭い」みたいなワードが踊ってたら何がなんでも見ます。釣りと分かっても見ます。

これは、画面の向こうの人間を「でもこいつら社不だしな」「でも俺より学歴低いしな」「こいつらより優れてる奴はいるんだよな」と見下して溜飲を下げる儀式です。

悲しいことに、それをしても自分の能力が上がるわけではないので、その人が自分より優れている事実は変わらないため、さらに傷は深まります。

かさぶたは、痒くても放っておかないと消えません。同じように、コンプレックスも離れないと消えません。しかし、かさぶたは痒みのために剝がしてしまうように、コンプレックスも傷のために近づいてしまうのです。

つまり、より深く刃を挿すことで、傷を相対化しています。
しかし深く挿せば挿すほど大出血。

気を紛らわせるには、もっと大きな傷が必要です。

これで負の感情 - モヤモヤ - が増幅・循環する永久機関ができました。

アンチ活動こそしないけど、Vtuberやストリーマーといった才ある人たちの欠点探しに明け暮れたり、X(Twitter)に常駐して無限論争を展開したり。

果ては架空のキャラクターにまで嫉妬を抱くこともあります。
もはやバカバカしすぎます。自分で傷つきに行く姿は滑稽ですらあります。

これら全てが自覚的である、バケモノが爆誕してしまう。
自分の「能力」にプライドを持つ人間は、こうした危険性があるんですね。


なぜバケモノが爆誕してしまうのか?

そもそも、なぜ人は能力にプライドを持つのでしょうか。「人は生きてるだけで価値がある」という言葉のように、人には信じられる素朴な愛があったはずです。

私が考えたのは、本能と原体験です。

本能とは、社会動物としてのヒトは、他者に舐められる(=弱者に転落する)ことを極端に嫌う習性があること。原体験とは、多感な時期に競争に晒されることで、愛情不足で育ち、常に敗北や悪意の不安に苛まれ、本能を強化する役割を果たしたこと。

たとえば、詐欺師にだまされ続けると破産するように、舐められる様な弱者は死ぬしかありません。今は社会のセーフティが何重にも守ってくれますが、かつてはそんなものありません。

弱肉強食は自然の理であり、認知機能を向上させ、社会を形成したホモサピエンスにとっては、社会における立ち位置(=他者からどう見られてるか)が最大の関心事になりました。

逆に、関心を持たない個体は殺されて淘汰されていった。

原体験も重要です。厳しい競争社会に生きる私たちは、小さいころから比較されることが当たり前だった。そうでなくとも、青年期に受験や就職といったビッグイベントが連なることが、無償の愛情を受け取る機会の損失による競争マインドの人格形成を通じて、本能を強化した側面があります。

こうして「舐められたくない」という切実な要求から来る防衛反応としての「バケモノ」が爆誕する訳です。

愛情(=安心)を手に入れるには、競争で勝つしかない。
競争で勝つには、強くなるしかない。
そうでなければ、舐められて、競争に負けた弱者として殺される。

by 私


では私たちはどうすればいいのか?

こう言うと、「プライドなんか捨てちまえ」と言い出す人が出てくるが、
ハッキリ言ってそういう人は異常であり、ヒトとしての本能がもともと欠落しているに過ぎないです。

最悪なことに、こうした欠落マンは大抵、能力も高かったりするんですね。

なので全く参考にならない。

私は、プライドクライシスの対抗策は、むしろプライドを強化することだと考えます。そしてプライドの根拠を「能力」ではなく「感情」に移してく。

有能と無能とか高IQと境界知能とかスポーツの上手か下手かとか高学歴か低学歴かとか、無数のフレーミングの優劣比較ではなく、「自分の快・不快で物事を判断する」「やってて楽しいことを全力でやる自分を愛する」「能力は無いかもしれないけど、いま楽しいし」「自分の感情にウソついたこと無いんだよな」を誇りにしていく。

難しいかもしれないけど、インターネットの発達などで遠くの人間も可視化された現代で、能力に恃んだアイデンティティは壊れやすいため、こうした考え方を訓練していくのが必要ではないか、と思うなど。

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