秋桜子の気持ちを代弁する
秋桜子にとって余計なお世話かもしれないし、見当違いかもしれないけど、勝手に秋桜子の気持ちを代弁するし、秋桜子になりきってアラーキーに物申す。
17歳の秋桜子は、間違いなくアラーキーが大好きだった。
2人でいる時は、自分のものになった気がした。
自分よりはるかに年上で、自分が持っていない何もかも全て持っていて、自信に満ちているアラーキーが大好きだった。
手に届かない場所にいる彼に、別の女の人がいることだって知っていた。
その女の人達は、自分より女らしくて魅力的で何より色気がすごかった。
だけど、その女達はおばさんだ。
おばさんは持ってない若さを私は持ってる。
アラーキーだって、若さに魅了されて私のことを好きになってくれてるはずだ。
私は若くてよかった。
若くて少女であることを武器にしているくせに、
どうやったら、女として見てもらえるのか考えてしまう。
どうやったら、子供扱いされないんだろう。
シャネルの真紅のリップをくれた。
自分ではまだ買ったことないブランドのリップ。
大人の女になれた気がした。
一緒に居れない時は、リップを塗って彼を思い出した。
一緒に居れなくても平気だった。
私はリップを貰ったし、リップをつけて彼を思い出すことが出来るから。
私はアラーキーに抱かれるのが好きだった。
若い体に夢中になってるおじさんが好きだった。
若いからだが長く生きて古くなったからだと比較されて、自分に自信が持てた。
若いことだけが自信だったから、大人になるにつれて不安になっていく。
もう必要とされないんじゃないかって。
今も変わらず彼は、色んな女と関わりがある。
そんな彼の自由さが好きだし、私だけをと願っても叶うわけが無いのもわかってる。
そんな私にも彼氏ができた。
きっぱり忘れるために、彼氏とロンドンに行くことを伝えた。
私を恋しがって欲しくてそうしたのに
自信満々に
「どうせすぐ帰ってくるよ」
と笑顔だった。
なんでこの人は、そんなに自信満々なのか。
私が離れられないとでも思ってるんだろうかと腹が立つ。
1年後。
彼の予想は的中。
帰ってきてしまった。
こっそり帰ってきても良かったんだけど、やっぱり彼のもとに帰りたかった。
早く会いたかった。
帰ってきたことを歓迎してくれて、ご飯に連れていってくれた。いつだって来るもの拒まず、去るもの追わず。
来ないでと言われたら楽なのに。
行かないでと言われたら嬉しいのに。
どちらも言ってもらえない。
欲してもらおうと駆け引きしても
駆け引きに応じてもらえない。
結局、私は駆け引きできずに彼を欲してしまう。
でももうなんか違う気がする。
私が欲しても欲しても、私のものにならない。
欲するほど遠くに感じる。
適当な言葉、その場しのぎの言葉で誤魔化される。
腹が立つ。
もういいや。
そう思って会った最後の日の写真。
その写真に
「Aに向けての愛情はそこにはなかった」
なんて腹が立つ言葉をつけて本を締めくくってた。
腹が立つ
向けられていた愛情に気づいていたくせに
たくさんたくさん愛したのに
本当の意味での愛を私にくれなくて
愛を向けられなくなったら
「そこに愛情はなかった」
なんて言葉を残して、私の愛が足りなかったみたいに言う。
ただ、単純に好きだったのに。
でも好きがよく分からない。
年上を好きになるのは、理由をつけにくい。
頼れそうだから。
年上でもだらけた人はかなりいる。
年上の独特の雰囲気が好きだから。
そんなの好きの妄想に過ぎない。
ちゃんと愛してくれそうだから。
人を愛することほど根拠の無いものは無い。
多分年上に恋してしまう時は、好きに妄想を広げてるだけ。
恋に恋してる。
おじさんの考えてる事は分からない。
でも、本当に好きだった。
これから先、何かのきっかけで彼の元に戻ってしまいそうだし、きっと彼もそれを拒まない。
だってそういう人だから。
ずっと彼に泳がされてる気がする。
これからもずっと彼の近くにいられる自信はある。
そういうよくわかんない関係だから。
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