マリン靴と足

婦人靴製作の注意点まとめ

これからパンプスを自作したい人や婦人靴を作る男性の参考になれば、とデザイナー視点で履き心地を重視した婦人靴製作の注意点を綴ります。


木型ももちろん重要。
でも履きやすい婦人靴製作には木型だけでなく、デザインや仕様・素材選定もとても重要です!



◇ デザインによって同じ木型でも履き心地が変わってくる

同じ木型でも乗せるデザインによって履き心地は全く変わってきます。
お客様にモカを作り、気に入ってもらえた木型のバリエーションとして、パンプスを作ると足入れは全く別物になります。


紳士靴のようにある一定の深さがあるのではなく、婦人靴はデザインも多様でアッパーの深さにバリエーションがあります。
モカならモカ木型、浅いパンプスなら浅いパンプス用の木型と製作時に決める必要があります。



◇ 足をどこで留めるか

パンプスやサンダルは「どこで足を留めるか」がとても重要です。
甲部分にデザインがなく、足を留める場所が少ない靴は足が靴の中で前に滑り、指や前足部にギュッと負担がかかり痛みが生じます。


ドラッグストアではこの痛みを解消するグッズがたくさん売っています。


指又が見えるぐらいに浅くて華奢な靴は美しいけれど、履くには辛い靴が多いです。
足が前に滑るのを食い止めるために靴内で踏ん張り鷲爪指になったり、トゥの形状に足が固定されて外反母趾に発展することもあります。

鷲爪趾 - Google 検索www.google.com

木型が完璧でもデザインによっては木型の良さを殺すこともあります。


足をどこで留め、前すべりがしないように設計するか。
これは履きやすい婦人靴を作る上でも、履く人の健康を考えた上でもとても大切です。




◇ 浅いデザインはカットラインが難しい

木型にデザインをおこす時には指股が見えそうな浅いカットラインはきれいでパンプスの見た目として完成度も高いです。
でも、浅いデザインは足の留まりはもちろん、骨に当たらないカットラインがとても難しいです。


歩行時の足を蹴り出す時にこの中足骨骨頭部分にラインがきている場合、歩く度に痛みが生じ、水ぶくれなどに発展する場合もあります。
浅いデザインは高い確率で骨の上にラインがくるので、おしゃれ靴と割り切ってラインを重視するか、履き心地を重視するか、製作時に確認してください。

ちなみに深いデザイン=もっさりした靴、になるのではなく、デザインでゆったりした靴もスマートに見えるように工夫はできますよ。



◇ 素材や仕様が大事

紳士靴の素材に比べ、婦人靴の素材は柔らかい素材や仕様が多いです。
揉み込んだ柔らかいステア素材や裏をスポンジやシルキー素材にして足当たりをよくしたり、ミセスシューズにはギャザーをいれ足入れをふんわりさせたデザインも多いです。

かっちりとさせた見た目でも裏の仕様で足当たりを柔らかく工夫したりします。
裏の仕様でも履き心地はかなり変化します。



◇ 柔らかすぎずに適切な箇所で屈曲すること

前項と被りますが、底材が適切な部分で屈曲する柔らかさが重要です。
パンプスはメンズシューズに比べて靴内の余裕とアッパーの留まりが少ないため、歩行に合わせてちゃんとMP関節で屈曲する底材をつけます。
屈曲しない硬い底材の場合は、歩くとパカパカ抜けてしまう靴になります。


たまにシャンクなしのグニャグニャの靴を見かけますが、個人的にはオススメしません。
適切な箇所で屈曲しつつ、踵はブレない設計が大事です。




◇ まずは自分サイズでパンプスを作り履いてみてほしい

この動画、ほんとに素晴らしい!
足に合わないヒール靴履いた時のツラミがギュッと凝縮されてる!

・ 指が圧縮される
・ 前足部に圧がかかって辛い
・ 指に水ぶくれができる

これ、ヒールパンプス履いたことある女性ならほぼ全員が経験あることばかりじゃないかな?

私が以前勤めていたオーダー婦人靴の男性社長は自分サイズのヒール靴を作り、履いて社内を歩き回っていました。
パンプスの痛みに足の柔軟度や性別は関係ない!
実感するからこそ、改善点は見つけることができると思います。


もし自身で靴が作れるのであれば、男性でもパンプスを自分サイズで作り検証してみてください。
きっと色々改善点が見つかると思いますよ!


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