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Story - コトに価値を見出す

タイトル「ストーリー」とはいえ、RicさんがInstagramをはじめました!というお知らせではありません。

「コト」というワードにフォーカスした回です。


「コト消費」

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「コト消費」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

Wikipedia先生によるとこんな感じ。

「コト消費」
一般的な物品を購入する「モノ消費」に対し、「事」(やる事・する事、出来事=出来る事)つまり「体験」にお金を使う消費行為のことで、特に非日常的(アクティブ)な体験が伴う経済活動を指す。

要は「モノ」を買うことではなく、「体験」に価値を見出す消費という考え方のこと。
例えば、映画鑑賞や音楽ライブへの参加を思い浮かべてみるとわかりやすいです。Blu-rayで見れば済むようなことをなぜわざわざ現地に行って、見て体験するのかと言えば、その空間でしか体感できない唯一無二の体験をするためのはず。

その他にも、スカイダイビングやらバンジージャンプにお金を払うのは体験に投資をする「コト消費」の典型例と言えます。

「コト」の範囲は幅広いですね。


とはいえ今回は勝手に、この「コト」という言葉の概念を広く捉えてみることにします。

体験の意味での「コト消費」だけではなく、物語の意味での「コト」も重視されるようになってきているのではないだろうかというおはなし。


…何を言ってるんだ?と言われそうですが、もう少し聞いてください(笑)

世の中に「モノ」が溢れ、1,000円も出せば大抵のものは買い揃えられるようになった。家具や家電も陳腐化が進み、それなりの製品がそれなりの価格で買えるようになった。

「コスパの良いモノ」にそこまでの価値が生まれなくなった現代。


「価格」が高いことを理解してもらうためには、コト、すなわち「Story」を伝えることに大きな意味が生まれる時代になってきているのではないでしょうか。

という、おはなしが今回のテーマです。


ゆかりさん

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「ゆか里」というお菓子があります。読み方は「ゆかり」(写真〔1〕)

有名なふりかけとは別物です。シソの味はしません。
なかなか小さい形をしたお菓子で一見すると金平糖のようですが、実際は「蜜をたっぷりかけたあられ」で、販売価格は一袋数百円。

製法は、熱した窯に蜜をかけていくといくという、金平糖に近い製法ながらも実際の中身は「あられ」である。
お湯を入れた茶碗に入れるとはじめは沈んでいて時間が立つと浮いてくる…と、いろいろまあ独自性の高い商品。

だけど正直、いまいちピンとこない。パッケージも"昔のお菓子"感が…

はたからみても、よくわからない製品ときっと言わざるを得ないでしょう。

売り場も縮小し、近年は後継者不足に悩まされてきたとのこと。

新たなアプローチ

そんななか。このお菓子を地元のクリエイターグループ「hickory03travelers」が、単なる「モノ」ではなく、様々な「コト」を含めたリブランディングに乗り出しました。

商品名は以前の「ゆか里(ゆかり)」改め、「うきほし」に。

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(画像:公式ホームページより〔2〕)

パッケージも、現在風で可愛らしいデザインに生まれ変わりました。さらにこれまでやってこなかった味のミックスパッケージでの販売に。
シンボルの白鳥は新潟をイメージ。

さらに、

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「浮かべて楽しむかわいいお菓子」といった、いつも食べているひとにとってはあたりまえだった行為を、楽しみ方(まさに「コト」)として提案。
これまでの単なるお菓子という存在に、さまざまな付加価値を加えました。

その結果、多くの人の目に触れ「うきほし」の製造には後継ぎが。

現在、日本中に販売をしてくれる取引先の店舗も多く、特別な製法を持ったお菓子をこれからも作り続けることが出来るようになりました。

「うきほし」のサイトはこちら!→https://ukihoshi.dino.vc/




…という、この「うきほし」にまつわる物語を知るのと知らないのでは持つ印象も全く違うのではないでしょうか?



「うきほし」の製品を買っても「うきほし」の製法やこれまでの物語を盛り込んだ小さなリーフレットがついてきます。

こんな感じで。

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いいモノをつくるだけでは…

日本中にも高いけど良いものや、知られてないけど良いものはたくさん溢れている。反面、同じようなものだけど「安いもの」も、やまほど溢れる時代です。単に良いものを作って、売るだけでは生き残れない。かといって、ただネット通販をすれば良いといわけでもないでしょう。

コンテンツと同じように、製品も同じような物があふれているからです。

無印商品みたいな製品は、DAISOにもいろいろ売っている。
それでも「無印良品」が生活雑貨から衣料品まで他を寄せ付けない強みを持っているのはなぜでしょうか。



DAISOの価値は、まさしく価格ですよね。

対して、無印良品の製品には、生活のシーンを想定したStory商品が生まれるに至ったStoryが付されることが多いですね。そこに魅力を感じている消費者も多いのではないでしょうか。

無印良品の製品は、無印ブランドやデザイン力の強さもあるとはいえ、 Story を伝えることでも価値を生み出しているといえます。


もう少し考えてみましょう。
仮に、どこかに10,000円の食器があったとして、普通に考えれば間違いなく高い。

でも、その食器はすばらしく手間暇がかかっている品だと知ったら?
質の良い原材料を使っていると知ったら?

単に売るだけではなく、それをしっかりと人々に伝えることで値段を超えた全く違う価値が生まれてくるはずです。


モノが溢れ、必ずしもこの製品でなくても…があふれる現代。

どういった「物語」があって生まれたモノなのか。

どういった「良さ」を持ったモノなのか。

どういう「楽しみ方」を持ったモノなのか。


単なるモノではなく、消費者に コト、すなわち「Story」として訴えかけていくことによって、商品の良さ、すばらしさを多くの人に伝えていくことができるのではないでしょうか。



あとがき

この、モノにまつわる「Story」を伝える手法は、チェーンではない中規模雑貨店などでよく観られる手法。
「日本のよいモノ、使ってほしいモノ」を集めて販売するようなときにPOPやリーフレットで伝えることで、値段の高さのワケや良さを消費者に訴えかけることのできるようになります。

また、地場産品のブランドや広告、モノにまつわる物語などに興味があると考えている人におすすめの雑誌が「ソトコト」

キャッチコピーは「未来をつくるSDGsマガジン」

とはいえ、そんなに堅苦しい内容ではなく、地域を楽しくするアイデアや取り組みが詰まっています。雑誌自体も分厚いですし、読み応えがあって面白いですよ。
手にとってみると、こんなことを知りたかった!と、ビビッと来る学生もきっといるはずです。大学の図書館でも読めますよ。

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ちなみに、Webマガジンでもいろんな記事が読めます。
https://sotokoto-online.jp/


[写真出所]
(写真〔1〕)https://www.asahi.com/articles/DA3S13201925.html より
(写真〔2〕)https://ukihoshi.dino.vc/wf/story/16802597 より

[参考]
新潟の「ゆか里」を、全国の「浮き星」に。『hickory03travelers』の仕事。 - ソトコト  https://sotokoto-online.jp/842
変わらぬ味、変えた装い、大ヒット 新潟の菓子「ゆか里」→「浮き星」SNSで注目 - 朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/DA3S13201925.html
浮き星 ukihoshi https://ukihoshi.dino.vc/

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