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“HEY JUDE” IN CZECH


「HEY JUDE」。
言わずと知れた、ビートルズの定番ナンバー。
2012年、ロンドン五輪の開会式でもポール・マッカートニーが歌いました。この歌はポールがジョン・レノンの息子のためにかいた曲です。

しかし、東欧の人々にとっては特別な意味のある曲なのです。

1968年1月、社会主義国チェコスロヴァキアで爆発的な民主化運動が巻き起りました。いわゆる「プラハの春」です。
大統領が交代し、新たに共産党第一書記に就任したドプチェクは、報道と言論の自由、議会の尊重、国民の外国旅行の自由などの、民主化・自由化政策を積極的に推進しました。

このとき民主化運動の象徴となったのが、そのころ発表された
「HEY JUDE」の曲に、自由と平和を求める内容のチェコ語の歌詞をつけたものでした。

この歌は当時アイドル歌手だったマルタ・クビショバが歌い大ヒット。民主化を求める人々によって集会などの場で盛んに歌われました。
しかしすぐに発禁処分となり、ラジオなどで流すことも禁じられました。

その年の夏、ソ連率いるワルシャワ条約機構軍がチェコに軍事介入してドプチェクら首脳陣をソ連に連行。抵抗を続けた市民も、ついにソ連に屈服し、
チェコの自由化は頓挫したのです。

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それから21年後の1989年、ベルリンの壁崩壊と前後して、一連の東欧革命が起こりました。
チェコスロヴァキアの「ビロード革命」では今度こそ民主化を、という願いとともに「HEY JUDE」が革命歌として復活。
ついに共産党政権は崩壊し、革命は“ビロード”のように滑らかに成就したのでした。

民主化達成後に、是非ホンモノの歌声が聞きたい、と若者たちにせがまれたマルタ・クビショバは、発売直後に歌うことを禁じられたため歌詞を覚えておらず、逆に若者たちが歌うのを聞いて歌詞を思い出したとか。

いまもチェコとスロヴァキアの人々にとって、あのメロディーは自由を勝ち取るための戦いの記憶なのです。


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