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ひと足先に大人になった中学の同級生と、17で再会したのは偶然だった。好きになりすぎて怖…

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ひと足先に大人になった中学の同級生と、17で再会したのは偶然だった。好きになりすぎて怖くなって、別の人と結婚した。なのに離れられないのはどうしてか。長い長いいきさつを整理するために書く。

最近の記事

まるで、というかまさに

着いたのは温泉旅館だった。 オフシーズンだし平日だからお客さんはほとんどいない。 着いて早々、もうけっこうな時間だったので部屋でご飯を食べた。 とてもおいしかった。こんないいとこ、誰に教えてもらったの、と聞きそうになってやめた。 話しをしながら、Nはときどきじっと私をみる。老けたな、とか思ってるのかな。まあ、老けたよな。 私は仕事の話しをする。最近の悩みはもっぱら、若者のことだ。なんか話し通じなくてさ、と言うと、ふーん、と口を挟むこともなく、でもたまに私の顔をみてニッと笑

    • 山梨に

      久しぶりにNに会った。 Nは15日間の東京の仕事が終わって、私は3ヶ月に一回くる締め切りが終わって、お互いの「一段落」が重なるのは一年のうちこの時期だけだ。 もう祝って嬉しい年でもないけど、お互い誕生日が近い時期でもある。 前に会ったのはいつだったか、いつもは「たまたま」じゃないと会うことにはならない。 電話の声を聞いていると、会いたくてたまらなくなるけど、そんなことは絶対言わない。ズルズルと日常のなかにNとの関係が入ってきたら、私はあっという間に崩れてしまう。そうならない

      • はじまり

        どうして今でもNが、私との関係を続けているのかわからない。 私は家族に対してもNに対しても不誠実だ。 40代になって、からだも衰えてきたし、化粧をしても、化粧を落としても、若いころのようにはいかない。 関係を公にできない以上、絶対にまわりに言いふらさない私が都合がいいのかもしれない。そんなことを思う私は嫌な奴だ。 なんでだかNとは離れられない、でもずっと一緒にはいられない、と気が付いたときには、もう遅かった。Nにだけは抱いてはいけない、自分だけをみてほしい、自分だけのも

        • 付き合ってない

          Jさんはその後数回うちに来て、泊まっていった。 ビールを飲んで、安いワインを飲んで、キスしてセックスして、寝て、起きて駅前のパン屋で朝ご飯を食べて別れる。 でも付き合ってはいない。 好きだとか、付き合おうとか、そういうのはなかった。 いやあったか。あったけどはぐらかしたのだ、私が。彼女になり、彼氏になってもらうのがめんどうだった。Jさんのことは好きだけど、独占欲はなかった。ひょうひょうとして、とらえどころがなく、学生バイトから好かれているJさんが、たまにうちにきて、私のこと

        まるで、というかまさに

          上書きしたい

          あの淡路島を上書きしたいと思っていたんだな、といま思えばわかる。 まったく不本意な初体験、でも誰が悪いでもなく自分が悪いあの思い出を、早く上書きしたかったのだ。 それが、大好きな彼氏と、とかでないのが私のあほなところだと思う。 まずくないです、といった私の目を見てJさんは、彼氏いないの?と聞いた。 みんなそう聞くな、いやそう聞いたのはだれだっけ、、、 いないです、と答えて、急激に我に返った私は、せっかく楽しかったのに雰囲気をぶち壊してすみません、、とJさんに謝った。 Jさ

          上書きしたい

          台風の日

          強い風、雨も降ってきて、めちゃくちゃなのに、その帰り道はとてつもなく楽しかった。 私の住むマンションまでついたとき、「タオルを貸すから」と言った私は、帰り道の興奮状態から抜けない状態だったのだと思う。Jさんも拒まず、自然に部屋にあがった。 Jさんにタオルを貸し、私は風呂場で着替えた。そこではじめて、これはちょっとやばい状態なのではないか、ということに気づいた。男の人を部屋にあげ、そしていま私は部屋着に着替えている。 まあでもJさんって、あんまり性欲とかなさそう、と自分を安

          台風の日

          西日が入る窓

          それほど、いや全然好きじゃないHくんと、深く考えずに付き合ったことを後悔した私は、淡路島日帰りのつもりが一泊旅行から帰って間もなくHくんにお別れを告げた。 俺何か悪いことした?と聞くHくんに、いや悪いのは私…と、ひたすら別れたいことだけを伝え、呆れられて無事お友達に戻ったのだった。 大学3年になる直前に、父が東京に戻ることになった。関西が肌に合わない母は喜んで荷造りをはじめ、私はもう、ついていくという選択肢はなく、棚ぼたのような1人暮らしが始まった。 親が決めたアパートは

          西日が入る窓

          初めては、それほど好きでもない人と

          大学に入って初めて「お付き合い」をしたのは、友達の付き合いで入ってしまったテニスサークルにいた男の子だった。 テニスを見るのは好きだけど、自分でやりたいわけじゃない。着替える場所がないとか、授業にもラケットを持って学内を移動しないといけないとかも嫌だった。 そんなんなので、付き添った友達がサークルになじみ始めると、スーッと行かなくなったのだけど、同じようにだれかの付き合いで来ていたらしく、いつの間にかサークルには顔を出さなくなっていたのが、Hくんだった。 たまたま学食で

          初めては、それほど好きでもない人と

          違う世界の

          京都で再会したNとキスをしたのは、どこの公園だったか。数年前まではグーグルマップで確認できたのに、今は公園がなくなってしまったのか、私の記憶があやふやになったせいか、もうわからない。 なんでそういう展開になったのか。 前と同じドトールに行こうとして、せっかく京都にいるのに、外に出ないのもったいないよね、という話になって、それで外を歩き始めた。 だんだん暗くなってくる時間帯で、観光客や、地元の人や、いろんな人とすれ違いながら、私とNはどう見えてるかなと、そんなことを考えていた

          違う世界の

          長い長い言い訳のはじまり

          そうだ、これは不倫の言い訳だ。 心から好きになり、離れても離れられない人は、結婚はもちろん、一緒に住むことも難しい人だった。 すぐそこに、いつもそばにいられる人がいいと思ってしまったのは、弱っていた時だった。夫は全部知っていたはずだ。 私が他の誰かを思い、年に数回しか会えないその人とつながりながら、その場の空気に流されて、それほど好きじゃない男たちと付き合ってきたことを知っていた。 高校2年の終わり、Nとアドレスを交換して、1,2度はメールをしたかもしれない。でもそれだけ

          長い長い言い訳のはじまり

          再会

          その日私は、あの町でできた友達のK子から、大阪に遊びに行きたいといわれて、USJに行った。その帰り、京都駅まで見送った。そのころ、京都からでないと、あの町に行く特急電車が出ていなかったのだ。 京都駅の中の土産物屋の中で、彼女が買い物をするのに付き合っていたときだった。「Nだ!」とK子が突然言った。 K子が見たほうを振り返ると、そこにNがいた。背は高くなっていたし、細い手足はがっしりして、顔つきは大人っぽくなっていたけれど、あのきれいな顔立ちはそのままで、たしかにNだった。

          大阪へ

          大阪の高校の受験日は、卒業式の日だった。 卒業式の前の週、クラスだけの卒業式を開いてくれた。 私と、Nの卒業式だった。 私が大阪の高校を受験すると担任がクラスメイトに報告した日、Nは高校にはいかず、とある伝統芸能の一門に裏方として弟子入りするため、卒業式の前日にこの街を離れると発表された。 あ、東京ってそういうことだったのか、と思った。 優しいクラスメイトたちは、みんなで卒業式に出られないことを悲しんでくれて、私もその雰囲気の中で素直に、さびしい、と思った。だけど、この

          大阪へ

          学校行こう

          「ネコだ、ネコ好き?」 と近づいてきたのも覚えてる。 学校帰りだったのか、制服だったNに、私はネコの質問には答えずに、「家、近いの?」と聞いた。近い、と言ってNは、ネコをなでた。 なんで学校来ないのとか、私がめんどくさいと思う質問はなにもされなくて、その代わりに、「東京ってどんなとこ?」と聞かれた。 なんて答えたんだったかな。東京には本屋とCDショップがある、でもここにはない、みたいなことを言った気がする。そして、何言ってんだろ…と後悔した気がする。 「なんで?東京行きた

          学校行こう

          東京から来た転校生

          中学の同級生だったNは、高校にはいかずに東京に拠点のある某所に弟子入りした。 私は中学2年であの田舎の学校に転校して、Nの隣の席になった。 中学生男子なんて、女子とはまともにしゃべらないものだと思ってたけど、Nは違った。 とりあえず目立たないようにしようと思っていた私に、Nが毎日毎日べったり話しかけてくれるものだから、私は転校早々女子から距離を置かれた。 Nは、東京の中学校でわりとあか抜けた男の子たちを見慣れていた私から見ても、かなり美形だった。女子にはNはみんなのもの

          東京から来た転校生

          書いて消化したい

          結婚しないほうがよかったのかもしれない。 好きになれると思ったけどやっぱりだめだ。 家族のために働く気がない男はだめだ。「稼いでるほうが払えばいいだろ」なんていう男はだめだったんだ最初から。「結婚祝いに親がいくらくれるか楽しみ」なんていう男はだめだ。そういうのはずっと変わらない。子どもができても変わらない。40代になっても変わらない。 私がばかだった。違和感があったときにやめればよかったんだ。いくら都合のいい男でも優しい男でも、もっと考えるべきだった。やめるべきだった。そう

          書いて消化したい