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「闇でもある」。だから引き金を引く 〜ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA感想

「ケンゴ、あなたは光であり、そして——」
「あなたは光であり、人である」
「——そして闇でもあるんだ」

 かねてから折りに触れて、僕はこれまでの二十余年、ライダーと戦隊(東映特撮)にしかしっかりと触れてこず、ウルトラ(円谷特撮)にしっかりコミットしたのはここ1、2年だということを書いてきました。

 思い起こせば2016年の『オーブ』は放送当時またはその近辺で視聴してはいましたが、熱の入り方は半端なままで終わっており。
 2020年末ちょうど終わりを迎えようとしていた『ウルトラマンZ』に心惹かれ、後追いで一気見してドハマりし、その後いわゆるニュージェネレーションシリーズ(2010年代以降のウルトラ作品)を中心に見れるものを見まくってきた2021年でした。

 そんな中、新シリーズが開始するとの報せ。
 その名も『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』。
 僕が生まれて初めて見た特撮作品『救急戦隊ゴーゴーファイブ』が放映されたそのさらに3年前、1996年に放映されていた『ウルトラマンティガ』の25周年を記念した作品とのこと。

 これが僕にとって人生で初めての、リアルタイムで追うことのできたウルトラマンとなったのでした。
 27年間生きてきて、22年間特撮ファンをやってきて、まさか今になってなおそういう新しい体験ができるとは思っておらず、これは本当に嬉しい出来事でした。

 そして、その『トリガー』が先日1月22日に最終回を迎えました。
 今日はその感想です。
 平然とネタバレしていくと思いますので、あらかじめご了承ください。

結論:超おもしろかった

 長い文章を書くときはまず最初に結論を提示しろって大学の人が言ってた。

 ウルトラマンの基本構造である「正体不明の正義の巨人」「怪獣」「怪獣を迎撃する組織」のトライアングルの、まさに王道形という感じ。
『タイガ』なんかはこれが「主人公が純度100%の人間」「組織が民間の警備会社」などの特殊性を持っていましたが、『トリガー』はもうまさにそうだよね〜これが古くから親しまれてるフォーマットだよね〜とうなずけるもの(この直前に初代ウルトラマンを完走していたことも相まって)。

 ライダーや戦隊、つまり4クール1年ものの特撮ばかり見てきた身としては、2クールで終わるリアタイ特撮体験というのがあまり想像できなくて、ああ意外と展開が早めなんだなと思うことも間々ありましたが、それでも無理があるというか、どこかが軋んでいるような感じはしませんでした。
 底抜けスマイル野郎のケンゴをはじめ、イマドキっぽく見えてめちゃ芯の強いユナ、無愛想からの実は真正ヒロインだったアキト、タツミ隊長をはじめとするGUTS-SELECTクルー、そしてイグニスに至るまで誰一人漏らさず魅力的で不可欠なキャラクターバランスがとってもとってもよかった(語彙力急低下)。

 NEW GENERATION TIGAと銘打っているだけに、ティガ世界とは完全に一線を画すものとばかり勝手に思っていましたが、会長がティガ世界からの漂流者という繋ぎ方。これはなんというかすごくニュージェネっぽいというか、ニュージェネの歴史の中で確立されてきたマルチバース概念をうまく使った、今だからこその交わり方って気がします。会長の操縦シーンマジでリアルで格好良かったあ……。

 ティガファンのお気持ちはいざ知らずですが、会長に宿っていた「光」からティガが召喚された流れはとても美しかったと思います。会長も『ティガ』最終回で声援を送っていた=光になった人の一人だった……?
 結局ティガにおぶってもらってるじゃねえかという意見も見かけましたが、本当におぶってもらうつもりならティガは最終回まで後生大事にとってあったはず。あのあたりの時期でティガとの交わりを経験したうえでさらに話が進んでいく(もっと言えばその前のゼットとの共演で並行世界の存在を定義していたことがここに効いている)ことはとても筋の通る運ばれ方だったと僕は思っています。

 僕の頭が弱いだけならいいんですが、結局のところトリガーという存在とケンゴという存在の関係性というか、お互いがお互いにとってどういうものなのか、については判然としない部分が残ってしまいました。
 単純にトリガー=ケンゴではないんでしょうか?ケンゴは自身が光の化身だったんだと覚醒していきますが、それはトリガーが元々闇の存在だったところに入り込んでいって同化したということで、だからカルミラはトリガーを欲してもケンゴは憎いと、そういうことなんでしょうか?でも闇トリガーと拳で語り合ったのは現代から飛ばされた現代のケンゴだったわけで、そこから三千万年後の現代に繋がるとなるとケンゴの時系列だけグルグルしてない?などなど………。
 わかりやすく説明してくれる方をお探ししています。

NEW GENERATION TIGA

 前述の通り、僕がウルトラに触れてからはまだ日が浅いです。
 そしてV6の長野博さんが主役として起用された都合上、『ティガ』のウェブ配信はそれまでほぼゼロと言っていいほど行われていませんでした。
 そのため、僕は『ティガ』を知らない、知り得ない状態で『トリガー』を見始め、そして最後まで来てしまいました。最低限の予備知識として、あらすじやざっくりとした相関図、ティガのスペックなんかは把握していましたが……。
 現在では円谷公式サブスク「TSUBURAYA IMAGINATION」で少しずつ配信が解禁されていますが、見始めたら駆け抜けてしまうだろう、駆け抜けてしまったら次の配信が待ちきれないだろうと思い、今も僕は全話解禁されるまで手をつけられずにいます。

 このため、本記事で『ティガ』と『トリガー』の関係性を克明に分析することはできません。僕がその立場にないからです。

 坂本浩一監督も言葉選びに苦悩していたように、『トリガー』は『ティガ』のリメイクでもなければリブート、リビルド、リアレンジ……そのどれとも異なる作品です。"NEW GENERATION TIGA"、これに尽きるのです。
 それは『トリガー』だけを見た僕にも理解できることでした。
 超古代の光という舞台設定やテーマ性、タイプチェンジや巨人のバリエーション、その他随所にある映像的オマージュなどなど、『ティガ』に寄せている部分や『ティガ』を下地にして新たに構築されたもので『トリガー』の基本構造は成り立っているように思います。

 では『トリガー』とはなんだったのか?
 Twitter実況を見ると、ティガ原理主義(過激派)のような方も多くいて、トリガーを受け入れられない声というのも多く飛び交っているのを感じていました(悲しい気持ちになるようなPostもだいぶ多く散見されました)。
 ただ、そこに投じられたひとつの結論として、最終回のケンゴのセリフ「僕は人であり、光であり、そして闇でもあるんだ」というのがあるんだと思いました。

 見てもいないくせに恐縮ですが、『ティガ』では「人は誰もが光になれるんだ」という言葉で最終回が彩られました。
 この点『トリガー』は上記のような新解釈を提示。今の社会性とかそういうのもあるし、シリーズを通して長い間続いてきた「光と闇の二元論」に一石を投じたウルトラマントレギアという存在も相まってか、自分の中にある光を抱きしめることはもちろん、でも闇もあるよねということを認め、受け入れ、否定したり拒絶したりせずに共存して生きていく。ある意味これまたすごく今っぽいというか。
『ティガ』をただなぞるだけの作品なら、先のティガ原理主義者たちの言うように『トリガー』に価値はないのかもしれません。ただ、こういうような「今なりの別解答」「今ゆえの別解釈」を焼き直すことができたのは、これは立派な『トリガー』の価値だし、レゾンデートルになると僕は思います。
 でも結局『ティガ』が下地にあってその答えは導かれてるよね、所詮『トリガー』は『ティガ』なしじゃ成立できないよね、って、それはそうです。だって"NEW GENERATION TIGA"なんだから。最初にそう言ってたじゃんって言いたい。そして、それでもいいじゃんって言いたい。ティガと真正面から向き合って作られているんだから、何にも後ろ髪を引かれない完全オリジナルの面白さ、足腰の強さを求めてるなら最初からそれはお門違いではないかとすら、僕は思います。まあ僕はティガ見てないんですけれども。

 最終回のサブタイに「〜PULL THE TRIGGER〜」とありました。
 主題歌の歌詞にも「引き金は僕だ」という一節があります。
 光でも闇でもある自分次第で、その弾丸がどこへどう向かっていくのかは決まる。
 現代でこそクローズアップされるそういう曖昧さやマージナルな部分を表現してきたのだと、僕は解釈しています。

これから

 断続的に放送されるライダーや戦隊と違って、ウルトラマンの放映にはスパンがあり、来週からは『ウルトラマンクロニクルD』という特集番組が始まります。
 新作放送までは少し待つことになるわけですね。ゼットからトリガーまでも半年あったので、次の新ウルトラ作品に出会えるのは早くて今夏という感じなんだと思います。

 とはいえその間にトリガーの映画『エピソードZ』もあるし、ぼちぼち『ティガ』の履修を始めてもいい頃だろうし、5月には『シン・ウルトラマン』、配信として夏に『ウルトラギャラクシーファイト』。楽しみは尽きないです。

 特に過去のウルトラマンがガンガン出まくる、そしてガンガン戦う(なのに公式YouTubeで無料配信)の『UGF』はウルトラファンになって特に衝撃だったもののひとつで、確かにライダーも戦隊も大集合みたいなのはあるものの、『UGF』ほどの団結力とか、適材適所感とか、スケール感とかは持ち合わせていないなと、そして単純に過去作やそのファンたちに対する愛情やリスペクトが尋常ではないなと思いました。潰しあったり騙し討ちしたりしてる場合じゃねえぞ平成ライダーども……!!

 そんなわけで今回はウルトラマントリガーの感想でした。
 また心の琴線にゴリゴリと押し迫るものに出会えたときにお会いしましょう。

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