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#49「声」

「またラジオやらないのか?」という声を、あちこちで頂くことがある。

 2020年一杯と、今年の春頃までの約15ヶ月間、YouTubeでラジオ番組の配信をしていた。
 一介のバンドのベーシストが、自分の話をするだけの30分間に一体どんな需要があるもんか、と消極的に、しかしラジオ好きな自分のエンジンは温めに温めてスタートさせた企画。ゲスト回や生配信も含め、全63回を割と暖かく見守って頂き完走した。就寝のお供に、空き時間のお供に等々いろいろとお役に立てた局面もあったようで、素直に嬉しかった。

 思えば、配信終了後にこの番組について言及するのは初めてかもしれない。

 結論から申し上げると、残念ながら現在レギュラー的なラジオ再開の予定はない。
 なにせ2時間も3時間もぶっ通しで、しかも3人でトークし続ける「ほかヲタ」が新たに動いているので、無口な僕のささやかなトーク欲はここで綺麗に発散してしまっている。中身で言えば、ひとりごつスタイルももちろん気楽で楽しかったが、複数人で話すとなると単純にわいわいの楽しさと、頭を使う楽しさ、"補完"による新たな発見や出会いがあって、そういう豊かさも魅力的だ。
 ラジオで行っていた、日常の中のよしなしごとを伝えるという行為も、大枠では趣旨が異なってしまうかもしれないがこのnoteで書きつづることができている。

 ただ、あの番組が自分の想像よりもずっと多くの人の耳に届き、大なり小なり意味を持つことができたことには、大きな喜びと感謝がある。それだけは間違いない。だから前述のとおりレギュラー的ではないとしても、時々ぽろっとひとりごつ時間を設けることについては、やぶさかではないと今も思っている。

 なにせ配信開始当初の僕は、不安でいっぱいだった。
 声のメディアは完全未経験ではなかったものの、そんなに美しい思い出があるわけでもない。
 そもそも、自分の声があまり好きではなかったからだ。

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特に有益な情報はありませんが、読んだ方にとって普段目も向けないような他愛のないもの・ことに改めて触れるきっかけ、あるいは暇潰しになったら幸いだなと思っています。

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