仮面ライダーオーズ10th 復活のコアメダル感想【ネタバレあり】
こんにちは。
好きなコンボソングはシャウタです。
渦中の問題作『仮面ライダーオーズ10th 復活のコアメダル』を視聴したので、その感想を書いていきます。
説明とか一切なしで、「俺も見た」という人向けに、なるべく簡潔に書いていきたいと思います。
映司と欲望とコア復活
今作、映司というよりも基本的にアンクの目線で語られていくのが本作の一つのオリジナリティというか、今までになかったポイントだなと思います。
いきなりなんですが、まず映司についてまとめさせてください。
映司のクロニクルを整理するとこういう感じ。
ことほど左様に映司は、己の欲望とは最終回で完全に決着してたと思っていました。
であればこそ「映司は未だに馬鹿でかい欲望の持ち主である」という描き方をしている今回のシナリオには、僕は全体を通してちくちくと違和感を感じ続けたんだと思います。
でも、少女とアンク、二つのあまりに大きすぎる喪失を経て、映司もまあ、まともな人間の情緒ではないわけですよね。こんなにも壮絶な経験をした人間なら、欲望というたったひとつの命題とも何度も向き合い、解き、また悩み、こじれるのも不思議ではない。
ただ、「アンクを蘇らせたい」ってのも、言い換えればそれは欲望だし、その意志はめちゃくちゃ強かっただろうから、その点でいえば噛み合うんですけど、でもそれについては「願い」という呼び方に統一されていました。
それまで映司はタカコアの復元に相当苦戦してたはずで、それを探すために財団の研究員になったり旅を続けたり——
のはずが、確かに死の淵の強い感情だったとはいえ、ただ「願い」だけで叶ってしまった。
ここも、それこそ「欲望」という言い方をされていれば、上記の映司の描き方として一貫性があるし、コアメダルが欲望の象徴であるだけに、それを復活させる要素としての説得力もあります。
が、どこにも紐づいていない突然の「願い」の力で復活したと言われて、ここに関してはピンときませんでした。
ただ、マジで渡部秀さんの演技力が半端なかった。せめて人間体の時だけでもゴーダ全部地声で行って欲しかったなと思うくらい。
ゴーダと鴻上と未来分岐説
ゴーダは「難航を極めていた鴻上の人工メダル研究に、映司の強大な欲望のデータを掛け合わせた」ことで誕生。
人工メダルの話は『MEGA MAX』にもありましたが、『MEGA MAX』の人工メダル=ポセイドンのメダルが完成したのは40年後の話。30年のギャップがあります。
参考程度に聞いてほしいのですが、ここで未来が分岐します。
ひとつは『MEGA MAX』の未来。人工メダルは40年後の2051年にようやく日の目を見ることとなり、ここでアンクもようやく復活を遂げる。分岐するとすれば、この未来では2021年時点で映司も(多分)死んでいないから、2011年の危機を救うためアンクは時空を越える。
そしてもうひとつが本作の未来。人工メダルは映司のデータでもって30年繰り上がり2021年で完成。アンクはこの時点で復活。映司はこの時死亡する。
仮にこの二つの未来が分岐しないとしたら、それが今考えうる最悪のバッドエンドだと思います。
ゴーダ事件を経て、別の形でのメダル生成を(映司が犠牲になっているのにも関わらず相変わらず)模索した結果が2051年のそれであり、アンクはゴーダ事件の時点からずっと復活したまま、映司が生きていた2011年の世界に助けに行くということになります。
鴻上がメダル研究を続けるということによって映司の犠牲は踏み躙られているし、アンクは映司が2021年に死ぬとわかっていながら2011年の危機を助けに行くってことになる。
そもそも「人工メダル」の定義を本作と『MEGA MAX』とで同一視してるのも違うのかもしれませんが……とにかく僕はこんな悲しい話は嫌なので、分岐すると思いたい。
じゃあハッピーエンドがよかったか?というと、何の戦いも争いもない世界で、のうのうと映司・アンク・比奈が同居してる世界は、作品世界の空気感に決して合わない。そんなのは同人でやればいいこと。であればこその、今回の結末というか、そう考えるともう、こうするしかなかったと言われても納得はできますよね。
ちなみに、映司が身を隠していると言っていた廃墟のソファー、オレンジの布がかかっていましたが、あれはウヴァ達がそれぞれ持ってるカーテンのゴーダverだったりしたんですかね……?
あと同じシーンで思い出の回想があったけど、なんかお笑いシーンがメインで……君らもうちょいまともな思い出ないんかとツッコんでしまった。
殺伐とした世界設定にせめてものオアシスを、みたいなつもりで意図的にああしたんだったらマジで蛇足だと思います。
グリードと古代オーズとオーメダル
グリード復活はきっと古代オーズに連動したものでしょうが、古代オーズそのものが蘇った理由に関しては明示されませんでした。
添えられる修辞句は「突如として」とかそんなもんで。
Twitterで「この作品は作りが雑」とか言ってた人もちらほらいましたが、僕はそうは思いませんが気持ちはわかります。多分こういうところの詰めの甘さみたいなことを言ってるんだと思います。
ただ妄想で補おうと思えばなんとでもなるし、だいたいが最終回で全てのオーメダルが真木博士と共に消滅している以上、オーズが再出演するどのシナリオにも相応の無理は生じているもんです。この辺は僕は深追いする必要はないと思いました。
顔見せ程度で終わってしまったグリード達でしたが、ウヴァのネタ感だけがすっごい炸裂してましたね。
最終的に四人は丸々古代オーズに吸収されるわけですが、そのきっかけになるのは誰かと考えると、確かにウヴァなんです。ウヴァしかいないわけではないんですが、ウヴァが適任なんです。
四人全員クローズアップするのも尺やシナリオの都合上困難でしょうし、せめてもの、ポップアイコンとしてのウヴァ、という点では嬉しさも感じましたが、反面「安直やな」とも思ってしまったり。
矢作穂花さんが一番10年間での変化があるわけですが、逆にそれを利用して、当時のご自身というよりもむしろゆかなさんに寄せていってる感じが「ああ〜上手い!」と思いました。
バースとロマンとエタニティ
バースX、ついで感が半端ではなかった……。
戦績もあまり良くなく、バースXである必要もそれほどなかったというか。
というのも、「戦績が良くない」っていうのは、それこそがバースのアイデンティティだったりするわけですよ。敵と出自を同じくする神秘的な存在であるオーズに対し、人類がせっせと作ったまさに「現場対応」の賜物で、しかもコアは人の手に余るからとセルが精一杯。これはこれでこういうロマンだったんですよねきっと。
ただ造形美がめちゃくちゃいいので、どこか別の場所で活躍してくれたらいいなあ。
タジャドルエタニティは素直にカッコよかった。キックのエフェクトとか最高すぎた。
映司とアンクが融合して一緒に戦うって、全然ありそうだったのに全然なかったですね。
ただ、エタニティのくだりといい比奈ちゃんの手を繋ぐくだりといい、随所に本編最終回をなぞる描写が多く見られ……見られること自体はいいんですがちょっと見られすぎじゃない?と徐々に思っていきました、自分は。
要は信吾を生きながらえさせたアンクとか、別れを前にした戦いで相棒の影が一緒に攻撃するとか、確かにそれはそういう粋なんだけど、ね〜〜〜なんというか、「ならいいってもんじゃねえんだぞ」というか。確かにあの最終回はすごかった。でも、でも。(言語化できない)
今でこそ見慣れてる感あるけど、「映司とアンクが融合して一緒に戦うって、全然ありそうだったのに全然なかった」っていうのも当時の感覚に立脚すると今回どこかちょっと禁忌に触れてる感もあるというか。安直にイマジン戦法に便乗しなかったから評価されてた部分とか、憑依体じゃなく生身同士のバディだからこそ見出せた良さみたいなものもあったと思うんですよね。
カンドロイドちゃんと使ってるのは嬉しかったな。
あと本編で思ったことというと「スタッフロールおっそ」くらいです。
まとめと所感と感謝
賛否両論の『オーズ10th』ですが、僕の立場を表明するなら、「両手放しに肯定することはできないけど、ひとつの分岐としてならアリ」です。
他でもない最強のオーズファンである渡部秀さんがこのシナリオを認め、撮影に踏み切ったということが、根拠としては大きいです。
渡部さんが分岐みたいな考え方を持ってるかどうかはわかりませんが、確かに「巨大な欲望との決着や、叶うはずのない相棒の復活への対価は大きすぎる」として導き出された「死」という結論なら、それはそれで受け入れる道もあると思います。
逆にこの作品を見終えてしまったら、ハッピーエンドの方がむしろ想像できなくなってしまうというか。そういう謎の説得力と訴求力があります。
ただ、願わくばこれ以外の未来もある、と思いたい。
インタビュー動画で高田里穂さんも「この結末を受け入れるのは大変(うろ覚え)」と仰ってました。
ただ、賛否を覚悟してでも10年の節目にこの作品を作ってくれた愛の大きさは間違いないものだと言えます。ファンとしては感謝の気持ちでいっぱいです。
特に最近のライダーはリバイバルも珍しくなく、これはこれでとっても嬉しいわけですが、時にはこうやって濃すぎるくらいの、筆圧強すぎて鉛筆折れんじゃねえかくらいのピリオドを打ち付けてくれる作品があってもいいのかな、とも思います。それは間違いなく、10年もの時を経てなお真摯に、完結した作品に再対面する強い意志と愛があればこそのことです。
地方民なのでTTFCで1600円でレンタルしたわけですが、その価値は大いにあったと思います。
お付き合いありがとうございました。
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