見出し画像

サグパニールカレーは豆腐でつくれるか

カレーが好きだ。

いつ食べてもおいしくて、何度食べても飽きないカレー。スパイスカレーも欧風カレーもタイカレーも大好きなのだが今日はインドカレーの話をする。インドカレー屋ってしょっちゅう行かないからこそ毎回同じようなものを頼んでしまう人も多いと思うが、例に漏れず私もいつもサグカレーを頼んでしまう。サグマトン or サグパニールだ。

サグパニール(引用:エスビー食品のサイト)

サグカレーとはほうれん草をペースト状にしたカレーで、具としては羊肉(マトン)やインドのカッテージチーズ(パニール)をよく見かける。
常々思っていたのだがこのパニール、チーズというには味がなく硬めの食感で、見た目も含めて豆腐に似ている。

ひょっとして、豆腐で代用できるのではないか?

そう思ってしまったら先ほど載せた写真も豆腐の入ったサグカレーに見えてみた。いてもたってもいられなくなったので、パニールを豆腐で代用したサグパニールに挑戦することにした。

パニール風豆腐をつくる

初めに今回の検証の主役、豆腐を用意する。
パニールはいわゆるプルプルの豆腐ではなくぎゅっとした豆腐のような食感なので、おそらく大胆な水切りが必要だろう。少し高野豆腐っぽくもあるかもしれない。

そこで今回は、豆腐を冷凍→解凍して水切りすることで、通常よりさらに水を抜く作戦を立てた。

豆腐のようなゲル状のものは冷凍すると水の体積膨張によりゲルのネットワークが壊れ、保持できる水分が少なくなる。これにより豆腐らしさは失われるかもしれないが、今回目指すのは美味しい豆腐ではなくパニールなので問題ないだろう。

使用した豆腐。びびって少量

この豆腐を冷凍、解凍し、カレーを作りながら水切りするとしよう。結果はのちほど。

サグカレーをつくる

検証の主役は豆腐だが、サグパニールの主役はもちろんサグカレーである。レシピはこのブログ(?)を参照した。今回は4人分なのでざっくり2倍した。

このブログによると、サグとはほうれん草に限らず青菜野菜全般を言うらしい。ほうれん草は1束198円と少し高かったので2束にし、98円の小松菜を1束足した。これで味にも複雑さが出れば一石二鳥だ。あと家にあったケールを面白半分で1枚入れた。

結構すごい量

これら全てをせっせと切ってはレンジで火を通し、ミキサーに放り込んでいくと、鮮やかな緑色のペーストが出来上がる。もう既においしそうに見えて少しなめてみたが、もちろんただの青菜の味だった。

グリーンスムージーと呼ぶにはドロドロすぎる

さてここからがカレーのハイライトだ。鍋に油を熱し、クミンを炒める。クミンがじゅわわわ、と発泡し瞬く間に香りが立ってくる。

小気味いい音がする


この、ホールスパイスを開かせて油に香りを移す作業をテンパリングと呼ぶらしい。
コツはただひとつ、焦がさないこと。

にんにくと生姜も加えて香り高い油をつくっていく。にんにくは、いやな臭みを抑えるために早めに入れる。びっくりするほど油が跳ねて怖いので一旦火から外す。落ち着いてきたら生姜を。生姜はフレッシュな香りが魅力なので、むしろ火を通しすぎない……

……


え?

焦がしました。

優しい家族の許しを得て、もう一度クミンから炒める。
今度は上手くいって、にんにくと生姜も良い香りがしてきたところにみじん切りの玉ねぎをどっさり入れる。

魯珈の店長も「カレーのおいしさの8割は玉ねぎで決まる」と言っていたように、ここが肝心。玉ねぎをじっくり炒めて表面がすこーし焦げてきたところに水を入れると、あっという間に飴色になる。そこに潰したトマトを加え、塩とカレーパウダーを加えてまとまるまで炒めれば、ベースが完成。既においしそうな香りがするね、と母がキッチンを覗きに来た。

スパイスカレーの基本は全部これなんじゃないかと思えるベース

ここでお待ちかねのほうれん草ペースト投入だ。

鮮やか!

じっくり炒めて煮詰めていく。しっかり水を飛ばして火を入れるのがポイントだそうで、レシピによると、ゴムベラで鍋底をなぞったときできる溝が消えるようだとまだまだだと言う。焦げないように混ぜながら、根気よく火を通す。
20分くらい混ぜ続けていると、いいかんじに煮詰まってきた。気づけば色もだいぶ変わって、「ほうれん草ペースト」から「サグカレー」に見た目も仕上がりつつある。

溝がくっきり。これをカレーロードと呼ぶらしい(?)

牛乳とバターと乾燥バジルを加えて、また溝が消えなくなるまで煮詰める。時間のかかる作業だが不思議と飽きがこない。ずっと大好きなカレーの香りがしているからだろうか。思わず深呼吸する。

そうこうしてるうちに、ついに完成!
見た目もかなりサグカレーっぽく、かなり期待できそうだ。さあ、食べよう食べよう!

完成!ナンも手作りした

ひとくち食べて確信する。これだ!これが私が愛してやまないサグカレーだ。野菜のやさしい味の中にクミンの香ばしさがふわっと香る。乳製品のコクもいい。

検証結果

あまりに完成されているのですっかり忘れていたが、これはサグパニールなんだった。水切りしたままになっている豆腐を見に行く。切ってみると、すっかり水が抜けてシワシワになっていた。

冷凍・解凍・水切りした豆腐の断面

サグカレーといっしょにナンに載せてみる。見た目はかなりパニールっぽい。期待を込めていざ実食だ。

…うん。これは豆腐だ。

食感はかなり固めになっていてイメージ通りではあるが、それがパニールに近いかどうかを判断するに至らないほどに味が豆腐すぎる。豆腐を冷凍解凍して水切りなんてしたら全然知らない食べ物になるんじゃないかと期待していたが、食べてみたらなんてことはない、ほぼ湯葉だった。
家族も「まずいわけじゃないけど、豆腐だね」と言っていた。わたしもそう思う。

結論 サグパニールカレーは豆腐では作れない

結果としては残念なことになったが、個人的にはかなり知的好奇心が満たされた検証となった。これで諦めずにいろんなことにチャレンジしたい
あと、サグカレー自体はかなりおいしくできたのでまた作りたい。

おまけ ナンをつくる

ナンはこのレシピで作った。
作ったというか妹が作ってくれた。シンプルな工程なのにちゃんとナンだった。
成形のときに厚めにするとモチモチ、薄めにするとパリパリになった。(何枚も順番に焼いていくときに焼けたものを少し食べて厚さと食感の関係に仮説を立て、次のナンを微調整していくところに血を感じた。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?