得点開示から見る東大本試験の採点基準

更新が遅くなってしまい申し訳ないです。合格者の得点開示も返却されましたので今年に限らず東大の採点について書いていきたいと思います。

僕のツイートを見ていただければ分かりますが、僕は東大を6回、そのうち理三を5回受けました。なので東大の得点開示を6回経験しています。毎年僕の得点だけでなく、合格者、不合格者の得点開示もたくさん見てきましたので、普通の受験生よりは得点開示の情報は持っていると自負しています。

今までの僕の得点開示

2014年 東大理科二類

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現役の時は大して勉強していなかったため、記念受験のレベルでした。その当時から理系科目は得意でしたが、東大レベルになると全然得点できていませんでした。国語に関しては全ての空欄を埋めてこの点数ですので、ほとんど得点できていない状態でした。正直受ける前から浪人をする前提でしたのでショックもなく浪人することに決めました。

2016 東大理科三類

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次に東大を受験したのは2年後の2016年です。東大理科三類を受験しました。各科目の採点基準は後で書きますので当時の数学の出来だけ書いておきます。

①完  
②(2)の計算が少し怪しいも完
③完
④辺の長さの条件のみ書いて後は白紙
⑤完
⑥完 少し議論が怪しい

2017 理科三類 2回目

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この年は大きく東大入試が変化した年でした。
変化の内容は
①現代文の2行問題が4問から3問に減少
②数学、物理がかなり易化

難しい問題を解き切る入試でなく簡単な問題を落とさないという側面が強い入試でした。落ちた身ですが、受けながらどうした東大?と感じながら試験問題を解いてました。

数学の出来は
①完
②把握ミスで全滅
③完
④完
⑤(1)のみ  (2)はkが2つしか出ず
⑥(1)のみ  (2)は図形の把握ミス

簡単な問題であったにもかかわらず散々な出来でした。

2018 理科三類 3回目

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この年は非常に悔しい年でした。
理系科目の出来が良く、やっと合格できたと思ったにもかかわらず不合格という現実を突きつけられてしまいました。

数学の出来は
①完
②完
③完
④完
⑤(2)まで答えを出すも議論曖昧
⑥(3)まで (4)VをS,Tで表すところまで

2019 理科三類 4回目

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この年は苦手科目に力を入れた結果、理系科目の出来が下がりまた不合格となりました。
突出して悪い科目はありませんが、理三に合格するには全体的に今一つの点数となってしまいました。

数学の出来は
①完
②完
③(1)のみ
④完
⑤(2)まで
⑥(2)(3)のみ
でした

2020年 理科三類 5回目

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今年合格した時の開示です。最終的にかなりバランスの取れた成績になりました。物理と数学で失敗したのが心残りですが、理三受験において大切なこと

・得意科目は失敗してもアドバンテージになるレベルにする

・苦手科目は苦手であっても大きくビハインドにならないようにする

この2つがこの得点開示に凝縮されていると思います。受かる時は本当に呆気なく受かってしまうものです。

数学の出来は

①完
②完
③完
④(2)前半まで
⑤(1)のみ(2)は図形把握ミスで×
⑥(1)完(2)rの存在まで

参考になれば幸いです。

東大の採点基準について

東大の採点基準の大きな特徴は相対評価です。採点現場を実際に見たことがないのでどのように実際に行われているかは分からないですが、噂ですと体育館みたいな広い会場に答案を並べて複数人で答案を比較する方式をとっているということを聞いたことがあります。あくまでも噂なので確証はありません。

また科類ごとに採点基準は異なると思われます。特に理三と他の理類の差は大きいと思われます。この科類ごとの差が生まれる理由も相対評価が理由です。理三はハイレベルな受験生ばかりが受けますので全体的にレベルが高くなります。理三の中で差別化を図るためには採点基準を厳しくする必要があるからです。そしてもちろん年度によって採点基準は変わります。唯一変わらないことは他の受験生より優秀な答案は評価されることです。

僕の今までの得点開示と自己採点から僕の推測する採点基準を以下科目別で書いていきます。

国語

国語の採点基準は模試と全然違うと言われていますが、具体的に違う点は

①解答要素による加点式の採点方法がとられていない

②全体の論旨が合っていたら概ね得点がもらえるが、方向性がズレている、日本語が支離滅裂といった場合は得点がほとんどもらえない

③現代文40点 古文20点 漢文20点の配点すら怪しい

この3点です。①は今まで東大模試を受けたことがある人は分かると思いますが、東大模試の国語は各問題において必要な解答要素があれば加点、無ければ得点なしといった採点形式になっています。必要な解答要素は細かく定められており、解答要素と似た内容を書いてあっても予備校が決めた解答要素ではないため得点なしということが起こってきます。東大本試験ではこのような事態は起こらないと思われます。細かい要素というよりは全体の方向性が得点に大きくかかわってきていると思われます。

②は①とつながってくるのですが、論旨がつかめているかどうかで得点が大きく変わるということです。この設問で東大が聞きたかったことにきちんと答えている答案は多少言葉が拙くても点数になりますが、それっぽいことが書けていても設問で聞きたかったこととズレてしまっていたら得点はほとんど認められません。また解答要素以前に日本語として変な文章でないかということも重要になってきます。採点するのは東大教授ですから国語のエキスパートです。受験生は気づかないが、国語ができる人が見ると気持ち悪い、違和感を感じる表現は採点される際に答案の印象を悪くしてしまいます。答案の印象が悪くなることは得点が低くなる可能性が高くなるということにつながります。漢字の誤字があるから減点といった採点方式をとっているかは不明ですが、稚拙な文章は得点が低くなるのは間違いないと思います。

③はあくまで推測ですが、漢文の配点が20点もないのではないかという説です。鉄緑は現代文45点古文20点漢文15点で採点しているはずです。得点開示だけではここまで配点は読めませんが、現代文のウエイトに比べた時の漢文のウエイトが軽すぎることが多いので、漢文の配点は20点もないのではという推測です。あくまで推測にすぎませんが、今までの僕と他の人の得点開示から、漢文の出来ではあまり変わらず、現代文の出来で国語の点数が大きく変わるという印象があるのでもしかしたら正しいのかもしれません。

近年の国語は比較的読みやすい文章が多く、多くの受験生は読めたと感じることが多いと思いますが、読めたことと得点がとれることは違います。簡単な時こそ得点を落とさない答案の作成が大切です。特に理系は国語をないがしろにしがちですが、決して油断せず質の高い答案の作成の訓練をしましょう。理系の国語は30点あればいいといった時代はもう終わってます。

数学

数学も相対評価なので、極論をいってしまえば完答して答えが合っていても満点をもらえない可能性すらあることです。多くの受験生が完答した問題では小さなミスがあればそこで大きく減点される可能性があります。逆にほとんどの受験生が解けなかった問題を論理が不十分ながら答えに辿り着けた場合は大きく評価される可能性があります。理三は特に受験生レベルが高いため、採点基準は厳しいと思います。簡単な問題での計算ミスや論証不足は命取りになります。150分で6問を解く練習の中で答案のレベルを磨くことが大切です。厳しいことを言いますと多少数学が得意なレベルでは理三レベルでは得意になりません。中学生までに数Ⅲを終えている超進学校の生徒や全国の天才たちと戦う中で本当に数学を武器にしたいなら相当な訓練が必要です。

理科

東大入試の理科で大きな特徴が理科の「下駄」です。下駄とは物理、化学、生物、地学の問題難易度、出来に応じて各科目の有利不利をなくすために出来が悪かった科目に得点を少し加算するといった制度です。この下駄は年度によって有無が変わります。今年は恐らく下駄はなかったと思われます。昨年は物理に下駄があったと思われます。要するに出来が悪い科目は得点が加算され、出来が良い科目は得点の加算がないということです。以下物理と化学について

物理の解答のみは得点がもらえるのか?

答えが合っていればもらえると思われます。間違っていたら部分点がほとんど期待できないリスクもありますので簡潔に途中過程を書く練習を推奨します。

易化が続く化学

2017以降化学の難易度はかなり下がっています。その反面、採点基準が少し厳しくなり難易度のわりに50点以上の高得点は取りにくい印象です。また計算が煩雑な問題もほとんど見られなくなっているので、計算過程だけ書いて部分点を狙う戦略も見直す必要がでてきていると思います。2014~2016の問題と2017~2020の問題を解き比べて見たら実感できると思いますので是非過去問の研究を推奨します。昔の東大化学が計算ゲーと言われていたことが分かるでしょう。

英語

東大英語は難しいと言われていますが、東大に合格する人は軒並み高得点を取ってきます。つまりハイレベルな戦いになるということです。記号問題は正解、不正解しかないので採点基準は関係ないですが、論述の問題 要約、英作文、和訳がポイントです。国語と同じように要約は論旨が掴めているか、ズレているかで得点が左右されます。逆に和訳は精読力を問う問題ですからざっくりした意味が合ってるだけでは高得点は望めません。正しい日本語を使う、きちんと構文が把握できそのことが分かる答案が書けている、英単語の意味のニュアンスを適切な日本語に置き換えられている といったことが大切になると思います。

英作文はネイティブが見ているという噂がありますが、全てネイティブが見てるかは分かりません。しかし模試のような減点法ではなくABCDEといった段階評価で採点されているそうです。こいつはできると思われたらA 概ねできているけどちょっと間違っているならB こいつ何もわかってないと判断されたらE というように細かい文法ミスより全体の英語の出来で評価されています。これが意味することはいつからか神話のように言われている「文法ミスがなければ中学校レベルの英語でも満点がもらえる」という説が甚だ疑わしいということです。先に述べた通り東大合格者は英語ができます。そんな中稚拙な英語の答案が高く評価されるかは疑問です。当たり前ですが、英語が得意な人は高得点が期待でき、苦手な人はあまり得点がこないことになります。英語が苦手な人は英作文で得点するといった戦略がありますが、きちんとした英語力のない付け焼刃の英作文力は東大教授に簡単に見透かされると思うので僕はあまりお勧めできません。むしろ絶対に得点がもらえる記号問題の精度を上げることが得点に直結すると思います。

Twitterの得点開示から情報収集

少し時期が過ぎてしまいましたが、twitter上には多くの東大生が#東大開示祭り2020といったハッシュタグをつけて実際に合格した得点をアップしてくれています。優秀な東大生を見てすごいと思うことも面白さの1つですが、自分の能力とその東大生の能力、環境を考慮して自分に最適な戦略を考えることが大切です。不合格者の得点開示も参考になります。どの科目が足りなかったのか?なぜこの人が落ちたのか?その人に失礼にならない範囲で調べてみましょう。俺は数学120点とって英語30点で受かると意気込むのはいいですが、その考えがいかに非現実的かは多くの得点開示の点数を見れば分かると思います。現実的な戦略を立てましょう。

理三志望でしたら

国語45~55

数学85~95

理科85~100

英語85~95

2次合計300~345

これが平均的な目標点になると思います。一見そんなに難しそうに見えないのですが、一科目でも失敗すると300点を割ってしまい、不合格の可能性が一気に高まるという恐ろしさがあります。繰り返しになりますが、理三志望は苦手科目が許されないことをお伝えしておきます。

理一、二なら

国語40~50

数学60~80

理科70~85

英語70~85

2次合計240~300

といったところでしょうか 各科目得意不得意で得点のバランスは変えてください。

以上で得点開示と採点基準の記事を終わります。

2020年5月7日  片山湧斗

追記
現在私は医学部予備校レユシールという予備校をプロ講師と共同経営しており、東大理三志望の受験生を中心に医学部受験生を指導しています。実績のあるプロ講師と高い学力を誇る東大理三生講師による完全個別指導により医学部合格まで徹底的にサポートする予備校となっております。また医学部予備校という名称ではありますが、私自身の経験を活かし、理科三類以外の東大受験生の方も多数指導しております。特に独学での勉強が困難な東大現代文の添削指導は多くの東大受験生の方に受講していただいております。興味をもっていただいた方は以下のリンクから当予備校のホームページをご参照ください。

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