東大英語 段落整序の攻略

お久しぶりです。今回は東大英語の1B、段落整序について書いていきます。1Bは年度によって段落整序ではなく、一文だけを補充する空所補充問題であることがあります。また単語補充問題や説明問題がある年度もありますが、主に段落整序、空所補充の解法、勉強法について書いていきます。

この1Bで聞かれていることは?出題意図は?

この1Bの出題意図は1Aの要約と同様に文章全体の論旨、ロジカルな流れを把握できるかどうかだと思います。ロジカルな流れとは各段落のつながり、英語の文章の展開パターンといったものです。俗に言うパラグラフリーディーングといったものが近いと思います。しかしパラグラフリーディングのルールを覚えただけでは東大の問題は解けません。怪しい参考書や胡散臭いブログには「ディスコースマーカーが分かれば満点が取れる!」や「空欄の前後だけを読めば解ける!」といった言葉が書かれていますが、そんな簡単に東大英語は解けません。特に理系の人に多いのですが、語学というものはこのルールさえ分かれば問題が絶対に解けるといったルールは残念ながらありません。語学のルールはあくまで読解の原則であって絶対的なものではありません。数学の公式や物理の公式が成立しないことはまずありませんが、読解のルールは絶対的ではありません。文章を読むのに一番大切なのは内容理解であって読解のルールはその手段でしかありません。論理を大切にしながら内容もきちんと理解する。これが1Bで問われていることではないでしょうか?

ハイリスクハイリターンの記号問題

1Bは大半の問題が記号問題なので、部分点が存在しません。また選択肢の数と空欄の数がほぼ一致しているので、一問間違えたら連鎖的に他の問題も間違える可能性が高くなります。例えば1問2点の問題が5問あったとすると、全て正解すれば10点獲得できますが、最初の(1)の問題から間違えるとそのあとの問題も芋づる式に間違えてしまい0点になります。この点が他の大問と大きく異なる点です。1Aの要約や4Bの和訳は小さなミスをしても部分点はもらえますが、1Bはそのようなことがありません。このような背景からひと昔は1Bはコスパが悪いから捨て問だ、と言われる始末でした。しかし近年の問題は無理難題な出題ではありませんし、東大受験生全体の英語力の向上から、東大に合格する受験生は概して高得点をとり、合格者と不合格者の差が非常につきやすい問題になっています。実際の英語力がどの程度であれ、正しい答えさえマークできれば全員同じ点数が得られますから、英語が苦手な受験生程ここは力をいれて対策をすべきだと思います。

問題を解く前に

問題を解く前に空欄の数と選択肢の個数を確認しましょう。ダミーの選択肢はあるのか?文章のどのあたりが空欄になっているのか?ダミーの選択肢がないからといって簡単だと思ってはいけません。東大がなぜダミーを作らなかったのかを考えるとそもそも文章が難しい、そもそも量が多いなどといったことが考えられますね。可能であるなら選択肢の内容を確認しましょう。段落の場合は先読みは大変なのでさらっと見る程度で良いと思います。

先に全部読むのか?解きながら読み進めるのか?

あくまで僕のルールですが、全体の趣旨が理解が容易で文章の流れが把握できた場合は問題をときながら、全体の流れがやや読めず、全体の内容も少し分かりにくい場合は先に全体を読んで内容把握を優先し、分かるところから問題を解いていくという解法をとっていました。どちらかというと後者の解法をとっていた時が多かったと思います。1Bでやってはいけないことは問題の前半で誤った選択肢を選んでしまうこと、前半の内容や選択肢が分からず悩んでしまうことです。前半で躓くと高得点を望めないだけでなく、東大英語全体の時間バランスを崩してしまうことに繋がります。このような事態を防ぐため、原則は「分かるところから確実に」です。話の内容的にも流れ的にもこれしかないと選択肢を1つに絞れるなら前から選んでいいと思いますが、思い込みは厳禁です。

段落の繋がりとは?

僕は英語を本格的に教えている立場ではないので、文章の論理構成について体系的に教える程の知識はありませんが、読解の際に意識していた段落の繋がりを考える軸が3つあり、それは「具体と抽象」「対立」「マクロとミクロ」です。
例をもとに考えてみましょう。以下のような文章があったとしましょう。


第一段落
近年地球温暖化により、環境破壊が進んでいる。


このような内容が書かれていたとしましょう。次に続く段落はどのような内容が来ると思いますか?


第二段落
南極の氷は驚異的なスピードで溶けはじめ、ペンギンやシロクマの生活が脅かされている

このように地球温暖化という抽象的なものを次の段落で具体例を出して説明することで分かりやすい文章は書かれることが多いです。つまり1Bを解く際にこの段落では抽象的なことが書かれているから次は具体例がくるのではないか?という予想をたてながら読むことでスムーズに読解が進み、選択肢を選びやすくなります。

第三段落
しかし、天文学者は現在の地球は気温の低い氷期にあると考えている

前二つの段落の主張を覆す新たな主張が出てきました。これがまさに対立の軸です。世間一般では地球温暖化が騒がれているが、通説とは全く異なる考えが出てきている。

第四段落
氷期と間氷期の十万年におよぶサイクルを踏まえると、一時的な気温の上昇はあっても現在は氷期だそうだ。

今までの話はここ数年数十年という視点での気温の上昇について書かれていましたがこの段落では十万年という長期的なサイクルの視点で書かれています。つまりミクロとマクロの視点が変化しています。このような視点の変化に敏感になることで文章の流れを把握しやすくなります。

この3つの軸を常に考えながら読むのは困難ですが、この段落とこの段落は具体と抽象の関係にあるな、ここは全段落と対立しているなといったことに読みながら意識する訓練をしないと身に付けることはできません。1Bで空欄になっている箇所を見てみるとこのような段落の流れに関係が深い場所が多いと思います。是非ご自身で研究してみて下さい。


結局は英語を読む量

元も子もないことを言いますと今までどれだけ英文を読んできたかが結局のところ一番出来を左右します。英文をたくさん読んできた人はこのようなことをとりわけ意識しなくても問題を解けてしまいます。このような人たちには英語の文章の型が身体に刷り込まれているので、自然と次の展開が予想できますし、読んでいる途中でオチまで分かってしまいます。つまり英語をたくさん読む訓練が一番大切です。しかし闇雲に読むだけではなく、
この段落の全体の中での役割はどのようなものか?
論旨は結局何か?
といったことを考えながら、意識しながら読むことでより効果的な学習が可能になりますし、自分の実力をより試験で発揮しやすくなるでしょう。

おすすめ教材

おすすめの教材は2パターンあり、1つ目は多読により英語の流れや型を染みつけるのに役立つ教材、もう一つはこの1Bの形式に慣れるための教材です。前者は多くの良質な英語の文章が載っている教材を選ぶといいでしょう。僕はリンガメタリカを使っていました。良質な英語であれば何でもいいです。大切なのは量です。

後者はやはり東大の過去問、東大模試の過去問がメインです。東大英語は年度によって少しづつ形式が変化しています。大まかな特徴は以下の通りです。

・2013年度~2020年度
今の形式とほぼ同じ形式です。段落整序より空所補充の方が多くなっています。難易度も程よいです。

・2007年度~2012年度
東大英語の1Bが一番重かった時期です。段落整序だけでなく、不要文を取り除く問題や全体の趣旨を選ぶ問題などヘビーな構成になっています。実力をつけるために取り組むのはいいと思いますが、出来が悪くても悲観する必要はないと思います。 

・2000年度~2006年度
年度によって難易度にムラがありますが、形式は段落整序、空所補充なので演習する価値は十分あります。問題集によく載っている東大1Bの問題は実はこの時代のものが多いです(エスペラント、ハワイのサーフィン etc)


東大模試の問題も入手可能、余力があるならやるといいと思います。個人的な好みは河合塾>駿台ですが、河合塾の英語はたまに難しすぎる問題もあるので注意してください。近年の問題は比較的穏やかです。


その他やや問題の性質が異なりますが、他大学の入試問題でも段落整序が出題されている大学がありますのでいくつかピックアップしておきます。年度により問題形式が頻繁に変化するので全ての年度でこの形式がある訳ではないことには注意してください。

・東京外国語大学
・早稲田大学 理工学部
・早稲田大学 文学部
・早稲田大学 文化構想学部
・慶応大学 医学部(2007、2008のみ確認)

2021年10月13日 片山湧斗 



現在私は医学部予備校レユシールという予備校をプロ講師と共同経営しており、東大理三志望の受験生を中心に医学部受験生を指導しています。実績のあるプロ講師と高い学力を誇る東大理三生講師による完全個別指導により医学部合格まで徹底的にサポートする予備校となっております。また医学部予備校という名称ではありますが、私自身の経験を活かし、理科三類以外の東大受験生の方も多数指導しております。特に独学での勉強が困難な東大現代文の添削指導は多くの東大受験生の方に受講していただいております。興味をもっていただいた方は以下のリンクから当予備校のホームページをご参照ください。

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