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『磯臭い』と『إن شاء الله』

海の傍の街から、海の傍の街へと引っ越してきた。
引っ越し、というには少々大げさかもしれないけれど、まぁつまり、ちょっとだけ生活の拠点を、移してみた。

少し前まで住んでいたところは、決して海が目の前というわけではない。
歩いて3分のところに川はあるけど、海へ行くには自転車で15分くらいかかる。
これは近いのか?近いと私は思っていた。平均とか知らんけど。
とにかくその距離でも『磯臭い』と思うことがよくあった。
特に雨の日、風の強い日。
電車を降りて、目視より前にそのニオイで「あれ?雨降ってる?」と思う程度には雨の日は、正直言って、クサい。臭い。磯臭い。

「その距離でも」というには理由があって、以前住んでいたところと打って変わって、今住んでいる場所は自転車で3分程度のところに海があるにも関わらず、まったく『磯臭く』ない。
正直びっくりした。
きっと海が綺麗なんだろうな、と思った。
とっても広い空と海、以前住んでいたところにはない背の高い木々も組み合わさって、初めて見るその海辺の景色が本当にとっても綺麗だったから。

新しい生活にはもちろん不安があったけれど、その綺麗な風景に励まされた。そして、その景色を伝えたくて、家族とテレビ電話もした。
「この海、全然『磯臭く』ないの!すごくない?きっと海が綺麗なんだね」
意気揚々と説明をした。
ちょうど以前住んでいた街に、台風が来る直前である。
おそらく、さぞあちら側は『磯臭かった』であろう。

夏の終わりにここへ引っ越してきて、もうすぐ2ヶ月が経つけれど、最近衝撃的な事実を知った。
どうやらこの『磯臭く』ない、そして壮大な景色を生み出すこの海は、水質汚染が著しいらしい。
それも結構、深刻なレベルで。

え??

でも、なるほど。
そういえば、あまり魚料理を見ない気がする。
自分が魚料理が苦手なのも相まって、なんの疑問も持たなかった。
スーパーの魚売り場なんて、この二か月「なんかでっかいサーモンがあるな」くらいの印象しかなかった。

とにかく、このあたりの海は水質汚染がひどいらしい。
でも、全然臭くない。
(市場はもちろんたまに臭い。そりゃそうだ魚があるんだから)

なぜ『磯臭く』ないのか。
海の塩分濃度が低い、というのが理由のひとつだそうだ。

まさか、海の塩分濃度が臭いに関係するほど違うことがあるなんて、情けないけど私は想像したことすらなかった。

死海?あれは、湖です。

厳密にいうと、『磯臭く』ない海はここ以外にも沢山あってそれぞれに理由がある。

とにかく少なくとも、
今私がいるところの海は比較的塩分濃度が低く、
それによってこの海に存在する魚の数も比較的少なく、
つまりいわゆる『磯臭い』の根源である魚等が少なく、
だから、『磯臭く』ない。

らしい。
調べ始めると終わりが見えなくて、英語の論文にたどり着きかけたところで、調べるのをやめてnoteを開いた次第である。
詳しい方がいたら、詳細をご教示いただきたい。

そう、で、まぁ、論文では避けちゃったんだけど。
英語。
少し前に、この『磯臭い』について英語で伝えたいと思った機会があった。
Googleに頼って英語で『磯臭い』と調べると、"smells like the ocean"又は"fishy smell"と出てきた。

私は残念ながらこれまでこのニオイについて英語で議論したことがなく、これらの英語について細かいニュアンスがわからないので、なんとも言えないのだけど。
ただ、それらの直訳が意味する「海のようなにおい」と「魚的なにおい」とは、私の言いたい『磯臭い』は何となく違うような気がした。

『磯臭い』って、匂いと臭いの違いも含むというか、「におい」が「くさい」という意味に加えて、海の独特な香り諸々包括している言葉だと思っていて、じゃあそれを英語に訳すぞ、となったときに単にその漢字の意味の変換では、おさまらないというか。

文化が言語を創り、言語が文化を創るんだろうなぁと、しみじみと感じた。

で、結局、私はその上手い表現というか、少なくとも自分ではしっくりくる『磯臭い』の英語での表現が見つからずじまいで、その話題を話したかった人にそれを提示することはなく、私の中で、ぽつねん、と放置されていた。

でも結局、ぽつねん、と放置されているその『磯臭い』は、雨が降るたびに私の中でむくむくと大きくなってくる。

あまり、大きく咲かせたくない臭いである。

実は今日はちょっと良いところで、優雅な朝ごはんを食べた。
その帰り道。
とっても素敵な帰り道なのに、雨上がりだったせいで、またむくむくと『磯臭い』が大きくなっていくのを感じた。

もう、臭い物には蓋をせず開け放ってやりたい。

その一心でこの『磯臭い』にまつわる最近の出来事をカタカタと組み立てている。その間に、一度止んだはずの雨はまた強く降ってきて、かと思えば弱くなって、を何回か繰り返し今は止んでいる。

久しぶりにとっても長い文章をつくってみて、『磯臭い』で感じた『言語と文化って面白いなぁ』を改めて感じることができて、大満足である。

ただ、私は他の言語が堪能なわけではないので、この感覚はほとんど日本語でしか感じられないのだけど。それが、少しだけ寂しいな、とも思う。

あ、まって!

そういえば私には、『インシャアッラー』が、あるじゃない。

実はこれから、初めてのメンバーでボーリングに行くことになっている。
最高スコア60だったか70だったか・・・
覚えてないけれど、とにかく私はボーリングが下手。
それをメンバーには伝えず、ボーリングへ向かうわけなのだが。

結果?

『インシャアッラー』だ。



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