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ボランティア 第5話

月2回、家事等の支援のボランティアを行っている。
もう1年になる。
訪問先は70代のお父さんと20代のお兄ちゃんの2人暮らし。奥様はずいぶんと前に他界されているらしい。
お父さんは、色々とご病気をされ
精神的にも不安定。
公的な支援や介護を受け、なんとか年金暮らしというところ。

『お邪魔します』
古ぼけた玄関の戸を開ける。
返事がない。
いる気配もない。
テレビはつけっぱなし、
真新しいタバコの匂い。
ジュースを買いに行ったのか、
パチンコからの帰りがまだなのか
姿は見えない。

ともかく、ゴミの回収から始めた。
20分たっても帰って来ない。
ふと不安になり、
契約元に確認の連絡をとると
すぐに電話があった。
なんと、少し前
救急車で運ばれたと言う。

やっぱりかー。
とうとうこの日が来たかー。
家か近所かで倒れ
救急搬送。
いつかこうなるんじゃないかと容易に想像できた。

大丈夫じゃなかった‥

どう見ても不安要素しかなかった。

結局なにも変わらないこの家の現状が虚しくなる。

数分後、
お兄ちゃんが会社を早退してあわてて帰ってきた。
入院準備にてんやわんや。
ごちゃごちゃの部屋を、
ひっかき回して
病院へ行ってしまった。

お父さん、
きれいな寝具と温かい食事でしっかり療養してくださいね。

お兄ちゃん、
お父さんには優しくしてあげてくださいね。

元気に戻って来られることを
お待ちしております。


つづく