キラキラ星

子どもの頃「キラキラ星」を踊ったことがあった。

大きなお星様を頭につけて。

両手をひらひらさせながら、

キラキラを表現して歌うの。

あれは何の発表会だったのだろうか。

もう覚えていないけれど、写真があることを

思い出したのよ。

冴えない顔をしている写真。

ちっとも楽しそうじゃない私。

私、あの時本当は楽しかったのかしら。

緊張していただけなのかしら。 

発表会があってもちっとも面白くなかったと思う。
 
目の前に大勢の大人達がいてその中からお母さん

を見つける事の方に気を持っていかれるし、

お母さんの事だから後ろの端っこだろうと

考えたりしてね。

「お父さん!お母さん!見て!」

私はこういうタイプではないから、

本当は人前に出る事なんてしたくなかった。

発表会で元気いっぱいの子もいたと思うわ。

私が小さい声で歌っていても盛り上がっていたと

思うから。

だからやっぱり、発表会なんて面白くも

楽しくもなかったのよ。

私が考えていた事は、

「ここにお母さんが来てるのに、どうして帰れないのだろう」

「お母さん、もう帰りたい」

だだっ広く開けている一間なのに、ステージと

客間の間に透明な隔たりがあって、

同じ部屋に居るのにお母さんの所に行けなかった。

発表会って本当は悲しい距離を表すものだった 

のかもしれない。

お母さんが見えるのにどうして? 

ホームシックなのよね、今でも変わらない。

お母さんを見ると家に帰りたくなるじゃない?

家に帰ればみんなが居るから。

此処よりもずっと楽しい所が

私の家だった。



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