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中の人から見た香料メーカーの特徴

香料業界は認知度の低い隠れた業界です。香料会社の名前をひとつでも言える方が一体どれだけいるでしょうか?おそらく数%レベルかと思います。

その一方で、香料は生活に根付いた存在です。加工食品、日用品、香粧品などあらゆる商品に香料が使用されています。

さらに、香料会社は日本に100社以上あると言われています。香料会社は縁の下の力持ち的な存在ですね。

香料会社の商売相手は、食品メーカー、日用品メーカー、香粧品メーカーなどの企業です。すなわちBtoBです。日本における香料の売上では、食品用途であるフレーバーの割合が非常に大きいです。

フレーバーを扱うのは食品企業のため、一般消費者とは距離が遠いです。言わばBtoBに特化しています。

そんな香料業界ですが、働くにはオススメの業界でもあります。

「働く」という視点で、中の人から見た香料メーカーの良いところと悪いところを書いてみました。

就職活動の参考になれば幸いです!

香料メーカーの良いところ

一言で言うとホワイトで、ワークライフバランスが優れています。ありがたいことに、私自身もストレスフリーで働くことができています。

香りに囲まれている


一番の魅力は香りに囲まれて仕事をすることでしょう。レモンの爽やかな香り、ラベンダーの心落ち着く香りなど、さまざまな香りと向き合いながら仕事をします。こんなものまで香料になっているのか!と驚くこともたくさんあると思います。

関わる商品の種類が多い


食品香料であれば、あらゆる食品企業と取引があります。飲料メーカーから冷凍食品メーカーまで、あらゆる食品メーカーが商売相手です。食品メーカーであれば、ほとんどの企業では取扱い商品が限られています。コーヒーだけを売る会社、お菓子だけを売る会社などなど。
香料メーカーであれば、あらゆる商品に関わるので、さまざまな商品に興味関心がある人にはうってつけです。

安定業界


売上が食料品や日用品に依存するので、需要に大きなブレはありません。したがって毎年一定の売上を上げることができる安定業界です。国内最大手である高砂香料や長谷川香料の売上も安定しており、むしろ順調に利益を出しています。コロナ禍においても、大きな影響は受けていません。

もちろん、懸念事項もあります。
香料は添加物です。食料品・日用品も健康志向や天然志向の煽りを受けて、無香料を謳う商品も増えてきました。香料会社の社会的存在意義を問われる場面も出てきました。

しかし、基本的に香料は加工品に不可欠な存在です。香料は、加工品を「より安く、より良いものを、より安全に、より安定して」消費者のもとへ届けるために使用されているからです。

もちろん、天然志向が高まっていることは香料業界も重々承知しています。天然と合成のバランスを上手く取りながら研究開発が進められています。バニラ香料に代表されるように、天然と合成はトレードオフの関係なので、うまく使い分けることが重要ですね💡

天然・合成問わず、加工品に必須な香り付けという役割がなくなることはないでしょう。「製品の香りを豊かにする」という大義のもと、これからも必要な業界として存在し続けると思います。

休みを取りやすい


休みは取りやすい環境です。企業や部署に依るところが大きいですが、業界の雰囲気的には残業は少なく、休みも取りやすいです。

ワークライフバランスを維持するために重要なのが、ワークの時間です。無謀な労働時間を強いられたり、サービス残業が蔓延したりしているようでは、業界が安定でも個人としては幸福度が下がってしまいます。

ワークの時間自体もほとんど問題になりません。残業が多くなることがあっても、36協定はしっかり守られ、サービス残業もありません。少なくとも私の周りでは...笑

給料がそこそこ良い


給料が良いとは言い切れませんが、悪くはないです。売上が大きく上げ下げしない業界なので、会社は安心して、社員に給料として還元できています。ボーナスが年6ヶ月というのも就活・転職サイトでよく見かけます。

完全に私見ですが給与で言えば、「製薬>化学>香料≥食品」だと思います。業界平均を想定しているので、企業間では例外多数です。

女性が活躍している


調香師や研究員には女性も数多く在籍しています。香料業界は芸術的な要素を持っているからでしょうか?香りの繊細な部分を表現することは、女性の得意分野なのかもしれません。女性の社会進出が進んでいますが、それ以前から女性の活躍が目立つ業界です。
学会発表でも女性の発表者をよく見かけますし、女性の管理職もちらほらいます。

香料メーカーの悪いところ


一言でいうと成熟業界、ぬくぬくしてます。刺激が欲しい方には物足りないかもしれません。

日本市場は飽和気味


日本市場自体は成熟してしまっているように感じます。毎年のように売上が上がっていくことはありません。食品香料の需要が大きいので、香料の売上は食品の売上に依存しています。食品の売上が毎年上がっていくことは考えにくいですよね。高齢化社会の日本は人口が減っていくので、そういう意味では売上自体は縮小傾向になり得ます。
IR情報を見ても、大手は海外に力を入れているように思えます。

年功序列


古い業界であり、個人の頑張りが売上に反映されにくいことから、年功序列の色合いが強いです。どんな人でも一定基準を越えていれば、生活は保証されるとも言えます。そこそこの給料で程良く楽しく過ごすには丁度良い業界です。

IT分野など、変化の大きい業界から年功序列の崩壊が起こっています。人材の流動性が高いからでしょうか。日本の優秀な技術者が中国企業に引き抜かれている話はよく聞きますよね。

香料業界にもいずれこの波がやってくるでしょう。しかし、まだまだ先の話だと思います。なぜなら人材の奪い合いが発生しにくいからです。

社内に優秀な調香師がいたとしても、他の香料メーカーに存在を知られることはなかなかありません。カリスマ調香師の存在は、企業の守秘義務のもと、情報が流れてくることは少ないです。

ハングリー精神が少ない


上記のように、成熟業界で年功序列ということは、頑張りが反映されにくい業界です。香りへの興味関心を存分に発揮するモチベーションの高い人材も数多くいます。学会発表やセミナーに参加すれば、香料業界の研究の奥深さを垣間見ることができると思います。
しかし、業界全体で見た場合、ハングリー精神がある人材の割合は少ないです。香りの研究は面白い題材が多いのですが、直接的な香料開発や売上に繋げるのは簡単ではありません。

自社製品の話をできない


食品メーカーのようなBtoCであれば、開発した商品を友人・家族に自慢できますよね。それをモチベーションにする人も多くいます。残念ながら、BtoBである香料メーカーの場合、そうはいきません。どの製品に自社製品が使われているのかなどと言うことは厳禁です。

「うちの香料ってコカ・コーラのアクエリアスに使われてるんだー」

なんて言うことはできません。業界的に御法度とされています。その理由の一つは、香料を売っている相手への守秘義務です。もう一つは、同業他社への情報漏洩の防止です。

BtoCと比べると悲しい気もしますが、承認欲求は別で満たしましょう。基本的に、気になるのは最初だけで働くうちに全く気にならなくなります。

とにかくニオイが強い


研究開発施設や製造現場などのそこら中で何かの香りがしています。
ニオイの強いものを扱うため、身体にニオイが付きます。企業としても個人としても対策はされていますが、どうしてもニオイがついてしまうことはあります。いろいろなニオイに触れられるのは、香料業界特有の楽しさのひとつです。しかし、残念ながら良いニオイばかりではありません。もちろんゴミやヘドロのような香りを嗅ぐことはありませんよ。香りに興味があれば、短所には感じないと思いますが...

まとめ

トータルするとオススメできる業界です。人間関係で言えば、恋人よりも結婚相手としての色合いが強いのかもしれません。研究目線で言えば、嗅覚研究が活性化しており面白い時期だとは思います。

香料業界に興味がある方はお気軽にご相談ください。note,Twitter,質問箱で活動してます!

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