4月26日

 最寄駅から降りる階段で見かけた若い女性が、私と同じ駐輪場を使っていることが分かった。分かったからどうということでもない。その若い女性は、スマホを耳に当てて誰かと話しながら駐輪場まで歩いていた。豹柄の上着で、タイトなジーンズを履き、ハイカットのブーツを鳴らしていた。金髪の長い髪が強い風にあおられていた。
 上りになる歩道から左へ入る道がある。そこを通る九割は、駐輪場を使用している人であって、その女性も左に曲がっていった。警備員に挨拶することもなく、サドルを拭いてもらっている女性を横目に私は私の自転車のほうへと歩いていく。
「あめ、やんでよかったね」
 おじいさん警備員が私のサドルを拭きにきてくれた。
「よかったです。ありがとうございます」
「きをつけて帰りよぉ」
「はい」
 私は女性の横を通って出口へ進んでいった。女性はスマホを耳から外して、ジーパンのポケットに入れようとしていた時だった。
 風は荒れていた。上り坂はいつもより大変に思えた。必死でペダルを踏みながら駆け上がっていると背後からあの女性が追い越してきた。前傾姿勢で登っていく女性。風の抵抗を少しでも受けまいとしたその姿勢が、なんだか滑稽に思えた。

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