11月18日

 就職するため東京へ出てきた少女が、今ではどこにでもあるようなカフェでフリーターをしている。
 都会への憧れのために、何かの希望を胸にやってきた東京は、想像していた私の未来とはかけ離れていた。
 18さい。
「就職先は決まっていたけど、辞めたんです。嫌すぎて、直感でそこには就職したらいけない気がしたんです。でもこの先、何をしたらいいのか分からないんです。正直、不安でいっぱいです」
 少女の瞳の奥に、もう一人の震えている彼女の姿が映るような声で言った。
 そして彼女はネイルしたばっかりの爪の具合を確かめていた。艶やかな桃色のネイルだけが、東京という輝かしいものを体現しているように私は見えた。
 彼女はそのネイルを愛くるしく撫でては磨いている。五本の指を通して手の甲の青白さが照明に光る。少女の手であって、腕であった。
「友達はいないの?」
「友達は専門学校に通ってるんですけど、友達はそこで、また新たに友達を作っています」
 みかんせい。
「休みの日は寝てばっかりです。何もしたくなくなるんです」
 カフェで流れている音楽にかき消されそうだった。こうして東京に潰れていく、儚い少女の姿が目の前にあった。

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