7月26日

 小学校の運動場で散水スプリンクラーが水を撒いていた。
 大雨が降った後だったために水気の含んだ運動場には水溜りも沢山あった。
 学童の子供とスプリンクラーの距離は遠く離れてあり、その振り撒いた水は届かない。子供は長靴を履いた足元をおぼつかせながら歩いて、少しでも二人の距離が近づいたと思った場所を特定し、声を張り上げた。何をやっているんですかと子供が問うと、スプリンクラーの後ろに座っていた男性職員が点検のためだよと答えた。
 子供はこの職員の名前も顔も知らなかった。
 男性もその子供の顔に見覚えはなく、名前も思い出すことができなかった。寧ろ夏休みに入ってから子供の顔を見る機会もなく、専ら職員室での事務作業ばっかりだった。だから珍しく子供の顔を小学校で見た男性は、不思議な思いと同時に問いの経路を素早く立てて答えを間に合わせた。
 育成室の子であって、郊外からの子供なのだろうと検討した。そうすればこの理論も納得できることができた。
 夏の雨は梅雨の記憶を思い出して、じめじめ感を再度味わせるようだった。
 

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