4月24日

 長く先の見えないほどに続く線路を女性車掌と一緒に見ている。一号車、運転席のガラス越しに寄りかかり、私は華奢に座って前だけ見つめる女性車掌とその景色を視界に映していた。雨だった。
 急行電車、いつもは長い間揺れ動く車内のきまり悪さに居心地を悪くすることもあったのだが、この日はそんな時間を忘れるようであった。一本の長い線路。見晴らしがよく、自動車では味わえない爽快さと遠慮なく運転できる心地よさに陶酔するような線路道だった。
 女性車掌の後ろ姿に、今日の社会が窺える。ひとつに結った黒髪が、速度を上げともなう微々たる振動のたびに、静かに肩甲骨を撫でるように揺れていた。
 雨足は弱かった。だが運転席ガラスには激しく雨粒は打ちつけるようで、風を浴びた雨粒は白い糸になり、伸びていく。時折ワイパーが拭ってくれて、また果てもなく続きそうな線路道を見せてくれるの。その繰り返しだった。そしてそれは飽きのくることがないものだった。
 また私のほかに小さな女の子もその景色を眺めていた。横には母親がいた。女の子の肩に手を置き、片方の空いている手でスマホを見ていた。私は視線を戻して、画面に広がる景色にもう少しの間心を移してみようと思ったのだった。

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