vol.3 呂布カルマ「スピーカークリンチ」②
続いて、Verse3です。
一番多く出てくる響きは "ou" でしょうか。
個人的には「Wack MCに請求慰謝料」というフレーズが好きです。
また、
磨くと輝き出す原石と 削れて減ってくだけの石ころ
は、「才能あるやつ」と「才能ないやつ」の比喩ですが、表現が美しいです。
曲の最後の8小節です。
最初の2小節では、"au" の響きを7個畳みかけます(「カス」の重複含む)。
そして、3小節目から6小節目ですが、見てのとおり綺麗に色分けがなされます。
"oo" "aa" "eua" の響きの組み合わせになっています。
殺されるか 転がされるか 踊らされるか 泳がされるか
では「されるか」が意味としては重複しており、韻というよりは反復に近いですが、その後の
言葉は刹那
で綺麗に踏むことで、回収されるというか、効果的な響きになります。
そして、締めでは、
「キワモノラッパー」と「"詞が物語"る」で綺麗に6文字踏んでいます。
このライムは個人的にはとても新鮮でした。そしてこの曲を振り返ってみると、かなりぶっ飛んだことをずっと言っています。
Verse3は割と「ラッパーに向けた格言集」とも取れますが、Verse1、Verse2は余裕で狂ってます。
基本的に下品なことをずっと言っているのですが、独自のDopenessとCoolnessで処理していくため、とても味のある仕上がりになっています。
笑えるのか笑えないのか、浅いのか深いのか、どっちなんだ、というギリギリの絶妙なバランスとその世界観に呂布カルマらしさを感じるし、これはもうセンスですね。
そうした流れの中でこそ、
どっちがキワモノラッパー 俺の書く詞が物語る
というラインが説得力をもって立ち現れます。
~まとめ~
MCバトルでは「韻踏む遊びはもう辞めたんです」などと言っていますが、楽曲では踏みまくっているのは周知されつつありますし、呂布カルマにしてみると、これは遊びではなく、音楽であり芸術なのでしょう。確かに美的センスを感じます。
全体を通して韻に関して言えば、
① 短い韻を細かく散りばめてグルーブを作りつつ、
② バースの終わりの聞かせどころでは、長めの韻や入り組んだ韻を使う
というのが傾向としてみられたかと思います。
「スピーカークリンチ」という意味を僕は理解していないのですが、この曲は割とテーマを絞らない、フリースタイルな(即興という意味ではない)楽曲だと思います。
だからこそ、呂布カルマのワードセンスやユーモアセンスが存分に発揮されたリリックになっているのではないでしょうか。
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