～解体韻書～ Vol.16 ZORN「Stay Gold」

　続いてEP『925』から６曲目「Stay Gold」です。

　ビートは変わらずBACHLOGIC。BPMは74くらい。Hookを挟みverse1が16小節、Verse2が20小節となっています。

Verse1です。3小節目以降は<aaia>の韻が続き、9小節目頭までで12個ほど踏んでいます。「傷や物悲しさ」「気付きゃ大人だしな」、「仲間たちが財産」「馬鹿騒ぎな毎晩」「朝方には解散」などは長めの韻を連続して綺麗に踏んでいます。

9小節目～12小節は<ua>または<au>の音が目立ちます。「修羅場の数々」「TSUTAYAのアルバム」「夕方をたゆたう」など詩としても破綻せず長めの脚韻を落としていきます。

13小節から「時間は経過」「美談じゃねーな」「みんな家庭や仕事」「仕方がねーか」と<iaae-a>の響きで連続して踏むことで緊張感を高め、「葛飾の顔」「無くしたのかも」といった印象的なフレーズでバースを締めます。

Verse2です。「生活は変わり」「贅沢な悩み」「明白な話」と長く硬い韻で幕を開け、「初心持って」「調子乗んねー」「正真正銘」「Homieの夢」、「交わした会話」「形変わった」「中身はあんま」「渡したパーカー」と同じ韻を4回は踏んでいきます。

またみてーな　よしなりと小山田の肩パン

　のラインは<a>の音が続いているという点では、前の流れから韻を形成していますが、キレイには踏んでいません。それでも決め所の8小節目で持ってくるという事は、ZORNの逆説（Vol.11 Lost参照）を考えるとどうしても言いたかったことだと考えられます。

　9小節～12小節では、「十分だった」「順風満帆」、「きたねー大人」「知らねーよコラ」などが印象的な韻でした。

　13小節～16小節は、「憂鬱なグレー」「窮屈な胸」「俯くはずねー」、「タバコと缶コーヒー」「またこの散歩道」など意味の流れも無理なく、長めの韻を当然のように落としていきます。

　ないものねだりよりもあるものえばり

　ZORNのパンチライン日めくりカレンダーを作るとすれば、絶対に入れたいフレーズです（笑）

　18小節～19小節は「原点」「レペゼン」「底辺」「てっぺん」「経験」「永遠」と細かい韻で緊張感を高め、最後は「純真無垢に」「チューリップ組」のZORN節で締めくくられます。

　【まとめ】

　「Lost」が成功した現在の立場から家庭を顧みる曲だとすれば、「Stay Gold」は地元の仲間を顧みる曲だと思います。

　「まいちゃん」「小山田」「大ちゃん」「よしなり」と地元メンツしか分からないような個人名も出てきます。

　韻の量・質ブレることなく、成功よりも仲間を大事にするという姿勢が、ノスタルジックに表現された１曲でした。

　次は、ラスト1曲「家庭の事情」です。