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~解体韻書~ Vol.13 ZORN「Bars Wars」

 続いてEP『925』から3曲目「Bars Wars」です。

 自身が音楽で戦っていく姿勢やそのスタンスを「戦争・戦闘」関連のワードで例えていくというリリックになっています。

 KREVAも「言葉のゲームだったら勝てる気がしない」言っていましたが(動画リンク参照)、まさにそういう類の1曲であり、とてつもない完成度だと思います。

 では早速リリックを解剖していきましょう。

 ビートはBACHLOGIC。BPMは91くらい。Hookを挟んで16小節×2です。

【Verse1】

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 最初の8小節です。4小節でメ韻は変わります。

 前半は<i-oaie-e>の音で6回踏んでいます。「しっぽ巻きメーデーヒット出し席巻」は韻の飛距離が出ているラインです。

 後半は「VansにWTAPS」「シャツにカーゴパンツ」「隠しカモフラージュ」「葛飾のキャンプ」と小節のケツごとに<auiaoau>の音で踏んでいます(<aui>と<aoau>で色分けしています)。その間に「パンチラインアーミーナイフ」という気持ち良い韻も挟んできます。

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 次の8小節です。こちらも4小節でメ韻は変わります。

 前半は<ouue-i>という音で6回踏んでいます(「報復兵士」「ほふく前進」「喪服チェンジ」「もうすぐ全員」「持つ忠誠心」「おむつケーキ」)。<ouu>だけの音でみると7回踏んでいると思います。

 「喪服チェンジさせる もうすぐ全員」と少し怖めなことを言いながら、「おむつケーキ」で締めるあたりがZORNらしいところです。ここは韻の飛距離を意識した部分というよりは、リリックにあえて”抜け”を作っている部分だと思います。

 後半は<aueia>という音で7回踏んでいます(「マスメディア」「カマすゲリラ」「革命家」「爆撃犯」「まず目には目」「拡声機貸せ」「作戦Bはねえ」)。最後の2小節の「まず目には目 拡声機貸せ 作戦Bはねえ」だけみると、<aueiae>で全踏みしています。

【Hook】

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 やはりHookでも韻の密度は高いです。2小節ごとにメ韻が変わっていきます。最初の2小節は<eeuo>で3回、次の2小節では<aaai>で3回、<uiaen>で2回、その次の2小節では<(u)i-ooi>で4回踏んでいます。

ツイートより スピットのみ ビート乗り 捧ぐ追悼の意

 はめちゃめちゃスムーズで気持ち良いラインです。

【Verse2】

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  Verse2の最初の4小節です。最初の2小節はフローが少しフリーキーになり、言葉を詰め込むように「特攻志願兵」と「頂上に刺せ」で踏んでいます。

ミッション お子様ランチの旗頂上に刺せ

 は、Verse1の「DropするBomb おむつケーキ」と同じような、シリアスな光景の中に急に子供っぽいものが飛び込んでくるというZORNならでは世界観です。(笑)

 後半2小節では「狼煙上げる」で韻を引き継ぎながらも、「マルボロメンソール」と「丸ごと戦争」という6音の韻を踏んできます。

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 次の4小節です。「少数精鋭」「取るてっぺん」は<ouee>の4音の韻です。その後は「オリコンビルボード 放り込むヒップホップ もちろん実力」と<oio(n)iuo->という音を3連続で全踏みしています。

 「話題騒然」と踏んでいる「ヤバいよこせ」はバースのケツにもたれかかるようにフローしてアクセントをつけています。

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 残りの8小節です。前半は<e-oaei>という音で4回脚韻を踏んでいます(「援護射撃」「ペイントじゃねえし」「かっけえのが正義」「顕著な例」)。最後の4小節は<auaea>の音で3回踏んだ後(「猿真似じゃなく」「託された」「勝つまでは」)、「ヘッズの声」と「節子それ」で踏んでいます。

 欲しがります 勝つまでは(元ネタ:欲しがりません勝つまでは)
節子それサンプリングやない パクりや(元ネタ:火垂るの墓のセリフ)

 など、戦争もののパンチラインをオマージュしています。「欲しがります勝つまでは」は韻どうこうではなくパンチラインだと思います。

サンプリング」と「パクり」も踏んでいるっちゃ踏んでいます。

 こういう元ネタありきのフレーズの間に「上がる軍配とヘッズの声」ってさりげなくうまい事言っているあたりも隙がないな~と感じます。

【まとめ】

 前回の「Keep it real」でも韻の大喜利を一人でやり続けていると感じたのですが、この曲に関しては、「戦争・戦い」と、お題が明確であったからこそ個人的には大喜利感を一層強く感じました。そしてその大喜利がとてもつもなく強い。IPPONグランプリでいうバカリズムですね。

 リリックを大喜利とか言ってしまうと味気ない感じがしちゃいますが、冒頭にも言ったように、この曲は言葉のゲーム性が高いのでそういう言い方もできるかと思います。

 リリックの大半を戦争や戦いにからめて、相当な数韻を踏み、かつ面白い事を言っているという・・・。「Evergreen」という曲の中で「俺の歌詞を教科書に載せろ文科省」と言っていますが、この曲は本当に教科書に載せていいくらいだと思います。

 次回は、「Saves Me」です。


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