見出し画像

産婦は街に出て授乳する(セオリー編)

[Summary]
授乳室は産婦を外に連れ出すための良いものである。
でも授乳ケープも使わせてほしい。
授乳が「汚いもの」という風潮はやめてほしい。

先日、カフェなどオープンスペースで授乳ケープでの授乳は、なんかやだって意見が新聞に掲載されていたらしい。私のばあい「授乳ケープはいざってときの保険」で持ち歩いていた。そもそも、それってたぶん、授乳室が使えなかったとかでやむを得ないケースだろうから許してくれよ、と思う。

とりあえず、子供を産んだことがある人でも「外で授乳すること」については、せいぜい2年、多くの人は1年程度のことで、「喉元過ぎれば熱さを忘れ」ている気がするので、忘れないうちに書いておこうと思います。

ちなみに私は、子供が5ヶ月で仕事復帰、ほ乳瓶拒否だったために、育休をとっていた夫に子供を連れてきてもらったりして外での授乳は割と経験豊富なほうなのではと思います。出張帰りの新幹線でも授乳しました。これを踏まえて、しかし子供が4ヶ月くらいのときに授乳室使用を模索していたときのことを中心に考えます。

★なぜ外で授乳するのか

「母は出かけるべきなのだ」

そもそも、赤ん坊が1~2ヶ月ならともかく、ずっと家で赤ん坊と生活していると病んできます。子供用品は出産前にある程度集めておくとしても、それなりに買い物に行く必要があります。仕事に復帰するママなら準備もあります。服のサイズが変わっているかもしれません。 それ以上に、出かけないとまずい理由としては、(1)体力の回復のために歩くところから、(2)精神的に閉じこもらないため、世の中と隔絶されないため、(3)赤ん坊ワールドの時間・空間感覚から少し離れるため などがあります。

(1)妊娠中は、運動不足で体力が落ちます。妊婦はアクティブに動くのは難しい。身重じゃなくなった産後、体力が回復してきたら、多少外に出た方が絶対いいです。

(2)産後、家で赤ん坊と二人きりとか、止めた方がいいです。とりわけ都市部の人々は、家でずっと過ごすように家ができていないというのもあって、精神的にヘンになっていくような気がします。虐待で死亡例というのは0歳児が多いといった話もあることから、精神的なケアとして、外に出てみるというのは重要だと思います。友達に会って話すとか。家に来てもらうというのもありですが、家はとっちらかってる可能性が高い…。外で会うの、いいじゃないですか。

(3)赤ん坊の世話をしていると、24時間を3時間おきとかで授乳とかで昼夜感覚は狂うし、ベビーベッドと自分のベッドと台所の行き来で2ヶ月くらい経ちます。時間感覚はおかしくなってるし(私は電車を乗り過ごしたり、乗りそびれたりしてびっくりした)、空間感覚もおかしくなっています(私は階段が怖かった)。とくに都市部の狭い部屋に住んでいる人々は、びっくりするほど空間感覚が突如失われる恐れがあります。

こうしたことから、赤ん坊が3ヶ月くらいになったら出かけてみるのがいいと考えています。あるいは、そうでなければ、社会に復帰しにくくなるのではないか、と恐れてもいます。そうした理由から、外に行くために、赤ちゃん連れを許容してくれるという設備である、オムツ替え台や授乳室は、とてもありがたい設備だと思います。

出かける意義はわかったけど、授乳は?

「授乳は家でして、アッサリ帰ったりしたらよいのでは?」 あるいは「人に預けて1人で出かけては?」と疑問に思う方は多いのでしょう。あと、「こんなところに赤ちゃん連れてきてかわいそう」とか。

まず、「あかちゃんがかわいそうかどうかは、社会の寛容さに依存している」し、「母親がアンハッピーなことで、赤ちゃんはかわいそうになる」ので、外に赤ちゃんを連れ出すのが「かわいそう」というのはヘンですね。 次に、授乳の頻度についてです。 赤ん坊が半年くらいになると、大人の食事とそう変わらないタイミングでの授乳だけで済む子供もいますが、それまでは、もっと頻繁です。生まれたては2~3時間ごと(間は1~2時間)、3~4ヶ月でも4時間ごとくらいです。つまり家で授乳→(誰かに預けて→)出かけて→帰ってから授乳をするには、往復含めて長くて3時間。できないことはないです。しかし、買い物したいものが近所で買えないこともままあります。ベビー用品店は各駅にありますか? ないです。 では、ミルクをあげてもらっておいて長くでかければ? これは不可能ではないです。母乳以外拒否、というのでなければ。

また、完全母乳などを意図せずやっていると、授乳のタイミングでおっぱいが張ってきて痛くなります。一度スキップするだけでも、結構しんどいです。これについては、ママのほうは搾乳器を持って行って、トイレで搾乳して帰ってくることでなんとかなります(私はやってた)。

ただ、(よくあるらしいけど)赤ん坊がほ乳瓶を拒否する場合は、難しいです。ミルクをあげたくないという考え方の人もいますし、誰もが赤ちゃんを安心して預けられる相手を持っているわけではないので、「赤ちゃんを置いて出かける」っていうのは、現実的な選択肢でない人もいます。(もちろん、赤ん坊を置いてでかけるほうが、楽ですけどね。)

そのようなことから、外で授乳できるという選択肢があることで、「外出できる」ママが増えることはいいことだと考えます。

★授乳室だけでよいのか

 実は今でこそ検索して、授乳室があるところに行くということができますが、そんなにあちこちにあるものではありません。ファミレスにもないし、各駅にあるわけでもない。駅に複合商業施設があっても、授乳室がないことはままある。

そうしたことから、「授乳室」がたくさんあるところにはたくさん赤ちゃん連れが集まるし(授乳室やオムツ替え台が充実しているららぽーとに行くと、こんなに赤ちゃんっていたのか!ってびっくりするくらいベビーカー連れがいる)、ないところでは赤ちゃんはあんまり見ない。これは、みな、出かけたいけど、行く場所を選ばざるをえないということだと思います。

少なくとも私の近所で授乳ケープで授乳できるじゃない? って思って行動してる人は少ないのではないかなと思います。授乳ケープでの授乳をしている人は行動範囲内に「安心して行ける場所がない」可能性が高いのではないか。別に、好きでやってるわけじゃないと思うんですよね。だって、授乳中って、普通に赤ん坊を連れているより、ママ自身がかなり無防備かつ、無防備すぎる赤ん坊を連れていて、警戒するので疲れると思うのです(もし鞄をひったくられたとしてもダッシュで追いかけられる状況ではないです。貴重品は体にくくっておきましょう)。それでも、授乳ケープで、外で授乳するって、相当追い込まれてるような気がするのです。

それに、どこで授乳しなければならなくなるかは赤ちゃん次第でもあります。うちの子のように食いしん坊で腹持ちがよくて時間がきっちりしている子ならスケジュールが立てられるけど、そうじゃなくて急に大泣きしだしたら? わ、まだ目的地に着いてないのに授乳しなきゃ……授乳室ない! そう、授乳室ってそんなにあちこちにないのです。各駅にすらない。だから、授乳室が充実したらいいなと思うのと同時に、「授乳室があるんだからそこでやれ」と授乳ケープに対して世間が不寛容になるのは、本末転倒だと思うのです。授乳室はママと赤ちゃんが安心して過ごすための場所であって、喫煙所みたいにばっちいものを隔離する場所じゃない。

そもそも、女子供のことは「恥ずかしいこと」といった差別意識がなんとなくあるのかなあと思います。授乳は、排泄ではないし、性行為でもない。赤ちゃんの食事です。何がダメなのか、と思う。まあ、受け入れられない人がいるのは生理的な嫌悪感かもしれないので仕方がないけれど、そういった人たちがマジョリティであるとすれば、変えていかなければならないと思います。

なぜなら、子連れになったママが社会に出て行くことが必要だと思うからです。長く家に引きこもって社会から隔絶して、仕事をしなくなるようなことは、避けなければならない。「女性活用」という用語は好きではないですが、今の日本の人口比率と経済を考えれば、女性が、出産前までに積んできた仕事での経験をすべて無にして、育児に励むようになって、のちのちパートタイマーとして誰でもできるような仕事に従事するのは、人材の無駄遣いでしょう。できるだけ、それまで積んできた経験を生かして、生産性の高い労働者として、労働市場に早く戻ることが必要なのではないでしょうか。だとしたら、母乳を出している段階で赤ん坊連れで外に出るママがいるのは、別に悪いことではないはずです。むしろ歓迎してほしいくらいだとも思うのです。 それを、「子供がかわいそう」などと言って、受け止められない社会のままでは、やっぱりしんどいな~と思うのでした。

※授乳室ってどんなとこ? 授乳期に書いた記事はこちら↓ 

そのうち、新幹線を含めた授乳室経験と、イマイチ設計がうまくないなと思う展望について書きたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?