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新幹線での授乳編(産婦は街に出て授乳する 2)

娘が6ヶ月になるとき、どうしても聞きたい発表があって、また、赤ん坊連れでどこまで行けるか試してみようと、ゴールデンウィークに古巣の京都まで行ってみることにした。京都は第二の故郷みたいなところだから、目的地としては悪くないと思ったけど、かなり大変でした。

とりあえず、お出かけ&授乳の経験談はどんどん共有された方がいいと思うので、具体的な話を書いておきます。

[考える種]
私が参ったのは「授乳ケープでの授乳は人が多いところでは憚られる」ことであった。それは、授乳中は無防備だし、人が多ければ多いほど、危ない目に遭う確率が高くなるから単純に怖かったのと、空いているベンチがなかったから。
でも人が多いところにそう都合良く授乳室はない!
時間にも制約がある。
結局、運良く空いていた誰でもトイレで授乳したが、これは良かったのだろうか……。

授乳ケープでの授乳に対しての不寛容が、他の人の不便を産んでしまわないだろうか?

時間通りに行かないのは子連れだからだけじゃない

まず、東京駅までのJR線が遅れたために、がんばって計算して取った指定席がおじゃんになった。

1時間半もバッファをみて、東京駅の授乳室で授乳してから新幹線に乗るつもりが、バッファ以上を吸い尽くしてしまったのだからもうどうしようもない。娘は幸いおとなしくしてくれていたが「やっぱり家にいた方が良かった……」とも思った。(でも家から出ないという選択肢は常々よくないとも思っている

―後悔しても仕方ない。なんとかしなきゃ。

折しも大型連休。新幹線も自由席は廊下まで立って乗る人までみっちりいるような始末。1時間くらいあとの始発に並んで、席に座ることはなんとかできた(連休のときは、指定席を乗り逃したら、JRの事情でも、新しい指定席を取れるわけがない。長蛇の列のみどりの窓口に並ぶより、自由席の列に並んで席を取る方がよい)。夫が並んでくれているあいだに、授乳をしなければ、と右往左往。することになった。

「こんな人が多いところで、赤ん坊連れで夫と別れるべきではなかった。怖い……!」

子供連れになって、最悪の展開がすぐ頭をよぎるようになったが、これは防衛本能なのだろう。子連れの熊みたいな凶暴さだ。

人が多すぎるので、授乳ケープでの授乳は危険だと思った。よく思わない人もいるからだ。しかし、授乳室はとても遠い。一度改札を出て、大丸などの上の方にいけば大きな授乳室があるのはわかっているが、そこが満室だったら……。すでにバッファを使い尽くし、待ち合わせに大幅に遅れるだけでなく、タイミング良く取れた席を見送ることになるかもしれない……。

誰でもトイレで授乳して懺悔する

考えながら歩いていると、人気がすくないところに誰でもトイレ! 使ってる人も奇跡的にいない! 助かった。と思いながら、そこでオムツ替えて、授乳もすることにした。

でも、5分くらいすると、外で子供が何度かノックしてきて「ママ~、この人おなか壊してるのかな、出てこないね!」とでっかい声が聞こえた。「ごめんなさい……!」と思いながらスルーして授乳をなんとか完遂して、(15分くらい占領してしまった)夫と合流。お子さん連れは外で待っていなかった。子供はともかく、どうしても必要な人がドアの外で待っていなかったことだけが、罪の意識を軽減させてくれた。でも、オストメイトなどが必要な人が前を通り過ぎていったかもしれない。そうした人の、「子連れが誰でもトイレを使ってて、待たなきゃいけないのは困る」という投書などを見るたびに、罪の意識に苛まれる。

「授乳室がないなら授乳はトイレでやれ」って言う人もいるけど、本来それはいいことではないと思う。便所飯がかわいそうってのももちろんそうなんだけど、所要時間が違いすぎる。狭いトイレを探してやればよかったか、とかそういう話でもないはずだ。そもそも子連れは荷物が多すぎて、狭いトイレでなんかするっていう選択はとりづらい。ベビーカーとか。

なぜトイレでしなければならなくなったか。

私は「なぜ、授乳ケープで外のベンチで授乳できなかったのだろう」あるいは、新幹線の中で授乳するまで待てなかったか? 授乳室は? と自問する。(ごった返してて、空いてるベンチもなかったんだけど)たぶん、公共の利益的に考えれば、そっちのほうが、「トイレを使いたい誰か」の不利益にならずに済んだのに。

そこがたとえトイレでも、個室がよかった理由は、「怖かったから」だ。眉をひそめてにらまれることが、ではない。それどころか攻撃してくる人がいるかもしれない。そのとき私は子供を守れない、と思った。折しも、ベビーカー連れがすれ違いざまに殴られる事件などがあった頃である。それを、弱者とわかってる女1人、不特定多数の人間が大量にいるところで、布一枚で、自分と赤ん坊を守れる気はしなかった。たとえ無事に済んだとしても、私が落ち着かないと、赤ん坊はその不安を感じて、泣き出したりする。それがいやだったのだ。

もし、誰でもトイレが空いてなかったら、私は人通りがすくない地下の廊下で地べたに座り込んで授乳したかもしれない。

連休の移動。不要不急かもしれないけれど、なんだかんだで子連れの帰省客は多い。授乳室を増やすのも一つの手だが、それでは解決しないと思う。日本の労働者はカレンダー以外のところで休めないからだ。(これはきっともっと柔軟な対応ができるようになったほうが幸せになれるはず)授乳室の数をピーク時に合わせるなんて対応は、コスト的に無理だろう。

そもそも、なぜ公共の場での授乳がはばかられるのだろう?

新幹線の席で授乳ケープを使って授乳して良いか

新幹線の中での授乳もそうだ。

授乳ケープで授乳することを考えて、出かける前に検索をしてみたら、「隣の席の人が授乳していて気持ち悪かった」とかいう意見をたくさん見てしまい、危険だなと思った。下手すると2時間以上隣に座っていることになる相手が、不快に思っているとしたら……。赤ん坊が泣いているのをあやして、席を立つといっても、廊下も満杯で(指定席なら大丈夫だが自由席は立って乗る人がいっぱい)隣の人にはすでに迷惑をかけている。その状態で、私は授乳ケープを取り出し、乳首にもたもたと赤ん坊が吸い付くまで、そしてのみおわるまでの沈黙に耐えられるのだろうか?

新幹線には、多目的室というのがあって、優先順位的には障害者の人や急病人が高く「そういう人たちがいないときには」使わせてもらえる。ただ、多目的室は車内に1部屋だか2部屋しかない。連休などの超混んでるときには、まず多目的室の近くの車両にいないと、アクセスできなくて、使えない。私たちの場合は、近くの車両の指定席を取っていたがおじゃんになったので、車内では授乳できないという覚悟が必要だった。計画は頓挫したし、どうしようもなかった。

よく考えると、子連れで帰省ってみんなが休みのときにする人が多いから、全員に「授乳室に行け」をやるのって無理だよね…。これは日本のサラリーマンの家族の宿命というか、カレンダー通りに働くってそういうこと。

ああ、その連休の京都行きに話を戻すと、帰りは、多目的室で授乳することができた。車掌さんをつかまえて鍵をあけてもらう必要があるのだが、そんなに頻繁にまわってこないので、夫に車掌さんを探しに行ってもらって、あけてもらった。部屋は大人が寝転べる広さがあって、窓もあり、まあまあ快適だった。

授乳室のメリットと不便さ

まとめると「授乳室があるんだから、授乳ケープで授乳するとかはしたない」という風潮は、子連れの行動範囲を制限するなあ。まあ強行突破した私も私だけど、という話でした。

赤ちゃんがいるからといって家に引きこもってるのはよくない、と思ってるので、多少人に迷惑をかけることになっても、(ものすごく危険でない限りは)その場でベストと思える選択をしながら、アクティブにやっていくのがいいと思うし、そういう人が増えたほうが、子供は増えると思う。

授乳室というものがあるんだから授乳室に行けっていう人は、どこにどのくらい授乳室があるかわかってないのだとおもう。限られた数の部屋が、大型ショッピングセンターや駅にあったりなかったりするだけだ。そういうところにいけば子供連れは少子化って嘘なんじゃ? とおもうくらいたくさんいる。集まってきている。でも、計画が少しでも狂うと、授乳室にたどり着く前に赤ん坊は泣き出すし、そもそも混雑する場所、混雑する時期だったら絶対数が絶対に足りないし、足りるようには作れない。だから、その場の判断で授乳室を「使いたいけど使えないね」になるのも分かっていただければと思う。あなたの目の前で授乳ケープでの授乳を始めた人は、好き好んでそこで授乳してるわけじゃないはずだ。

そもそも授乳室って「社会の不寛容からママと子供を守るためにある場所」なんだと思う。本当は、社会が十分に寛容であれば設置する必要もない。本能的には、そんなに街中で授乳したいとは思わない。外はそれなりに危険だからだ。しかし、働こうと思ったとき、子供を守ってアナグラに籠もりたいという本能に抗わなければならない。アクティブでいようとすると、社会の方に寛容さを求めたくなってしまう。それが産婦だと思う。

村落共同体があった頃は、きっと出会う人は身内だったし、安心してそのへんで授乳できてたと思う。今、都会では、それがない。なにかあっても、他人が助けてくれることは少ない。子育ては、しにくい。だから少子化になるんだろうなと思う。

じゅうぶんに余裕をもって行動していたとしても、どこかでイレギュラーが発生しがちなのが赤ん坊連れである(急に下痢して服が汚れたり、慣れない環境で吐いたり)。たしかに、周りが見えてないときがあるかもしれない。私は夫と2人で1人の赤ん坊連れで行動してるだけなのに、それでもときどき、周りが見えなくなってたと思う。それは本当に反省すべきであるし、しかし一方でそのくらいが限度かも知れないなとも思う。だから、社会の方が寛容になって欲しいなあと思うのであった。

まとめ

・あんまりにも混んでる連休や盆暮れ正月は、がんばって計画しても全部がおじゃんになるとやっぱり人に迷惑かけるだろう。
・授乳室がないならトイレで→むしろ誰かの迷惑になるよ
・授乳ケープで授乳するのは、身の危険を感じる
・授乳室、たぶんピーク時に足りるように増やすというのは不可能

→外での授乳に寛容な社会になってほしい(たぶん、泣きわめいている子供がとなりにいるより楽です)

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