場面指導の考え方。場面指導的な面接課題の回答の仕方を,戦略的思考で考えましょう!具体例で,詳しく,説明します!

場面指導を適切に行うにはどうすればよいのでしょうか。

場面指導は場当たり的な思いつきを話すだけではダメです。

場面指導には戦略的思考が必要です。

場面指導が上手くなるとは,教師として,戦略的に指導できるということに他なりません。

場面指導を適切に行うには,

場面分析能力

指導目標設定能力

指導方法選択能力

の3つの力を養う必要があります。

この3つのうち,どれが欠けても場面指導は失敗します。

場面分析能力とは,その状況で何が問題なのか,何が課題となっているのか,何がなされなければならないかを判断する能力です。

指導目標設定能力とは,その状況において,何を指導目標,あるいは,対応目標としなければならないのかを,状況に応じて考える能力です。

状況によっては,特に指導・対応する必要がない場合もあります。

また,緊急,かつ,慎重な対応が求められる場合もあります。

その見極めもできなければなりません。

指導方法選択能力とは,指導目標を達成するために,どのような指導方法をとるかという言動選択の力です。

どのような語りをするのか,どのような行動を取るのか,一人で指導するのか,他の教員・管理職と共同して対応すべきなのか,この判断を誤ると事態は悪化します。

教師として,大人としての選択です。

具体的な,場面指導の例題を見てみましょう。 

「食物アレルギーがあるので,給食ではなく弁当を明日から持参させます,と保護者から連絡がありました。学級担任としてどう対応しますか。」

皆さんなら,どのように対応しますか?

さて,ここで,次のような対応を念頭に描いていた人は残念ながら,アウトです。 

誤答例1:「給食はみんなと一緒に食べるものだから,みんなと同じものを可能な限り食べることが大切で,アレルギーがないものはみんなと同じものを食べるように指導します。」

誤答例2:「みんなが給食を食べているのに,一人だけ弁当にするわけにはいかないので,弁当持参はできないと伝えます。」

誤答例3:「弁当持参にするかどうかを判断するためにも,本当にアレルギーを持っているかどうかを調べなければならないので,調べてアレルギーを持っていると分かるまでは,弁当にすることはできません。」

誤答例4:「明日からと言われても,それは無理なので,明日は給食を食べてください。」

誤答例5:「わかりました。子どもの命が何よりも大事なので,明日から弁当にしてください。」

まず,場面分析能力から見ていきましょう。

この場面では何が問題となっているのでしょうか?

解決すべき課題は何なのでしょうか?

ある子どもが給食を食べられないということのみでは,そんなに深刻な問題ではありません。

電話してきた保護者も学校にクレームを付けているわけでもありません。

ここでは,保護者が学校に「子どもが食物アレルギーを持っている」ということの情報提供をし,そして,「明日から,アレルギーを避けるために弁当を持参させたい」という希望を語っているだけです。

防御的になる必要もありませんし,保護者を教え諭す必要もありません。

状況はかなりシンプルです。

例えば,子どもが「死にたいと言っている」とか,「いじめられていると言っている」という電話が保護者からかかってくれば,事態は深刻です。

しかし,今回の場面指導の例の場合,現段階では,深刻度はソフトレベルです。

しかし,放置するわけにはいきませんし,放置すればとんでもない事態に発展しないとも限りません。

せっかく電話してきた保護者への真摯な対応も必要です。

では,どのように対応するのか。何を目標にするのか。それが次のステップ,指導・対応目標設定能力の出番です。

この状況での指導・対応目標は,

1.子どもが本当にアレルギーかどうかを確認する。

2.アレルギーであった場合,子どもの安全を図る。

3.子どもがこのことで嫌な想いをしないようにする。

ということになるでしょう。

この状況下では,給食の重要性を指導する場面ではありません。

指導行為とは指導目標を達成するために行う営みですから,指導目標に関係ないことには,この際,触れません。

ですから,この場面指導では,給食の意義や重要性には触れる必要はありません。

従って,この場面では,指導・対応によって,アレルギーの事実確認を行う,子どもの安全を守る,子どもが嫌な思いをしないようにする,という3つの目標を達成すればよいということになります。

ここで,3つめの指導方法選択能力のステップになります。

つまり,どのような戦略でどのような語りで,どのように話を持っていくかということです。この時に重要なのは,保護者も納得し,子どもも守られ,学校としても自信を持って行える指導・対応でなければならないということです。

どんなに正しくても,一人の教師が情熱だけで暴走したのでは,学校も困りますし,管理職も困惑するでしょう。その辺りの配慮も社会人,職業人としての教師には必要です。

さて,今回の場面では,子どもが本当にアレルギーがどうかを確認しなければなりません。

と言って,最初から疑ってかかるわけにはいきません。

一般の教師にはアレルギーに関する医学的知識はありませんから,これは,専門的知識を持っている人の意見が必要です。

最終的には医師の診断書などを提出してもらう必要もあるのでしょうが,学校内ではまずは,養護教諭などと連携する必要があるでしょう。

また,給食を弁当にする権限は一担任にはありません。

これは管理職の関与がどうしても必要です。

担任がイエス・ノーを言える問題ではないからです。

しかしながら,診断書や管理職の判断をもらうには時間がかかるかもしれません。

今日中にできるかどうかはわかりません。

だからと言って,明日は給食にしなさいとは言えません。

本当にアレルギーで,明日の給食でアレルギー反応が出るようなことになってはそれこそ大変です。

子どもの命の問題です。

ここまで考えてくると指導・対応の方向が見えてきます。言葉にしてみましょう。

保護者に電話で語るように書いてみます。

「本日は,大切なことでお電話くださってありがとうございます。

お子さんがアレルギーをお持ちだということで,給食を弁当にしたいというご要望なのですね。

給食を弁当にするためには,校長を始めとしまして学校内での協議が必要になってきます。

その過程で,お子様のアレルギーに関して,主治医の先生の診断書等も必要になってくるかもしれません。

まずは,校長・養護教諭などを交えまして,校内で検討して改めてご連絡させていただきます。

ただ,明日の給食を弁当にということに関しましては,お子様の安全も関わってきますので,これから直ちに管理職等と協議しまして,どのように対応させていただくかを,早急にご連絡いたしますので,この電話後,しばらくお時間をください。

その結果,明日,お弁当にしていただくような場合には,お子様が気持ちよくお昼ご飯を食べられるように,別室でお弁当を食べるなどの選択肢も協議させていただきます。

まずは,校内で検討いたしますので,今しばらくお時間をください。

後ほど,あらためてお電話させていただきます。」

のようになります。

重要なポイントは,学級担任であるあなたには,子どもがアレルギーであるかどうかを認定する能力も資格もなく,また,弁当を持って来させるかどうかの権限もないということです。

ましてや,この場面で,給食の重要性や,みんなと同じものを食べることの重要性について語る必要などまったくありません。

まずは,学校として引き取って協議検討するということを伝えなければなりません。

単なる時間稼ぎではありません。

あなたにはどうしようもないことですから,管理職等の指示や助言を仰がなければならないということです。

また,子どもの安全も考えなければならないので,明日までには何とかするのです。

それも管理職との連携が必要です。

そのための時間を少しもらうのです。

また,子どもが一人だけ弁当を食べるというのも嫌がるかもしれませんので,必要に応じて別室で,ということも選択肢に入れておきます。

ここで重要なことがあります。

それは,保護者の言うことが本当ではない場合もあります。

子どもがアレルギーではないのに,こんな電話をしてきたのかもしれません。

たとえ,そうであったとしても,今の対応であれば,そのウソは短期間で是正できます。

保護者も校内での整然とした対応がされ,ゆくゆくは診断書の提出も求められるかもしれないと悟れば,「やっぱりいいです」となるかもしれません。

でも,ほとんどの場合はウソではないでしょう。

だから,子どもの安全を守らなければいけません。

だから,慎重にかつ迅速に対応するのです。

併せて,保護者を味方にしなければいけません。

この場合,保護者は味方なのです。

保護者は学校に助けを求めに電話をしてきているのです。

だから,学校は真剣に対応しますよということを伝えなければなりません。

真剣にとは,迅速にということと,子どもの安全は必ず守るということに他なりません。

場面指導に適切に行うには,いま,長々と説明したことが数秒間でできなければいけません。

場面分析,指導目標設定,指導方法選択を数秒間で頭の中で行うのです。

最初のうちは,何と大変な課題だろうと思うかもしれません。

でも,現場の教師は,こういった場面に毎日,遭遇しています。

こういった場面に毎日,適切に対応しています。場面指導は単なる教採の課題ではありません。

教師として毎日,毎時間,直面する日常なのです。

学生さんや経験の浅い講師の方の場合,こういった場面への遭遇回数が少ないかもしれません。

教採対策という観点であれば,こういった場面指導を50問から100問くらいしっかりとやっておく必要があります。

それも今のようにプロセスをしっかりと考えながらやっておくのです。

しっかりとプロセスを考え,場面分析,指導目標,指導方法を分析し,戦略的に考察した上での回答でなければ,回答する意味はありません。

思いつきや感情で語ってもダメです。

対策本の受け売りだけではダメです。

対策本は参考にはなります。

是非,読んでください。

でも,重要なのは,戦略的な演習です。

最近の面接や小論文などでは,場面指導の出題例が激増しています。

その傾向は頷けます。

自己アピールや志望動機は誰だって準備してきます。

しかし,場面指導は一夜漬けではできませんから受験者の本当の資質を見極めることができます。

こういう点からも,場面指導を制することは合格の秘訣なのです。


河野正夫


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