教員採用試験の面接の実体とは?【レトリカブログ面接戦略講義】第1回

【レトリカブログ面接戦略講義】第1回

いよいよ,本日(2021年9月24日)から,【レトリカブログ面接戦略講義】が始まります!

本日,記念すべき,第1回のテーマは,

教員採用試験の面接の実体とは?

です。

では,始めていきましょう!

教員採用試験には,必ず,面接があります。

主には,2次試験(3次試験)で,課されますが,自治体によっては,1次試験から,面接を課すところもあります。

面接は,人物評価の代表的な手法です。

教員採用試験は,教師を採用する試験ですから,人物評価が重要なことは当然でしょう。

ただ,教員採用試験の面接は,非常に,不完全なものと言わざるを得ない実情があります。

教員採用試験の場合,面接を課すと言っても,せいぜいが1度だけで,それも,20分~40分程度の長さの面接です。

1次試験で課される場合は,短いところでは,15分程度という自治体もあります。

40分の面接を,2次試験で,2回やったとしても,そこで,本当に,受験者の人物評価ができるかというと,なかなか,困難だというのが,本当のところでしょう。

面接官でさえ,何を聞いていいのかわからない,どういう風に判断していいのかわからないと,頭を抱えている人もいるようです。

さて,なぜ,教員採用試験の面接では,期待通りの人物評価ができないのでしょうか?

その辺りを,探ってみたいと思います。

教員採用試験の面接は,短時間で,1回だけということが多いという問題があります。

多くの自治体で,本格的な個人面接は,2次試験(3次試験)で,1回だけ,しかも,20分~40分程度の短時間のものです。

仮に,平均を取って,30分の面接として,考えてみましょう。

概ね,面接官は,3人います。

面接官一人当たり,10分ということになります。

面接は,面接官が質問して答えるわけですから,各10分の内訳は,質問3分・回答7分くらいでしょうか。

そうすると,7分×21分の発言で,人物を評価することになります。

たかだか,20分強の語りで,その人物の人間性や資質,能力を評価することができるでしょうか?

面接官の面接評価票には,例えば,

責任感,協調性,使命感,積極性といった評価項目があり,そこに,数値などで評価を記入するようになっています。

でも,たかだか,20分強の語りを聞いて,その受験者に責任感があるか,協調性があるか,使命感があるか,積極性があるかということが,例えば,10段階評定で,評価できるものでしょうか?

面接は,当然ながら,採用試験の一部ですから,受験者は,誰でも,合格したいと思っています。

仮に,面接官が,「あなたには,責任感がありますか?」と聞いたとしたら,「いいえ,ないです。」と答える受験者など,いないでしょう。

また,すべての受験者が,自分の過去の経験などで,責任感や協調性があるように語るはずです。

でも,面接の語りは,すべてが,100%真実かどうかはわかりません。

どうやって,20分程度の面接の語りで,ある人物の適性や資質や能力を見抜くのでしょうか?

民間企業の就職活動,いわゆる就活であれば,まずは,インターンをしたり,OB訪問があったり,面接も,4次面接,5次面接まで,あったりします。

つまり,何回も何回も,時間をかけて面接をして,その人の適性や資質や能力を見極めようとしています。

私(河野)が,アメリカの大学の教員に採用されたときは,面接は,1泊2日かけて行われました。

学部長などの管理職,教授たち,学生たち,教務委員会の人たちなど,面接だけで,5種類くらい,しかも,一つの面接が1時間以上で,休憩や,食事を共にすることもあり,1泊2日,たっぷりと面接・人物評価がありました。

このくらいやれば,どんな人物かが,ある程度はわかるはずですが,20分~40分程度の面接を1回だけ,しかも,何十人,何百人を,ベルトコンベヤーに乗せたような感じで,次々と,短時間で面接するようなやり方では,なかなか,一人一人の人物評価は難しいはずです。

私たちが,日常の仕事や生活で,人物評価をするときには,年月をかけます。

例えば,1年間,2年間,一緒に仕事をしてみれば,「あの人は,目立たない人だけど,仕事はものすごくできる」とか,「あの人は,人あたりは,あまりよくないが,本当は,ものすごく他人のことを考えていて,信頼できる人だ」のような評価をすることができます。

また,長い年月,友人や知り合いでいれば,「あの人は,言葉は乱暴だけれども,本当は,ものすごく優しい人だ」とか,「あの人は,無口だけど,とても情熱のある人だ。」といった人物評価ができます。

私たちは,通常は,数か月,数年といった長い年月をかけて,人物を評価しています。

でも,教採の面接では,それを,20分~40分程度で行おうとします。

科学的に分析して,結論から言うのであれば,20分~30分程度の会話で,受験者の人物評価を客観的に行うことは,不可能です。

教採の面接のやり方では,受験者の人物評価は,まず,不可能であると言わざるを得ません。

もちろん,あまりにも非常識な人,あまりにも無能な人は,20分~40分程度の面接でも,すぐにわかると思いますが,一定の常識,一定の能力を備えている人であれば(教採の受験者は,皆さん,少なくとも,一定の常識や能力は備えていると信じたいですが),そういった受験者の中で,人物評価で差を付けることは,極めて,困難です。

結局は,教員採用試験の面接では,面接官の主観によって,面接官の印象によって,もっと言えば,面接官の美学によって,評価が付けられているというのが,真実の現状です。

そうは言うものの,教員採用試験の面接は,200点満点とか,350点満点とか,面接官一人一人の持ち点が10点満点とかのシステムで,相当程度に,数値化された評価が行われています。

20分~40分程度の,個人面接で,しかも,受験者は,みんな,それなりに,面接用の練習をしてきています。

考えてみてください。

あなたが,面接官だったとします。

初対面の人と,30分前後,会話しただけで,その人が,教師に向いているかどうか,教師として採用したい人物かどうか,わかるでしょうか?

もちろん,前にも述べたように,あまりにも非常識な人とか,あまりにも愚かな人であれば,すぐに,「この人はダメだ!」とわかるかもしれません。

でも,ある程度の常識,ある程度の礼儀などがあれば,初対面の人と30分前後,話して,その人の資質,適性,能力を判断することができるでしょうか?

科学的に考察すれば,それは,不可能であるというのが答えです。

でも,教採の面接では,その不可能なはずのことを,30分程度の個人面接で行っているのです。

では,面接官は,どのように評価しているのか?,どのように判断しているのか?,その辺りを,第2回の講義で,明らかにしていきます。

【レトリカブログ面接戦略講義】第2回

のテーマは,

面接官の正体とその能力,そして,評価の土台とは?

です。

お楽しみに!


河野正夫


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